「女性が描く女性の物語が好き」くろめがさんの選んだ3冊を紹介
こんにちは、Webライターのメグノンです。
今回は「あなたの好きな本、教えてください!」というインタビュー企画の記事をお届けします。
第一弾のゲストは、noteのクリエイターとして活躍しているくろめがさんです。「女性が描く女性の物語」というテーマで好きな本を選んでいただき、お話を伺いました。
【この記事で紹介する本・漫画】
『青い城』(モンゴメリ)
『子供なんか大キライ!』(井上きみどり)
『魔女の宅急便6 それぞれの旅立ち』(角野栄子)
有名な作品もあればあまり知られていない作品もあります。気になる本があれば、ぜひ読んでみてください。
※インタビュー企画の詳細はこちらの記事からご覧いただけます
【くろめがさんのプロフィール】
秋田県在住のフリー編集者。noteをこよなく愛するクリエイターで、800人以上のフォロワー数を誇る。ライティングや編集だけでなく、note記事の添削やkindle出版のサポートなども手がけている。
くろめがさんのnoteのアカウントはこちら
「女性が描く女性の物語」というテーマを選んだ理由
――まずは今回のテーマを選んだ理由を教えてください
私のフォロワーさんは女性が多いので、女性目線の本を紹介したいと考えて「女性が描く女性の物語」というテーマにしました。
同性だからこそリアルな描写ができるし、共感できる部分が多いと思うんです。もちろん男性が描く物語も読みますが、どちらかというと女性の書き手に気持ちが寄りがちかもしれません。
その他にも、時代は違えど一生懸命生きている女性を応援したくなるという理由もありますね。作家のバックボーンを知ると「こういう人生を歩んだからこんな作品を書いたのかな?」と想像できて楽しいです。
『青い城』:ライトノベルのような展開にドキドキ
――この小説を選んだ理由を教えてください
モンゴメリといえば、誰しも『赤毛のアン』を思い浮かべるのではないでしょうか。メジャーな作品も悪くないですが、それでは捻りがないなと。だからあえてみんなが知っていそうで知らない小説を選びました。
『青い城』と出会ったのは、大学院で文学を専攻していた頃です。有志の読書会に参加した際に、たまたまこの小説を知りました。モンゴメリのイメージを根底から覆す吹っ飛んだストーリーだったので、初めて読んだときはとても驚きましたね。
ネタばれになるのでざっくりとあらすじを紹介すると、主人公のヴァランシー(29歳独身)が医者の手違いで余命1年と勘違いして、どうせ死ぬなら好きなことをしようと行動を起こします。村で変わり者といわれていた青年バーニーと愛のない結婚をして、最終的にハッピーエンドを迎える展開です。
最初は地味で自分に自信のない主人公が、どんどん垢ぬけて素敵な女性へと変貌を遂げるのですが、まさに女性向けのライトノベルみたいな展開で!
この小説を読んだのがちょうど夫(当時は彼氏)と知り合ってウキウキしていた時期だったので、ものすごく印象に残っています。
――とくに好きなシーンはどこですか?
ヴァランシーが貯金をはたいて洋服を買うシーンがあって、そこからの流れが好きですね。
ずっと母に管理されていたヴァランシーが「自分の」好きな服を買うんです。で、それを見たバーニーが彼女のことを「月光さん」と呼び始めます。結婚当初、バーニーはヴァランシーに対して親しみはあっても愛情は持っていなかったのですが、このあたりからより関係が深まっていきます。
少女漫画にありそうな筋書きですが、まったく古臭く感じません。さすがモンゴメリだなと感服しました。
――この小説の魅力はどんなところにあると思いますか?
『青い城』の魅力は、単なるシンデレラストーリで終わらせないところにあります。世間の圧力をものともせず、ヴァランシーが精神的に強くなっていく姿に勇気づけられる女性は多いんじゃないかと。
モンゴメリが生きていた時代(19世紀~20世紀)だと、独身女性に対する風当たりが非常に強かったはずです。現代なら普通ですけどね。一言でまとめると「女性が抑圧からの解放を目指す物語」なのですが、今の人が読んでもおもしろいのではないでしょうか。
『子供なんか大キライ!』:子育て中のお母さんへのエール
――この漫画を選んだ理由を教えてください
私の好きな本を語るうえで欠かせない作品だからです。たしか小学4年生くらいから読んでいて、もはやバイブルといっても過言ではない一冊でして。Xの投稿やスペースなどでもたびたび紹介しているので、フォロワーさんならご存じかもしれません。
「子供キライ」と言いつつ、作者なりに育児と向き合うスタンスが好きですね。なぜか母が単行本の4巻だけ持っていて、何度も読みました。大人になってから全巻そろえるほどハマりましたね。
――おそらく小学生向けの漫画ではないと思うのですが、なぜ小学生時代にハマったのでしょうか?
大人になって当時を振り返ると、両親がどんなことを考えて自分を育てているのか知りたかったのではないかと思います。子どもの頃に「母親とは何ぞや?」という疑問を持っていて、純粋に「お母さん」ってどんな人なのか知りたかったんでしょうね。
ちょうど小学校の高学年で思春期に差しかかる年代だったし、大人の世界に興味があったのかもしれません。
――とくに好きなシーンはどこですか?
作者の夫・ひーちゃんが出張で家を空けたときのエピソードです(第1巻5話:『ママ(?)のいない1週間』)。
作者は育児が苦手だったので、普段はご主人がメインで子供(長女)の世話をしていたんだそうです。そのご主人が不在にするということで、今でいうワンオペ育児をするのですが、長女がぐずり出してどうにも手が付けられなくなります。
お子さんがいる人は理解してもらえると思うのですが、子供が泣き止まなくて自分も泣きたくなるときがありますよね。子供は泣いて騒ぐし、自分も涙が止まらないし、もう収拾が付かない。作者がそのような状況になり、ご主人に電話して愚痴をこぼすんです。
作者が電話している間も長女が泣きながらしがみついてくるので、「ママ大事なお話してるから、少し静かにしてね」と頼んだら、意外にも素直に言うことを聞いてくれて。その様子を見て、ちゃんと伝えれば子供もわかってくれるんだと作者が気づかされるんですね。
「子供はいちばん近い他人」。母親であっても、しんどいときは「子供なんか大キライ!」って叫んでもいい。もちろん手を上げるのはNGですが、育児が辛いなら辛いと言えばいいんだと。すべてのお母さんに対するエールのようなお話で、いまだにお気に入りのエピソードです。みんなが思っていても口に出せないことを作者はストレートに表現するので、すごいなと思います。
――この漫画を読んでご自身の育児経験に生きている部分はありますか?
そうですね、子育ての心のよりどころとして役立っています。何か困ったことがあったときに、『子供なんか大キライ!』にもこんなシーンがあったなと頭によぎりますね。
たとえば息子が幼稚園に行きたがらないとか、喘息で苦しそうにしていたらどう対処すればいいとか、子育てにおいてもちょっとしたバイブルになっています。育児には正解がないからこそ、先輩ママの体験談が救いになるというか。
『魔女の宅急便その6 それぞれの旅立ち』:意外に知られていない映画のその後
――この本を選んだ理由を教えてください
『魔女の宅急便』はジブリ映画で知っている人が多いでしょうが、結末まで追いかけている人は少ないだろうと考えて選びました。私が大学生の頃にちょうど文庫本が出版されていて、なかでも佐竹美保さんのイラストが好きだったから装丁版を購入したという経緯があります。
実は6巻まで出ていて、最終的にキキとトンボが結婚して双子の姉弟の親になっています。個人的にとても好きな巻なので、最後まで知っている人がもっと増えてほしいですね。
――とくに好きなシーンはどこですか?
好きなシーンはたくさんありますが、あえて1つに絞るなら満月の晩に双子の子供たちが修行へ旅立つ場面です。『魔女の宅急便』といえば外せないところですね。
作者の描く魔女の世界では、旅立ち=満月の晩とされています。姉のニニと弟のトト、それぞれが自分の意志で進む道を決めて大人になるための第一歩を踏み出すところで物語が幕を閉じます。
かつて母親のコキリさんに見送られて修行に出たキキが、今度は子供たちを見送る立場になる。ストーリーがぐるっと一周して1巻の最初に戻っていくのが素敵だなと。
子供たちが修行に出るまでには紆余曲折ありまして、姉は魔女になる資格があってもあまり興味がなく、弟は素養があっても男の子だから魔女にはなれず悩みます。キキの出番は少なくて、父親のトンボさんがそれとなくアドバイスしてくれるのがナイスですね。
ジブリ映画版にまつわる裏話を紹介すると、キキが旅立つ場面で母親からもらったお古の鈴を鳴らすのは作者のこだわりです。アニメ映画化するにあたり、角野さんが「必ず鈴のシーンを入れてください」と宮崎監督にお願いしたんだとか。そういう豆知識を知ってから映画を観ると、新たな発見があるかもしれませんね。
編集後記
くろめがさんのお話を伺っていて感じたのは、好きな本が人生に与える影響は大きいということでした。小学生の頃に読んでいた漫画が今や育児のバイブルにもなっているとは驚きです。それだけ長く読み続けるほど大事な作品に出会えるのは幸せなのかもしれません。
今回は女性向けの本を紹介しましたが、男性が読んでもおもしろいのではないでしょうか。強くたくましく生きる女性の人生に興味があれば、ぜひ手に取ってみてください。