WPATHファイル徹底解説その4:未成年や精神病患者からは理解ある同意は得られない
このファイルを読み始めた時に、ファイルは241ページもあると書いたが、論文自体は71ぺージまでで、あとは同ファイルが入手した資料である。最終章のまとめを除くとこの論文の最後はこの「WPATH は医学倫理を尊重していない」という章になる。この章の前半は再びInformed Consentという「理解ある同意」に重点が置かれている。特に未成年や精神疾患を抱かえる患者からWPATHがどのように「理解ある同意」を得ているのかという話である。(37-47ページ)
理解ある同意の論理
一般に理解ある同意というのは、医療提供者が先ず患者の患っている病気の状態を正確に説明をし、その治療に一番適するいくつかの選択肢を提示し、最適と思われるものを推薦する。そして治療にはどのような利益がありどのようなリスクを伴うかを十分に説明し、治療段階でどのような決断をしなければならないか、患者や保護者がそれを十分に理解して納得したうえでこそ成り立つのである。
未成年は性転換治療に同意できない
ところがWPATHはまだ精神的に未熟である未成年に人生を変えてしまう重大な決断を課すのである。同ファイルでは13歳の少女にテストストロン治療を始めたり10歳の少女に思春期ブロッカーを与えたりした例が示されている。
実は先日同ファイルとは別にカナダのケベックで放送されたラジオカナダのドキュメンタリーを観たのだが、偶然にもその内容がこの章と被っていた。
この番組では14~16歳の少女たちがどのように簡単に性転換治療を受けられたかという話をしていたのだが、最後のほうの覆面捜査で、16歳を名乗る少女が一人でクリニックに訪れる。一応親とは相談したと口では言うがカウンセラーがそれを信用したかどうかは分からない。
ホルモン接種にあたり少女は7ページにわたる書類を渡される。しかしカウンセラーはその内容について特に説明せずホルモンを始めたいなら署名しろというだけ。少女が署名すると、さっそくホルモン処方箋が出され、即乳房切除の話が始まった。何と少女が診療所の門をくぐってからたった6分後のことである。こんなんで理解ある同意など出来るわけがない!
誤った情報を得た親は理解ある同意はできない
これはカナダの話だが、アメリカでは法律上未成年の場合は保護者が治療に同意しなければならない。しかし大人だからといって医師の言っていることがすべて理解できるとは限らないし、第一保護者が誤った情報を与えられたら正しい判断などできるはずはない。
よく子供の名前を異性に変えたり異性の代名詞を使ったりすることが子どものストレスを緩和する最初のステップだと言われる。親たちは、名前や代名詞なんていつでも好きな時に元に戻せる、このようなステップは完全に無害だと説得される。しかしこの社交的移行というのが曲者で、これは子供の性自認を固める役目を果たし後に抵抗しにくくする非常に効果的な洗脳行為なのである。子供を社交的に性移行させたりしなければ子供は思春期を過ぎると自然と性違和を失くし、自分の性を受け入れるようになる。そして多くが同性愛者の大人となるのだ。
イギリスの若者ジェンダーサービスを研究したヒラリー・ケース医師によると、社交的性移行は「中立的な行動」ではないという。むしろ積極的な介入である。なぜなら子供や若者の精神機能に大きく影響を与えるからである。
しかしWPATHは思春期前に社交的性移行をした子供の97.5%が5年経ってもまだ性違和を確信していたという2022年7月にAmerican Academy of Pediatrics、クリスティナ・R・オルソン他、が発表した調査結果をもとに、思春期を過ぎれば子供の性違和が自然に消失するという説は間違っていると主張する。しかしこれは社交的性移行による洗脳成果を証明するに他ならない。
自殺願望の神話
ジェンダークリニックで親たちが何度となくされるのが「死んだ息子(娘)と生きてる娘(息子)のどちらが欲しいか」という脅迫じみた質問である。これは性違和を持っている子供は早急に性転換治療にはいらないと自殺の危険が増すという神話を元にされる質問だ。
しかし性違和患者が特に自殺願望が高いという根拠は全くない。ましてや性転換治療が自殺願望を緩和するという根拠などどこにもないのである。
性違和を持つ子供の間では精神的に健康な子供たちに比べると自殺願望者が多いというのは事実だが、それは性違和が原因なのか、それともすでに他の精神障害を患っていたことが原因で性違和を言い出したからなのかはっきりしない。実際に自殺を遂げた若者の間で、他の精神病患者と性違和患者の自殺率を比べてみると、さほどの違いは見られなかった。
そして自殺願望のある性違和患者は性転換治療のどの過程でも願望が消えることはない。二年間にわたるthe National Institutes of Health (NIH)による研究で315人の性自認肯定ホルモンセラピーを受けたアメリカの若者315人を対象にした調査では、二人は実際に自殺を遂行、11人が自殺願望があった。つまりこの13人は二年間もホルモン治療をしていたにもかかわらず、自殺願望は消えなかったのである。
私の記憶が正しければ、たしか20年くらい前にスエーデンでも同じような調査がされ、性適合手術を受けた大人の自殺願望率は性違和を持って手術を受けていない人たちと変わらなかったというものがあった。少なくともSRSや他の性自認肯定治療は自殺願望の緩和には何の役にも立っていないという証拠である。
また思春期の性違和は境界性人格障害(BPD)と混乱されることが多い。BPDには「自認障害」という症状があり、繰り返し自殺願望の行動をしたり身振りをしたり、脅迫したり、自傷したりする傾向がある。そして思春期に起きるBPDは女子のハッセ率が男子よりも3倍も多く、2~3%の人口に起きる病気である。BPDの自認障害は性違和と間違われることが多いため、BPD患者の数が実際の性違和患者の数を大幅に水増ししてしまっていることは考えられる。
このような病気を持っている子供にテストストロンのような強力な薬品を投与したら、かえって彼女達の自殺願望を悪化させかねない。事実、先に紹介したカナダのドキュメンタリーでも、自殺願望のある娘はBPDなのではないかと親が疑っているのに、ジェンダークリニックの医師に「BPDなんてものは存在しない」と一笑に付しホルモン治療を開始してしまい、実際娘は自殺未遂で救急病院に運ばれてしまったというケースが紹介されていた(彼女は助かった)。
同ファイルでもカナダの調査が紹介されている。28人の脱トランスのうち二人にBPDと診断された。うちひとりの女性は両乳房除去後に精神状態が悪化してからBPDと診断されたことに憤りを感じていた。別の脱トランスのカナダ女性は、ホルモン治療と整形手術を受けた数年後になってBPDが発覚したとして、医療チームを相手どって誤診を理由に訴訟を起こしている。
フィンランドの小児ジェンダー医療専門家が言うには性違和の自殺願望論は「意図的な偽情報」なのである。
深刻な精神病患者に人生を変える医療決断はできない
同ファイルの中で取り上げられる患者のなかには、どう考えてもまともなな精神状態ではない患者が多くいる。
WPATHの掲示板討論でハリファックスの看護師がPTSDや大鬱病障害(MDD)や精神分裂といった、とても複雑な精神病を抱えている患者がホルモン治療を始めたがっているが、彼女の精神科医は阻止していると書く。「私はきちんと理解ある同意を得たうえで治療する方針ですが、この場合何が正しいことなのでしょうか」という質問。
WPATHのSOC8で精神健康担当のカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のダン・カラスィック医師は「何故あなたが迷っているのかわからない。精神病があるというだけで本人のホルモン治療を始めなくするべきではない。もし本人が強い性違和を持っており同意する能力があり、ホルモン治療で得られる理益がリスクより高いのであれば」と答えた。
いや、しかしこのような複雑な精神状態の人間に、ホルモンがもたらす長期的な副作用についてなどはっきりと理解できるだろうか?
カラスィック医師の意見は他のWPATHの医師たちからも大いなる賛同を得た。
カリフォルニアのセラピストは、解離性同一性障害(DID)、MDD、双極性障害、統合失調症の患者がホルモン治療を受けて良好だと報告。睾丸摘出をうけたホームレスの男性はの生活には手術が「大きな違い」をもたらしたと書く。しかし長期的フォローアップがされていないので、このホームレス男性が後にどうなったのかは不明である。
このDIDというのはいわゆる多重人格のことだ。多重人格は精神病としてはすでに認められていないはずだが、最近若者の間でDIDを自称する子が増えている。2017年カラスィック医師はWPATHのアメリカ支部の会合で複数の自認を肯定することの大切さを説いた。
しかしもし多重人格のそれぞれが別の性を名乗りだしたらどうするんだ?一人に合わせて手術などしたら別の人格からクレームがつくのではないか?
このあたりからWPATHの方針んがハチャメチャになっていく。読んでる私(カカシ)の方が頭がおかしくなってしまう。
例えばノンバイナリーを名乗る患者は男とも女とも見えない身体を欲し、性器を取り除いて平な外見にしてくれといった。躁鬱病とアルコール依存症の患者で多々の精神疾患のある患者にはspironolactoneというホルモン剤が処方された。この男性は7人の人格があり二人は無性別で全員が手術に賛成しているという。
同ファイルでは他にも何人か多重人格を名乗る患者の性転換が紹介されているが、結論としてWPATHは患者にどのような精神疾患があろうとも、継続的な性違和がある限り性転換治療は効果があるということで意見が一致している。
私には昔極度の精神分裂を病む知り合いがいたが、彼は18歳の頃、自分は飛べると信じて高いビルから飛び降りて死んでしまった。そんな人間に性転換治療の何が理解できるというのだろうか?
患者の治療後ストレスはトランスフォビアが原因?
マイノリティーストレスというものがある。これは性違和患者が治療を受けた後も精神状態が向上しなかったり自殺願望が失くならない理由は世間一般にあるトランスジェンダーへの偏見、つまりトランスフォビアが原因だと言うものだ。
しかしもしそれが本当ならスエーデンのようにいち早くトランスジェンダリズムを受け入れトランスに多大なる理解のある国では、マイノリティーストレスを感じる患者は極端に少ないはず。ところが実際はその反対。前述のスエーデンで行われた長期の術後トランスジェンダーの大人の間では自殺願望や自殺率が非常に高いという結果が出ている。
どれほど治療が良い結果を産まなくても、なにもかも社会の偏見やトランスフォビアに出来るというのは全く便利なものである。
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この章は一つの回にまとめようかと思ったが、話題が二つに分かれている気がするので、今回はいかにしてWPATHが理解ある同意をいい加減に扱っているかという話だけで一旦終わりにしよう。
私は20数年前までは、性違和の診断というのはもっとまともに行われているものと思っていた。性違和を言い出した患者は先ずは精神科で一年くらいのカウンセリングを受け、それでも性違和が抜けない人のみが、今度は異性として暮らしてみて、それが実際に自分の進みたい道だと確信を持った人のみがホルモン治療の上で手術に及ぶものだと思っていた。
しかし現実は全然そんなものではなかった。私はこのファイルを読んでいて、本当に性同一性障害なんてものは存在するのだろうかとすら疑い始めている。少なくとも現在性違和と診断された多くの人たちはそんなものを持ち合わせていない。
WPATHは性違和の診断の基準を定めていると言いながら、実際には何の基準もない。なんのガイダンスもない。ただただ本人がそういえばそれでいいという考えられない診断を下しているのだ。