当代一の名手、村田陽一さん率いるビッグバンドの最新作「Crawling Forward」を聞いてみました。椎名林檎さんはじめ数々の有名アーティストのアレンジも手掛ける名手の渾身の意欲作です。
はい、ビッグバンドファンです。今日は村田陽一ビッグバンドの最新作「Crawling Forward」について話していきます。
村田陽一さんおよび今回の作品の紹介
村田陽一さんと言えば、近年は椎名林檎さんのブラスアレンジを手掛けられていることでも有名ですが、このアルバムはご自身が率いられるビッグバンドということで全曲作編曲されているという意欲作です。
手書きのサイン、手紙まで入っている丁寧さ
まず素敵だなぁと思うのが、これ見てください。注文はインターネット経由でしたのですが、届いてみたら、ジャケットにサインですよ。私の名前もバッチリ書いてあって、しかもこんな手紙も入ってました。こういうのはストリーミングでは味わえない嬉しさですよね。でも、なんでここまで丁寧に出来るのか、版権とかどうなってるのかな?なんて思って調べてみると、どうやら村田さん現在アルバムの原盤権をご自身で所有されていると。セルフプロデュースですよ、スゴイなぁ。こういうデジタル全盛の時代だからこそ、人間のぬくもりが感じられる瞬間というのは貴重なんだなと思いましたね。
ソリッドブラスの思い出
さて、村田陽一さんといえば、私の中ではソリッドブラスの印象が強烈に刻み込まれてまして、ちょっとその話をしたいなと。ソリッドブラスというのは村田陽一さんが1991年、ファーストソロアルバムをリリースするのに合わせて結成したバンドで、名前の通りブラス、管楽器が中心の編成というのが特徴で、リズム楽器はドラムとパーカッションだけ。そう、ベースもギターもピアノもいないという。では低音はいないのかというそうではなく、なんとチューバがベースラインを担当するというね。で、私、このアルバムを高校1年生の時に先輩から借りまして。借りたというか「聞いてみろ」という感じで先輩から渡されたので、とりあえず何も知らずに聞いたという感じだったのですが、今考えるとアホでしたよね。要するに普通にカッコイイんです。何を当たり前のこと言ってるんだという感想ですが、要はそういう編成であるってことを意識せず普通にカッコイイということなんです。ただ、引っ掛かったのが、他のアルバムに比べて管楽器が目立つなぁ、と思ったんですね。そりゃまぁ全部管楽器なんだから目立つの当たり前なんですが、そういう編成であるってことを知らなかったので、そこでそのまま先輩に「このアルバム、すげぇっす。でも、妙に管楽器が目立つというか、何でこんなに管楽器が目立ってるんですか?」って聞いちゃったんです。そしたらその先輩が笑いながら先程話した編成の話をされて、もうその瞬間目玉が飛び出しましたよ。いや、これね、やっぱり実際に聞いていただくのが一番早いんですが、今までも色んな音楽聞いてきましたけど、ここまでぶったまげることはそう無いかなと、それぐらいもう20年以上前の話ですがそれでも鮮明に覚えているくらい、衝撃でした。
ブログやインタビューも読むとますます面白いよ
村田陽一さんはなのでご自身がリーダーのバンドとしてはこのソリッドブラス、それから今回リリースされたビッグバンド、それとアルバム自体は私も聞けていないのですがHook Upというファンクを中心とした伝説的なアルバム、バンドがあります。Hook Upの制作経緯などは村田さんのブログやインタビューなどでも確認出来ますので、是非お読み頂けたらと思いますし、多分読んだら聞きたくなると思います、スゴイので。
ジャケットの写真が今を切り取っている
というわけで、そんな現代の名手が出したビッグバンドアルバムですが、これは昨年目黒のブルースアレイで行われた無観客配信ライブの模様を録音したものになります。というわけで、アルバムジャケットを見ると、こうやって実際に演奏している写真が出てます。これ左側に一段高い部分がありますが、ここが本来のステージになるところですかね。無観客ということで、客席側まで編成が広がっているのが分かると思います。あと、ビッグバンドというと通常特に管楽器なんかは三段編成になっていて、一番客席側にサックスセクションが横一列にずらりとならび、その後ろにトロンボーンセクションが横一列にずらっと、そしてその後ろにトランペットセクションが横一列に並ぶ、そういう形が多いですが、ここでは円形になっています。レコーディングの時なんかにはこういう形が多く、実際一部プレイヤーはヘッドホンしていますしね、ライブとはいえ配信であるということがこの絵からも読み取れます。裏側を見ますと、配信しているパソコンの画面。多分、こんなジャケットのライブCDって後にも先にも出てこないんじゃないですかね?ある意味時代を表すというか、10年後ぐらいに改めてこのジャケット見ると「あぁ、あの時はそっかコロナだったもんなぁ」と思い出すんでしょうね。すごく印象的です。そして裏側を見ると、パソコンの手前にさりげなくもう1枚のCDの写真。これは2016年、同じく目黒ブルースアレイでのライブの録音盤です。そこに配信しているパソコンの絵とコーヒー、これ在宅仕事している人だと既視感というか、普段の机の上がこういう状態になっている人もいませんかね?で、CDの盤面にはゴシックで「LIVE」と。こうやって見ていくとこの絵だけで、コロナ前とコロナ中の対比のようなものも見えてきて、表の演奏中のバンド写真以上にコロナ中の作品であることが強く感じられるなと思いました。本当にこういう大変な時期にあってそれでも作品を発表される村田さんの誠実さに心打たれます。
中身は村田陽一サウンドが前面に出ている、パワーが溢れている
さて中身ですが、これもまぁ聞いて頂くのがとにかく一番ですが、まぁ1リスナーの感想というぐらいであれば、いいかな。評論なんていうのはおこがましくて出来ませんので、あくまで感想ということで。全体としては村田さんが過去に演奏されたりしたオリジナル作品などを改めてライブ用に書き直しされて演奏されているもので、全編通して村田陽一サウンド全開というのは言うまでもありません。特に最近は配信だといわゆる1曲目から順番に聞くという習慣も薄れつつある中、CDというまとまったフォーマットで発表されているだけあって、1曲目から順番に聞いていくとしっかりとした流れがあるのを感じます。ざっくり聞いてしまうのは勿体なくて、随所にアレンジの妙や技がちりばめられています。いわゆるジャズという形ではなく、例えばファンクが好きな人なんかも1曲目聞くとガシッと心を掴まれる、あるいは8曲目のJaneiroなんかもブラジル音楽のテイストがガツッと出ていて。あくまで個人の感想なんですが、このブラジルテイストの少しさわやかでゆるやかな感じ、他の楽曲ですがフルートでメロディいくのは割と聞くんですが、この8曲目のJaneiroではトロンボーンでテーマラインを演奏されてます。これがね、いいんですよ。当然技術あってのことですが、すごく柔らかくて、しかも最初ソロでいった後にハーモニーになるんですが、重たくないんですね。そのままスッと入ってきて、心地よい、聞いていて、あぁいいなぁと素直に思えました。あとはやっぱり村田さんといえば先程申し上げたソリッドブラスからの伝統といいますか、随所に出てくるブラスソリのカッコよさ。これは当代一じゃないですかね。個人的には3曲目、他の曲でも随所に出てくるのですが、特に3曲目はパーカッションと管楽器の絡み合い、ギターやキーボードが効果的に入りつつ、ここ!!というところでキメがバシバシ決まりつつ、複雑なラインを流れるように演奏していく。
プレイヤーの表情や動きも想像しながら聞くと更に面白い?
あと、これもあくまで私なりの聞き方なんですが、特にビッグバンドはやはりライブの音楽と思ってます。で、ライブの醍醐味って音だけじゃなくて、こう顔の表情とか身体の動きとかそういうのも楽しみの一つとしてあると思うんですよ。特にソロの部分なんていうのは、各プレイヤーがここぞとばかりに出てくるわけで、ライブであれば顔の表情なんかもカッコイイんですよ。目を瞑って吹いていたり、盛り上げところになると眉間にクッとしわが寄ったりして、そこに汗が流れてきて照明が当たるとね、もうこれ最高にカッコイイわけ。更にトロンボーンだと盛り上がってくるとスライドの動きも激しくなってきたり、あるいはサックスだったら楽器を上にあげつつ唸りをあげながら演奏したり。そういうのをね、聞くときに想像しながら聞くとより楽しめるんじゃないかなと。今、どんな表情かな、あぁ、ここでキメに来てるなぁ!!とか、聞く側が想像するのは自由ですからね。仮に本当は汗もかかず、表情も変えず、淡々と醒めた感じで演奏していたとしてもね、聞く側の想像力は無限ですから。オススメです。
というわけで、あとはね実際に買ってね聞いてください。当代一のプレイヤー、渾身のビッグバンド作品ですのでね、間違いなく楽しめると思います。以上、ここまで見て頂いてありがとうございます。このチャンネルにもご興味お持ち頂けましたらチャンネル登録をよろしくお願いします。以上、ビッグバンドファンでした。ばいばい~
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