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”ショック・ドクトリン”~アフガニスタンで中国が起こす?
今回もショック・ドクトリンシリーズ第3弾です(過去のシリーズはご覧の通り)。
前回ではハワイでショック・ドクトリンが起こりそう予感がしたというボソッとをさせていただきましたが、私が国際ニュースから知った情報を踏まえると、今後、アフガニスタンでも起こりそうな予感がしております。
アフガニスタンではショック・ドクトリンが起こる要因が存在しています。
それは、アフガニスタンを実効支配しているタリバン政権が新自由主義に移行することを掲げたときの移行スピードは「ピノチェト独裁下のチリ」よりも早いものになると思われます
しかし、いまのアフガニスタンの経済状況を踏まえると、アフガニスタンだけで「惨事便乗型資本主義」を断行することは困難なのではと思っておりますが、もしそこに大国が関わったときは国営企業の民営化、規制の撤廃、貿易の完全自由化などの新自由主義をすみやかに実行されるのでは?そしてアフガニスタンでショック・ドクトリンが起こったときには、アフガニスタンの市場経済はその大国の餌食になってしまうのではと考えております。
その大国は中国のことです。
なぜなら、いまアフガニスタンのタリバン政権に急接近しているのは中国だからです。
アフガニスタンではタリバン政権が実権を握って2年、いまだ正式な政権と認めた国は1つもありません。しかし、中国だけは別です。そんなタリバン政権と中国が関係強化を図っているニュースからご紹介します。
タリバン政府が”中国との関係強化”と、その背景
NHK番組『キャッチ!世界のトップニュース』で「タリバン”中国との関係強化”の背景」(23/8/29放送分より)で特集を組んでくれた内容を中心に、タリバン政権と中国がいまどのような関係になっているかをまとめたいと思います。
タリバン政府は中国との関係強化を図る一環として、アフガニスタン北部の油田において、中国企業が開発を担うことを合意しました。さらに、中国はアフガニスタンを「一帯一路」の構想に組み込むことになり、両国ともに経済協力を推進することで合意することになりました。
タリバン政府は女性への抑圧的な政策を改めようとしない中、欧米から制裁が続けられています。そもそも今まで国際社会からの援助に頼ってきたアフガニスタン経済ですので、いまは危機的な状況に陥っているのが現状です。
そのため、中国側からの投資に期待する面もあることでしょう。
したたかなタリバン政府
しかし、中国との関係強化に乗り出したタリバン政府は”したたかな外交”を進める気配もあります。
アフガニスタンは1979年の旧ソ連軍の侵攻、2001年にはアメリカらの介入、アメリカが撤退する2021年まで、長い間、大国である旧ソ連とアメリカに実行支配、そして翻弄されてきた歴史があります。
そのため、今回の中国との経済協力によって、再び中国という新たな大国の影響下に置かれることを避けたいという考えも、タリバン政府にはあると考えられています。
なぜならば、タリバン政府には欧米に揺さぶりをかける狙いがあるようですね。
中国に最接近する動きは欧米をけん制しようとする動きでもあり、アフガニスタンへの制裁が解除されない主な原因のひとつとして女性への人権侵害も、タリバン政府は準備が整えば女性の行動制限を解除する予定があるという意思表示もしてきたことからも推測できるように、まさに揺さぶってきています。
このようなタリバン政府のしたたかな戦略があるのは、タリバン政府の一部に中国に対する慎重論が存在しているという見方もできます。
そんなアフガニスタンと中国の関係性が伺えるドキュメンタリーが放送されておりましたのでご紹介します。
中国商魂 “新市場”アフガニスタンに挑む
上記の「タリバン政府が”中国との関係強化”と、その背景」は国同士での関係性について報道されたニュースでしたが、NHK番組「中国商魂 “新市場”アフガニスタンに挑む」では、まさに【現場レベル】でのアフガニスタンと中国の関係性をみることができました。
中国の起業家たちがタリバン下のアフガニスタンを新市場ととらえ、アフガニスタン国内で様々な事業に乗り出す姿をとらえたのがNHK番組「中国商魂 “新市場”アフガニスタンに挑む」です。
中国人向けの宿泊施設を始めた中国人インフルエンサー
高級ホテル経営に乗り出したホテル経営未経験者
工業団地の開発を目指す中国人投資家
鉱山開発に多額の投資をして進出した中国人
アフガニスタンで映像メディアを立ち上げた中国人
世界で最も危険だと言われていたアフガニスタンでリスクを恐れずにチャレンジする彼らの姿は、まさに勇ましい姿でした。
私はアメリカにいたときに、中国人たちのビジネス感覚には本当に良い意味で驚かされました。彼らのビジネスに直接触れた機会が多かったこともあり、「日本人はビジネスでは中国人には勝てない」、そう私が思わせるほどのスキルと情熱を持った中国人の姿、それはまさにこの番組に取り上げられている中国人の姿そのものでした。
そんな彼らはアフガニスタンのことをこう言います。
「アフガニスタンには無限の可能性がある。」
やはりリスクはリスクだった
「タリバン政府はしたたかな戦略を打ち出している」、と前述したとおり、実は現場レベルでも中国人はタリバン政権に翻弄されていきます。
中国人起業家は番組でこのようなことを語ります。
計画について政府から合意を得たのにもかかわらず、途中で突然やめろと言われる。
当初は優しかったし、サポートすると言われていたが、蓋を開ければ、なにかをやろうとしてもなかなか許認可が下りない。
タリバン政府の大臣はすぐに変わる、大臣が変わればやり方も変わる。
そんなタリバン政府の不確定要素によって、中国人起業家たちは苦しめられていきます。
結局、番組最後で彼らのその後について紹介されていましたが、撤退や赤字、武装グループに襲撃されたなどといった明るい話題は何ひとつありませんでした、「やはりリスクはリスクだったのか・・・」と思われる内容ばかりでした。
それでもタリバン政府は中国からの投資を望んでいる。
したたかすぎるタリバン・・・
中国によってショック・ドクトリンが起こるかもしれない
ここからは中国によってアフガニスタンでショック・ドクトリンが起きた場合の妄想ですが・・・
先ほどご紹介したNHK番組「中国商魂 “新市場”アフガニスタンに挑む」の番組の中でアフガニスタンに進出している『工業団地の開発を目指す中国人投資家』の方がこんなことをおっしゃっていました。
工業団地の開発を目指す中国人投資家
「商業施設も工業団地を形成したら、現地の人はいれない。区分管理をする。」
「ここは中国人のコミュニティになる。外部から切り離された世界になる。」
「中国人の居住地ではアフガニスタンの法律に従う必要はない。」
こんなことが現実に起きたら・・・
これ、まさにニューオーリンズで最初に行われた「復興特区」の設置、つまり民主主義のフリーゾーンを作ることと同じことが起きる。
そんなことが現実に起きたら、まさにアフガニスタンの経済は中国の餌食にされ、チリで起こったように、外国から安い輸入品があふれ、国内企業は衰退、いま以上のインフレ率があがり、いまよりもさらに食糧不足に陥り、これまでにない失業者数が増える、つまり、ショック・ドクトリンによってアフガニスタンで富裕層と貧困層の格差が拡大、世界が経験したことがないほどの空前の格差社会が生まれていくのではないか。
いまアフガニスタンでは深刻な食糧危機が起きています。ロシアによるウクライナ侵攻に対して世界の資金はそこに集中している現状がある中で、アフガニスタンを支援しているWFPに資金が集まらないためです。
タリバン政府が中国と組んでショック・ドクトリンが起きた場合、私腹を肥やしたタリバン政府はさらに富裕層に、経済から締め出しをされた市民たちはさらに貧困層に陥る・・・そんな世界、私は嫌です。
だからこそ、WFPに資金が集まるためにも、一刻も早く戦争を終わらせなければならないと思います。
しかし、その戦争でもショック・ドクトリンが起きそうな予感がしています・・・