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フジロックの「超気持ちよさ」は3.5万円追加で買えるとこにはないと思うす。

聞いて聞いて!フジロック'23なんと今年ノートラブルでした!車やバイクが壊れたりサイフ落としたり、あと帰宅したあと交際ステータスに変更があったりしませんでした!さすがフジロック皆勤太郎だよヴェテランの余裕!みたいな感じで今年のフジの話です。

お疲れさまでした、楽しかったね

開催から1週間、今はいい感じの余韻とともに暮らしています。

もちろんTLに出るコリー・ウォンの動画観ては「やっぱ見とけばよかった…」と思ったり、ほかにも完売ラムチョップへの未練や、あと適度にシェアしてもらえたがIDLESのTシャツまだ手に入らないとかあるけどそれぐらい。

そんな「フジよかったっすねえ」的な余韻を楽しめるのは、なんていうか現地から今日まで「フジロック×コロナ」の話題や必要以上の警戒心に支配されたりせず過ごせたのが大きいかもしれない。実際身内で感染した人の話も聞かなかったし。

歓声が上がり、時にダイブモッシュもあり、YAZAWAの前でタオルも上がった。自分はクリスタルパレスやレッドマーキーの深入りを避けるとか、手洗いうがいを心がけたからか、ひとまず感染しなかった模様。なので昨年あんだけ運営が繰り返し訴えた「いつも通りのフジロック」は2023年でようやく果たされたと感じた。では、下記のような今年のスローガン「超気持ちいいフジロック」についてはどうか、を体験とともに述べたい。

チケ代と別で1日3.5万円払って得る超気持ちよさ

https://www.fujirockfestival.com/guide/index

「超気持ちいい」オッなるほどですね。30代以上には主に水泳・北島康介のメダル獲得時の言葉として知られるが、20年前の流行語って運営まじ大丈夫そ❓と当初そのセンスを本気で心配しつつ、その正体が新方式「フジロックプラス」で少し安心し、やっぱりまた少し不安になった。

だってチケ代、キャンプサイト券だけでなく会場のハイネケンまで一律値上げして、そこへさらに追加VIP券発行だなんて!と、これ市民の怒りが沸き起こったりせんかと勝手に心配してた。実際のところサマソニはVIPチケット定着しててグラストンベリーはじめ各国VIP相当のスペース提供、優先サービスが当たり前になった昨今のフェス事情もあるのだろう、ブルジョワジーな追加券はさほど議題にも上がらず、しかし事前にしっかり売り切れる券種も出た上々の幕開けとなった。

フジロックプラスは2種類で、2万円で会場内シャトルバス・専用休憩所・飲食優先レーンを使える1と、1.5万円で物販優先レーン・ステージ優先観覧エリアを利用できる2がある。これがチケ代とは別かつ1日単位で販売された。全日程でこれだとチケ代+10万!正直躊躇する値付けだと思う。

左から1.5万、2万、5.5万円のリストバンドです。アアー

しかし自分はやっぱり実学の誘惑に勝てず、フジロック23の初日にこれを利用することにした。ぶっちゃけ昨年は体力がもたず連日トリ前に休憩を挟んでたので今年も同じだと3日間は難しい…という悩みがあり。いやー当日券売り場で3.5万円カード切るのまじで震えたす。

苗場生活を根こそぎ変えたフジロックプラス

結果から言うと、フジロックプラスは欲しかった人にとって待望の制度で、かつ絶対に定着してほしいと思える仕組みだった。特に2万円のフジロックプラス1はもうフジロックの過ごし方・楽しみ方を根こそぎ変える権利を得る、なんかもう別空間にいるかのようだった。

レッドマーキーからホワイトまで6、7分で移動できるシャトルバスはエアコン強めで座席にUSB&AC付きの車両もあり、それが10分ごとに出ていた。飲食優先レーンは初回ボーナスもあり飲食で並んだのほぼゼロ(今年フジ行った人はこの異常さが伝わると思う)。そして何より専用休憩所には専用の洋式トイレが付いてました!

バスはいわゆる裏動線を走るルートで、グリーンステージ背後の道路を行き来した。取材者やアーティストはそこを使えはするがこのシャトルのようにスイスイ出る乗り物がなく、ある意味アーティストより便利な移動手段を手に入れると言ってもいい。自分にとって一番エクストリームな使い方は「グリーンの転換時間のうちにハイジカレーを買い、ヘブンとホワイトをチラ見して再び戻る」だった。欲張って縦横無尽に動くときはあれど、それを急いだりせずやりきれるので不思議な気持ちになった。

一方1.5万円のプラス2は率直に微妙。優先物販レーンは利用頻度も少なく、ライブ優先スペースも最前ではなくPA横とかに柵で囲まれた小さなエリアへってもので、向かうには通常通り人混みをかきわけ、満員の中にぽっかり空いた空間にわずかな人しかいないのは人間動物園状態。ちょっとおじあんな気まずい場所で楽しく踊れませんでしたね…貴重な機会ありがとうございました!

そんなこと言いながら待ち時間ゼロでYAZAWAのタオルを買ったおれだぜ

そう、今年のフジロックプラスで値段よりもはるかに高いハードルが「特権を行使する後ろめたさ」だった。ライブの空間もそうだが、何十人と並んでる飲食店でリストバンド見せて実質割り込み注文するのまじでやばい。苗場食堂は完全にレーンをわけてたが、それ以外は基本的に行列無視して注文口に向かい、お声がけベースで優先客だと言う必要があった。その時の間もだし、しまいには焼いてたクレープの受取まで前の人から自分に替わってとかもうな…。これは来年以降フジロックプラスの知名度が上がることでなんとかなってくれるはず。いやライブの優先スペースの位置は再考たのむまじで。

そのほか会場の気持ちよくなかったところ

フジロックオタクとして引続きブツブツと難癖をつけていきたい。だから参加してない人とかは次のとこまでスキップして大丈夫です。

はい。

完全キャッシュレス今年もダメでしたね…山の中だし大人数だしで大なり小なりの通信難はもはや想像の範囲……だけど!これ去年もやったじゃないすか…!なし崩しで会期中の「現金やっぱ可」宣言だいぶ厳しかった。キャッシュレスNGのヘブン物販でカード片手に1時間並んだら「やっぱ現金だけOKですー!」となったとき、フジロックプラス持ってたから良かったとはいえ、結局外に出て現金おろし、数時間後に戻ったら売り切れ、立ち尽くしました。

それも含め、コロナ前の客入りに戻った2023年は想定外の入場数に由来するトラブルが散見された。スポンサーの石鹸メーカーによる「スタッフが水で薄めて使わせたっぽくてごめん」という異例のお詫び文はまだ笑えるが(すみません今年もいい香り感謝です)、会場内での水の売り切れとかはマジで洒落にならない。あと決済のせいでハケづらかったであろう飲食店の列は「これ子供ぐずってたら詰むなー」と思った。

年々増える子連れ客も、そろそろ次の対策が必要に思う。コロナ以降の開催時はそこまでなかった「人みっちり状態の夜間ステージ移動」の行進にエアバギーねじこむのは自他ともにあぶなそう(だし、子供が怖がるのではとも思った)。耳へのケアとかより、動線の再設計とかを今後ちゃんと考えられたらいいなと。昨年から単身参加とはいえ「子連れ」当事者のひとりとして「フジロック…連れてくとしても万全の対策と自粛が必要なのかもなあ」と色々考えた。このへんはまだ答えが出ません。

ステージ外にあるフジロックのアイデンティティ

いやフジロック23ほんと変わりました。カフェ・ド・パリをなくして最奥地に居を構えたアヴァロンを従来の位置に戻し、そのせいでオレンジコートは完全に避難場所というか音の気配ゼロの殺風景な飯場と化した虚無感たるや!こっちはものまねステージ復活を目標にしたクラファン始めてくれたらマジ10万円ぐらい投じる覚悟しとくから!

配給所と化したオレンジ。これまだ並んでない頃ので、土曜日は地獄でしたね

ただ、ポジティブな変化を如実に感じた年もひさびさだった。

数年前の当時ヘリノックスへの同情を禁じ得なかった「組み立て椅子禁止」はもはや持ち上げ芸人は皆無でそろそろ許可に戻してよさそう。最悪だったゲート手前の企業ブース配置も若干(若干)悪目立ちしなくなった気がする。キツいなーと思うブースいくつかあったけどまあ今頃当事者の手元で数字として出てるだろうから割愛します。

そしてボードウォークのステージ(木道亭ではなく森のピアノだけど)、みんな大好きパレスオブワンダーの復活はもう…野村さんおれはチープカシオ家族全員に配布してきますねってなるよ。ゆるふわギャングがシークレットで出てたと聞き身悶えしたし。

そういうところから「ああ、フジロックフェスティバルの本当の復活はこれからなんじゃないかな」とつくづく思った。ここ数年、自分が友人とかに「フジロックは死に水と記録のために毎年行く〜」みたいな話をしてたのは、とにかくフジを運営する側から「コストカットしつつ積み上げたブランドで吸い上げていく」的なモードに入ったようにしか思えなくなったからだった。
もしかしたらそれは正解で、もしかしたらその方針が引続きあるのかもしれない(パレスだって協賛付いたから復活できたって話で)。ただ、少なくともタイムテーブルに書かれていない部分の魅力を改めて噛みしめることができたという実感が、今のフジロックをフェスティバルだと再認知させてくれている。

心理的なハードルが高い新機軸フジロックプラスに対して自分が好意的でいる理由もそこにある。このサービスは昨今しばしば機能不全に陥る子連れプライオリティエリアや、いわゆるフジロッカーの深刻な高齢化に対しての物理的な解決策になりうる予感がしました。もちろん色んな不具合や不平不満があると思うけど、そういえば27歳を迎えるフジロックさんは自分や仲間とPDCA回せるしごでき君であったなと、なんか思い出しましたね。

2024年フジロック行きます。行けばきっと楽しい

フジロックプラス休憩所の中から仰ぐレッドマーキー

結論としてはすごくポジティブに来年も行きてえなと思った次第です。矢沢永吉のパフォーマンスを引き合いに出すまでもなくフジロックという場の底力を感じられた2023年、今後もぐちゃぐちゃなんか言ったりしても、そこに対して企画や工夫の動きさえあれば、あとはたぶんケミカル・ブラザーズが来るだけで全然大丈夫最高!って言える(し、その手前の前夜祭でDJ MAMEZUKAがスターギターを流すだけでも8割OK)。あとお金かけてわけわかんないもの置いてくれる度量さえ見せてくれれば、制度や運営なんて最悪水だけしっかりしててくれればいい。おれらは森で暮らす。

というか、あんまいなさそうだったけど仮に「便利さをカネで買うなんてフジロックのスタンスに反する」と憤る人がもしいたら「まあそうだよね」と返事する。だってもし初めての人がこれ使っても、シャトルバスだけで行き来するステージ移動が思い出として現像されることは絶対ないもん。これはフジロック本来の楽しさ(とよく言われる要素)を削ってでも得たいものがある人向けのサービスだ。
毎年苗場には最前列でライブを観ることを生きがいにする人がいて、大トリの裏でチケ代に見合わないパフォーマーと最高の夏を描くばかたれもいる。そういう人たちが等しく「今年はよかった」と言い合えて共有できる、その成立こそフェスティバルの真髄。だからおれは選択肢を増やした今年のフジロックにただただ賛辞を送りたい。

あと350日

「オアシスにはワールドレストランあってほしかったな」とか「場内駐車場のオレンジのアメ車とかフラワーなバイクはどこに」とか失ったものばかり数えるな!あと今年行けなかったけどピラミッドガーデンむやみに心配するな!みたいな感じでセピア色になってきつつある自分ではございます。同じような理由だったり配信待ってたりとかで来なかった友人各位におかれましては、まあ来年どっかですれ違えたらいいなと思います。配信の有無とかチケットとか関係なく、なんか今年行ったら気持ちよかったんですよね。

そして最後に、1・3・5歳児を東京でワンオペ4日間見てくれてた妻ほんとうにありがとうございました。昨年「ほかのどのライブとか予定諦めてもフジロックだけはひとりで行かせてください」ってお願いをギリギリまで永年か去年限りの話なのかすり合わせられておらず申し訳ございませんでした。来年は…!

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