DC/PRGはビッグバンドなのか!?っていうか「ビッグバンド」とは?ビッグバンドファンを名乗りながらここを避けるわけにいかない「ビッグバンドの定義」ここに今日は踏み込む!!
はい、ビッグバンドファンです。今日はビッグバンドとは?という凄いテーマでいってみたいと思います。
菊池成孔さんのDC/PRGが解散する
そもそもこのテーマをやってみようと思ったキッカケが、菊池成孔さん率いるDC/PRGが解散するというニュースです。
菊池成孔さんやDC/PRGを知らない方の為に例のごとくwikipediaより抜粋しますと
菊地の私淑するエレクトリック・マイルスをコンセプトの軸に、アフロポリリズムやファンク、現代音楽を取り入れることで、クラブカルチャー/ダンスフロアに、従来とは異なる律動構造をもったダンスミュージックを提示することを音楽的な主眼として、1999年に「DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン)」名義で結成されたビッグバンド
となっています。
そうなんです、ここで驚いたのがwikipediaでもDC/PRGはビッグバンドと書かれているんです。しかしながら、大変恥ずかしいことに私自身ビッグバンドファンと名乗っていながら、このDC/PRGに関してはビッグバンドという認識が一度もありませんでした。解散のニュースが目に入ったのも単純にDC/PRGがカッコイイということで割と聞いていた為で、なので「DC/PRGってビッグバンドだったの?」という驚きは解散というニュース以上に私にとっては衝撃でした。
ビッグバンド規格なるものは無い
で、「ビッグバンドって何をもってビッグバンドと言えるのだろうか」とふと思ってしまいましてね。何となく人数が多ければビッグバンドと言えそうなのですが、じゃぁどのくらい人数がいればいいのか、多分基準なんて無いと思うんです。JISとかJASみたいにね、ビッグバンド規格みたいなものがあればいいのですが、残念ながらそんなものは無い。それこそ「これがビッグバンドだ!!」とバンドリーダーが名乗ってしまえば、5人編成とかでもビッグバンドを名乗れてしまう。でもね、これ以前別の動画でも話しましたがアルバムやバンド名に「ビッグバンド」と付いていて、いざ聞いてみたら5人編成でした、これ私的には消費者庁ものですよ。もっとも、これで消費者庁にクレーム入れても担当者に鼻で笑われそうだけど。でも、いいんだ。例え世の中で私一人だけが気になることだとしても、それはきちんと声を上げるんだ!!そうだ!!・・・ごめんなさい、かなり熱くなりました、冷静になります。
「ビッグバンド」は編成でありジャンルではない
というわけでですよ、ここからは完全に私なりのビッグバンドの定義を考えていきたいと思います。まず「ビッグバンド」とだけ言った時、これはジャンルを表すものではなくあくまでバンドの編成を指すと考えます。で、特にジャズをやっている場合は「ビッグバンド・ジャズ」と言うこととしますが、当然「ビッグバンド」がロックを演奏することもあれば、ポップスを演奏する、そういうことは普通にあります。それらを「ビッグバンド・ロック」とか「ビッグバンド・ポップス」とかあるいはジャンルとして「ビッグバンド」などど括ってしまうと「ロックとビッグバンド・ロックの違いは?」とかややこしくなる。なので、仮にロックをビッグバンドで演奏していたとしてもそれはそのまま「ロックをビッグバンドで演奏していた」とするだけで、ジャンルとしてビッグバンドという概念を含めることはしないこととします。となると、考えなければいけないのは「どういう編成であればビッグバンドと呼べるか」という話になります。
一般的なビッグバンドとは?
まず一般的なビッグバンドの編成ですが、トラディショナルなビッグバンド、それこそカウントベイシーやデュークエリントン、グレンミラー、ベニーグッドマン、更にはバディリッチやウディハーマンといった楽団まで広く普及しているものとして、サックスが5本、トロンボーンが4本、トランペットが4本という管楽器にドラム、ベース、ピアノ、ギター、ギターに関しては含まれる場合と含まれない場合がありますが、概ねこの4つの楽器がリズム楽器という形で合わさる、合計17人前後という編成が一般的です。
これを基本に、例えばスタンケントン、ギルエヴァンス、近年ではマリアシュナイダーといった楽団になると、トランペットが5本になったり、トロンボーンを5本にしたりチューバを入れたり、ホルンを入れるなんてケースもあります。あとはサックスの5本、これも通常はアルトサックスが2本、テナーサックスが2本、バリトンサックスが1本なのですが、これがいわゆる持ち替えと称してソプラノサックスというより高い音域の楽器を演奏したり、フルートやクラリネット、場合によってはオーボエ、ピッコロ、といったとりあえず木管楽器という括りで他の木管楽器を演奏するというケースも出てきます。
今申し上げたのは管楽器の話ですが、リズム楽器に関しても例えばパーカッションを入れるということはよくありますし、アコースティックなピアノがシンセサイザーに変わったりというケースもあります。パーカッションに関してもボンゴやコンガ、ティンバレスといったラテン音楽でよく使われるような楽器が追加されるケースが多いですが、中には銅鑼など東洋由来の楽器を入れる場合など選択は様々です。更に狭間美帆さんなどより現代に近いビッグバンドでは弦楽器が加わったり、あとは人の声ですね。これは歌詞を歌ういわゆるボーカルとしてというケースも勿論ありますが、それだけではなくハーモニーの一部に加わるようなインストゥルメンタル扱いで人の声を加えるなんてケースもあります。
基本編成から人数が減るパターンで悩む
ここまでは基本の編成に概ね人を加えるというパターンでした。正直このパターンはそれほどビッグバンドという定義に悩まないんです、私としては。何故なら増える分には「ビッグ」という言葉の印象とそれほど離れることはないからです。問題は減らすパターンです。パッと思いつくのはメイナードファーガソンさんのバンド。ファーガソンさんのバンドはアルバムやライブによっても編成が微妙に変わりますが、これを見ますと分かりますでしょうか?
このBig Bop Nouveau Band、このライブではトランペットはファーガソンさんを除くと3人、トロンボーンは1人、サックスは2人、そこにピアノ、ベース、ドラムのリズム楽器3人、ファーガソンさん含めて計10人という編成です。基本編成から7人も減ってます。
ただ、このファーガソンさんの曲は先程申し上げた基本的な編成のビッグバンドでもよく演奏されますし、実際譜面として発売されています。なので、この編成も聞く側からするとビッグバンドに含まれて違和感が無いということになります。
人数だけではない「ビッグバンド的な音」という問題
この人数問題が一つ。ただ、ここで「では、何人以上なら」という人数だけの議論にしてしまうと別の問題が出てきます。つまりサウンドとして、ビッグバンド風であるかどうかという問題です。例えば、弦楽器が13人、これにリズム楽器、ドラム、ベース、ピアノ、ギターが加われば、人数としては17人、最初に示した基本的なビッグバンドの人数を満たしているわけですが、ではこれをビッグバンドと呼ぶかというと恐らく多くの方が悩むとおもいます。そう、人数に加えて「ビッグバンド的な音が出ているか」という要素を加味して議論しないといけません。
さて、今度はこの問題にフォーカスを当てていきますが、これは完全に私の考えとして「管楽器の有無」というのが重要な気がしています。つまり先程弦楽器のみで13人という構成のバンド、これがビッグバンドを名乗っていると違和感があると言ったのは、管楽器が入っていないということが原因のような気がします。つまり「ビッグバンド的な音」には管楽器の存在が不可欠だということです。
では、今度は、ホルン、ユーフォニウム、チューバ、オーボエ、クラリネット、フルート、バスクラリネットの7人に弦楽器が5人、それにドラム、ベース、ピアノ、ギターの4人の計16人構成のバンドがビッグバンドと言っていたらどうだろう?これは悩みます。人数は揃っているし、更に管楽器も入っている、、、が、これでビッグバンド的な音が出るのか?という部分ですよね。つまり頭のどこかに「ビッグバンド的な音」といった時に「トランペット」「トロンボーン」「サックス」この3つの音が頭のどこかで鳴っている気がするんです。もう少し拡張すれば、そのものの楽器でなくてもこの3つの楽器がビッグバンドで果たしている役割を果たせる楽器、それが必要なのかなと思います。なので、管楽器という条件の中にはこの3つの楽器もしくはこの3つの楽器がビッグバンドの中で果たしている役割を担える楽器、それが少なくとも2つ、出来れば3つは入っていて欲しい、そういうことになる気がします。そうやって考えると、確かに先程申し上げたメイナードファーガソンさんのバンドも人数こそ少ないものの、トランペット、トロンボーン、サックスの3つの楽器は全て含まれています。
管楽器の有無を踏まえて再度人数の議論に戻る
で、この管楽器の有無、トランペット・トロンボーン・サックスの役割が含まれる、これを踏まえて再び人数の議論に戻ると、管楽器側の最小構成はトランペット・トロンボーンが各1本、これにサックスがアルト・テナー・バリトンの3本がありますが、場合によっては持ち替えして対応するなど考えれば2本、一人がメロディでその間に一人が持ち替えといった具合ですね、多分これで管楽器が4本、これにリズム楽器がドラム、ベース、ピアノ、ギターの4つが合わさって合計8人、これが最小構成になる気がします。
さぁこの8人構成のバンド、これがビッグバンドを名乗ってよいか。実はこの辺になってくると同じような議論が実はwikipediaに出ていたりします。9ピースというセクションにこんなことが書いてあります。
人数の構成上、フルバンドから各セクションの人数を大幅に減じて、サックス3(アルト、テナー、バリトン各1)、トランペット2、トロンボーン1、リズム3(ピアノ、ベース、ドラムス)の総勢9人編成とする場合がある。これは9ピースと言い、広義にはビッグバンドの一種といえる。(ビッグバンドとコンボの中間とする見方もある)
ほ~、9人編成はビッグバンドと言えるというわけですね。では8人はどうなるか、その下にその他の編成というセクションもありましてこれも見てみるとこんなことが書いてあります。
また、近年編成されるビッグバンドの中には、一般的な構成にこだわらない例も増えてきている。例えばトロンボーン奏者の村田陽一が率いるバンドであるソリッド・ブラスの基本編成は9ピースの編成にチューバを加え、代わりにピアノとベースを減じた8人編成となっている。但し、このような特殊な編成を組んだ場合、最初からビッグバンドを名乗らないケースが多い。村田陽一ソリッド・ブラスもビッグバンドとは名乗っていない。
なるほど、そういえばソリッドブラスは確かにビッグバンドは名乗っておらず、村田陽一ビッグバンドは別にありますからね。もし村田陽一ビッグバンドと書いてあるCDを聞いて中がソリッドブラスだったら、ちょっと違うだろ!!と、確かになる。まぁそこは論点がだいぶ違いますが、それはともかくwikipedia的にはどうやら9人をボーダーとして見ている節があるように見てとれます。
というわけで、以上をまとめるとビッグバンドの最低要件はこうなります。
1. バンド編成に管楽器が含まれている
2. 管楽器にはトランペット・トロンボーン・サックス、それに相当する楽器が最低2つは含まれている
3. リズム楽器はドラム、ベース、ピアノ、ギター等色々あるが、上記管楽器の編成と合わせて9人以上となるように構成する
で、これは最低要件ですから、これを踏まえた上で弦楽器が入る、電子楽器を強調する、パーカッションの人数が多い、管楽器にホルンやチューバやオーボエやバスクラリネットやピッコロ等が入る、これは自由でいいということになります。
お~~~~~~~~、なんかこうやってまとめるとすっきりしてきた、そんな気がしてきました。そういえば今回考えるキッカケになったDC/PRGもトランペットとサックスは入っているし、そこにドラム・ベース・ギター・キーボード等々入って総勢は9人以上になってる!!
DC/PRGはビッグバンドなんだ、なるほど。ついでにサン・ラ アーケストラもばっちしビッグバンドってことになるぞ!!ついでついでにMathew Herbertもビッグバンドを名乗ってよいことになる!!ついでのついでのまたついでにOrchestra National de Jazzもちゃんとビッグバンドってことになるぞ!!!凄い、凄いぞぉ、俺!?!?!?!
・・・ってね、そもそもこうやって型にはめている時点でダメなのかもしれません。今後、弦楽器+リズム楽器のビッグバンドが出てくるかもしれないし、8人編成のビッグバンドも出てくるかもしれないし、女子十二楽坊はビッグバンドになるのか!?とかそういう議論もあるかもしれないし。むしろ、そうやって頭をより柔軟に働かせながら音楽と関わっていく、それが大切なことなのかもしれません。
というわけで、最後はなんだか綺麗にまとめてしまいましたが、ビッグバンドの定義について考えていきました。もし今回まとめた定義に当てはまらないバンドだけどビッグバンドとして扱われている、そういうケースご存じでしたらこっそり教えてください。よろしくお願いします。最後まで御覧頂きありがとうございました。よろしければフォローよろしくお願いします。以上、ビッグバンドファンでした。ばいばい~