血のつながりは無くても、子どもは愛されることができる「そして、バトンは渡された」瀬尾まいこ
1.本の紹介
2019年度の本屋大賞受賞作、ということで手にとりました。受賞インタビューとかを読むと、教師としての経験が結構反映されているようです。いくつか映像化されている作品もありますが、瀬尾さんの小説は初めて読みました。
2.あらすじ
1:実父と再婚相手(梨花さん)との暮らし
まず、小学校に入る前に母親が事故で亡くなる。そして実の父は、娘の健やかな成長を願い、優子の第2のお母さんになる梨花と結婚する。再婚するまではおばあちゃん・おじいちゃんと同居してたため、優子はおじいちゃん・おばあちゃんの価値観も受け継ぎます。
梨花さんは、自分の人生を楽しむことが第一と考えている女性。優子の母親になることについても「産む痛みとか、赤ちゃんの時の苦労とかなしに親になれてラッキー!」的な発言がある。
3人での生活が始まってほどなくして、実の父(水戸さん)のブラジル転勤が決まり、梨花さんは離婚をきめました。優子は決断に迫られます。父親とともにブラジルに行くか、梨花さんと日本に残るか。結局、学校の友達と離れることが辛く、日本に残ることを決めました。
2:梨花さんとの暮らし
そこからは、梨花さんと二人で貧乏暮らし。苦労も多いけれど、人生を楽しむ梨花さんとの暮らしは、それなりに楽しいものでした。ある日「ピアノがほしいなぁ」と漏らした優子のために、梨花さんはお金持ちの泉ヶ原さん(2人目の父親)との再婚を決めます。
3:梨花さんと2人目の父(泉ヶ原さん)
お手伝いさんのいる生活は、物質的には満たされている。でも、退屈な生活に梨花さんが飽きてしまい、梨花さんは家を出て行ってしまう。お金はあるけれど満たされない生活の中で、心の支えとなったのはピアノと、何があっても気にかけていてくれる泉ヶ原さんの存在だった。
4:梨花さんと3人目の父(森宮さん)
梨花さんは突然、泉ヶ原さんと離婚し、別の人と再婚することを告げ、優子を引き取った。3人目の父になった森宮さんは、東大卒のエリートサラリーマンで、優子の育ての親になることを覚悟して梨花さんとの結婚を決めた。何を考えている分からないところもあるけど、森宮さんは料理や洗濯などの家事もそつなくこなし、3人での共同生活を楽しんでいた。でも、またもや梨花さんが突如失踪。
5:森宮さんとの二人暮らし
物語は、森宮さんと二人暮らししている優子の生活をたどりながら、過去を振り返るエピソードが挿話されるかたちで進行する。二人の生活は、軽口をたたきあうような安定した関係で、親子というよりも仲の良い男女の友達の生活を見ているような印象を持つ。森宮さんは「優子を育てる」ということを第一に優先し、様々な判断をしている。といっても、優子の選択に介入することもなく、優子が育つのを見守る、というほうが正確かもしれない。
6:優子の結婚
第2部は優子が早瀬君と結婚するにあたり、これまで育ててくれたそれぞれの親に会い、過去を振り返るお話。当時は分からなかった事実が明らかになる。梨花さんがなぜこんなにも離婚を重ねたのか、それぞれの親はどんな気持ちで優子と接していたのか。第1部を読んで、自分勝手な梨花さんという印象をもっていたけど、自分勝手に見えていた梨花さんも、梨花さんなりに優子第一で判断していたことがわかる。
3.よかったとこ
親として、自分が病気になったときに子どもにどう接するのか。梨花さんは自分をあえて優子から遠ざけ、優子をきちんと育ててくれる人を見つけ、その人を優子のそばに置くことを選んだ。梨花さんだって、優子の傍にいたいのに。悲しませないために、自ら身を引く。そんな愛し方もある。
継父として、娘への愛をどのように表現するのか。不器用で自分から娘への愛情を伝えられない泉ヶ原さんは、優子のピアノを手入れすること、優子の弾くピアノを聞き、その心情理解に努めることを続ける。そして、それらのことを通じて、優子に安心感をもたらすことが出来るということを教えてくれる。
「子どもを育てる」っていうことはどういうことなのか。毎日ご飯をつくり、洗濯をし、食事中に軽口をたたき、相談事をされた時にはきちんと考えて自分の意見を伝える。そんな日常から成り立ってる。ということを森宮さんは教えてくれる。
4.こんな人におすすめ
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