『ひたいにイボができただけなのに』
ひさしぶりに病院に行った。
皮膚科だ。
なんてことはない、少し前からひたいに小さなデキモノができたのだ。
押したら少し痛いが、そこまで気になるものではなかった。
それでもなかなか治らないので念のため診てもらうことにした。
家族の証言によると、そのデキモノは少しずつ成長しているらしいが、わたしはその成長を感じていない。
病院というのは、どのようなときであれ緊張をもたらす存在だ。
たとえ、米粒ほどのデキモノを診てもらう皮膚科であっても。
受付をすませて、順番を待つ。
朝一で行ったこともあり、2番目だった。
すぐに呼ばれた。
「今日はどうなさいましたか?」
「額に芽がはえました。」
「ああ、これですね。写真撮って詳しく見てみましょう。」
「いきなりレントゲンですか?」
「いいえ、これです。」
先生はデジカメを額に押し付けて、カシャ、カシャと2枚写真を撮った。
それをすぐにパソコンに取り込んで、画面に映した。
思えば皮膚科には10年以上かかっていなかった。
最近の診察ってこう言う感じなんですね。
でかでかと映し出されたデキモノを見ながら、先生は一言
「これはイボですね。」
「イボですか。(でしょうね)」
「脂漏性角化症というやつです。」
「しろーせいかっかっしょう。なんですかそれは。」
「加齢によるもので良性のイボです」
「か、加齢ですか!?」
一瞬、頭が混乱した。
たしかに毎年、歳を重ねていたが、年齢を意識することはなかった。
20代の頃から腰痛や肩こりはあったが、加齢によるものとは考えていなかった。
ただ、このイボの原因は明確に老化によるものだった。
自分の体が老化して、不具合が出ていることを知らされた。
『ひたいにイボができただけなのに。』
そんな映画が頭の中で始まりそうだった。
わたしは老いた人。
治療法は、レーザー照射か液体窒素。
今考えると、どっちも大がかりだったが、どちらでもよかった。
問題はイボが治るかではない。老化だ!
結局、安くて、日常生活に支障がない液体窒素を当てる治療法になった。
綿棒を液体窒素につけて、それを3秒間ひたいに当てる。
繰り返すこと20回。
ただそれだけだった。
これを1週間空けてあと1,2回続ければイボはとれるらしい。
どうでもよかった。
イボがとれても、老化は止まらない。
年齢を重ねることは、損なことばかりではない。
むしろ最近は経験を積むことで見えてくることも多いと考えている。
「老いた」とショックを受けているのは、自分が青二才である証拠だ。
頭ではわかっているのに、『加齢による』という言葉のインパクトは大きかった。
『ひたいにイボができただけなのに』
fin
~エンドロール~
運動しよう。
食生活を見直そう。
生活のリズムを整えよう。
加齢はこわくない。
年齢を重ねるごとに人間味は増していく。
カーネルサンダースは65歳でケンタッキー・フライド・チキンを起業した。
ではまた。