バァの教え#30
皆様こんにちは天陽です。
今回のお話しは昔お世話になったバァのお話しです。
当時僕がまだ19歳の時でした。
上京したばかりの僕に、前回話した棟梁の住むアパートの下の階にいたバァは、僕を見るなり一言目に『お前は可愛くねー!』っと言いました。
昔はやんちゃだったので、そんな事言ってきたバァに
『んなら話しかけてくんな!』
っと言いました。
今思い出すだけでも、可愛くねーなんて言われて当然ですね。
そこから棟梁はそんな事言わずに、俺の可愛がってる奴だからといい、色々はなしをしてくれていました。
そんなある日、棟梁にお留守番を頼まれたのでアパートに行くと、バァが窓から顔を出して
『お前はらへってねぇか?』
っと言われました。
お腹はすいていたのでうんと答えると
『うち来て飯食え!』
っと言われました。
中に入るとカレーを用意していてくれて、よそいたてでした。
『作ってから3日間ストーブの上でじっくり煮込んでつくったやつだよ!
マンゴーやらパイナップルなんかも少し入れてんだ。
まずいなんて言ったら頭からぶっかけてやるからな!』
っと言われ、圧を感じながら食べました。
あまりにも美味しすぎていまだにあのカレーの味はわすれられません。
そこからバァとは普通に話すようになり、僕が1人でもバァの家に遊びに行く事も多くなりました。
夜帰るというと、肩をたたいてくるので
『いてーよ!』と僕が言うと、
『居たきゃいたらいーだろ!』っと言ってくるお茶目さもありました。
月日が過ぎ僕が20歳になった時、スタイリストに昇格したのでバァに報告しに行きました。
そしたら
『そーかい、こんな青クセーのが一人前かい!
お前そこに立て!』と言われました。
いつも通りうるせーなーと言いながらも立ち、バァを前にしました。
そうするとバァは一万円札を床に置き
『お前これ腰も膝も曲げねーで、そのまま突っ立ったまま取れたらくれてやるよ!』
っと言われました。
無理ですよね。
また意地悪言ってきたよ。
っと思いとりあえずお金を取ろうとしましたが無理でした。
それを見たバァが
『無理だろ。』
っと嬉しそうに笑いました。
流石にイラッとしましたが、まぁいいやっと思ったら
『どうやったらこの金取れんだ?』
っと言われたので、腰を曲げてお金を取りバァに差し出しました。
そしたらその姿を見たバァがこう言いました。
『いいかい、お金をいただく時は必ず頭を下げる事。
稲穂も実れば首を垂れる。
人様からお金をいただく際は必ず感謝を忘れんなよ!』
っといつにもない真剣な目で話してくれました。
僕は、その目に圧倒されて息を呑みました。
『良く頑張ったな、おめでとう』
と言いその一万円札を僕にくれました。
今でも思い出すだけで目頭が熱くなります。
後々聞いた話し、バァは昔スナックを経営しかており、色々苦労を乗り越えてきたとの事でした。
納得です。
今では、僕が面倒を見てスタイリストになった子達には同じ事をしています。
素晴らしいと思った事は後世に伝えていきたいですね。