食糧事情アイディア
異世界における食料事情を考えるうえで、家畜や農耕の成り立ちをWikipediaで調べてみた。
家畜とは
ヒト(人間)がその生活に役立つよう、野生動物であったものを馴化させ、飼養し、繁殖させ、品種改良したものをいう。
豚は猪を、鶏はキジを、牛はオーロックスを家畜化する過程で品種改良されたものである。
家畜を繁殖、飼育または肥育し、食料や素材を入手する産業を"畜産"という(飼育する動物が水棲生物の場合は養殖という)。
畜産とほぼ同時期に有用植物を生産する"農耕"がはじまる。
農耕とは
共同体の食物供給 もしくは 他の需要の為に"田畑に作物を植えて、育てる"という継続的な活動のこと。最古の農耕実績は稲作と言われている。
食料の入手方法
食料の入手方法は5つ。
①狩猟する。
②野草を採る。
③畜産する。
④農耕する。
⑤漁をする。
※漁というと海で行われるのが代表的だが、川や湖、沼から水棲生物を得ることも漁に含まれる。
畜産は可能か?
畜産するにはある程度安全な牧草地が必要となる。それなりに防衛機能の備わった地域でないと畜産は難しいだろう。史実、狼から羊を守りつつ飼育する"羊飼い"という職業が存在していた。
ファンタジー世界では薬草採取やモンスター退治が初級冒険者の仕事として割り振られるが、その中に羊飼い(家畜の護衛)があってもおかしいことではない。
→ライトノベル「この素晴らしい世界に祝福を」では家畜や子供を食べるジャイアントトードというモンスターが登場しており、ジャイアントトードを討伐するクエスト(仕事)が存在する。
無毒化
動物肉や植物を食料にする際、無毒化(便宜上、寄生虫対策もこれに含む)が必要なものなのか考えてみてもいいと思う。
・寄生虫がないのか?
・毒になってしまう成分を含んでいないか?
・ウィルスが潜んでいないか?
実際の無毒化例
①こんにゃく芋
こんにゃく芋に含まれる"シュウ酸カルシウム"は毒性がある。
触れるとかゆみ、痛みを感じる。
生食するとかゆみ、痛み、灼熱感を感じる。
→草木灰の上澄液 もしくは 水酸化カルシウムと煮込むことによって無毒化することができる(シュウ酸カルシウムは熱に弱く、加熱することで無毒化できるのだが、水酸化カルシウムを加えることでこんにゃく芋からシュウ酸カルシウムを排出しやすくする必要がある)。
②アニサキス
魚介類、牛、豚に寄生する"寄生虫。
主に内臓の表面に寄生しているが鮮度の低下や時間経過によって可食部に移動することがある。
アニサキスが体内に取り込まれることで腹痛、吐き気、嘔吐といった症状を引き起こす。死亡例は無いが数日にわたって痛みを引き起こす。
→70℃以上の加熱処理を1分、-20℃の冷凍処理を24時間行うことで予防できる。
③E型肝炎ウィルス(HEV)
野生動物(鹿や猪など)の肉にはHEVが潜んでいる。
HEVに感染した場合、急性肝炎、発熱、悪心(吐き気といった不快感)、腹痛などの消化器症状、肝機能の悪化を引き起こす。
→十分な加熱処理を施すことで予防できる。
④施毛虫(トリヒナ)
主に熊に寄生している寄生虫(野生動物に限らず、家畜にも寄生する)。
トリヒナが体内に取り込まれることで発熱、筋肉痛、目の周囲の浮腫(むくみ)、脳炎などの症状を引き起こす。最悪、心不全などで死亡することもある。
→75℃以上の加熱処理を1分行うことで予防できる。
※冷凍処理、乾燥処理を施しても予防できないらしい。
⑤ニホンウナギ
体表の粘液、血液に毒が含まれている。
毒に触れると粘膜が赤く腫れる、炎症、激痛、化膿を引き起こすといった症状を引き起こす。どちらも粘膜に触れることで症状を引き起こすため、経口接種だけではなく傷口に触れてもいけない。
→60℃以上の加熱処理を5分行うことで無毒化できる。
⑥キャッサバ
キャッサバの表皮と芯にはシアン化合物(青酸カリと同類)が含まれている。
接種した場合、中毒や死亡といった症状を引き起こす。
→皮を剥いて4時間茹でる(途中、茹で汁を交換する必要あり)。その後、細かく切って16時間ほど水につけておく。
→4〜5日ほど水につけておく。
⑦バラムツ
可食部には"ワックス"が溜め込まれており、"蝋"に近い性質を持っている。
生食した場合"ワックス"は消化できず、大腸から排出される(皮脂漏症)。他にも腹痛や下痢を引き起こす。
→味噌漬け もしくは 塩漬け をすることで油を抜く。
異世界での毒の扱い
前説明が長くなってしまったが、異世界ものに話を切り替えてみよう。
異世界ものの作品ではオークを代表とするモンスターが食用されていたりする。
果たして、それらは単純な無毒化処理だけで食用できるものだろうか?
魔石を有するモンスターの肉は安全か?
しばしばモンスターには魔石(高純度の魔素が結晶化したもの)が体内に含まれていることがある。魔石は様々な作品で金銭と交換できるだけの価値がつけられている。魔石が生命活動媒体になっていることもあるが、魔石を破壊しなくてもモンスターは死亡するため、体内で精製される結晶と考えるのが妥当であろう。魔石を体内で生成するモンスターの肉は普通に食しても問題ないモノだろうか?
モンスターの肉の取り扱い方について、いくつかアイディアを考えてみた。
①結晶化するほどの魔素が可食部にも残ってしまう為、そのまま食すと腹痛や魔力酔いといった症状を引き起こす。
→魔素を抜く為に数日置く必要がある。
→魔力酔いはアルコールに似た酩酊感をもたらすので一部の好事家は摂取量を見極めた上で、そのまま食している。
②モンスターの死後、魔力が可食部から抜かれず、毒素を発生させる。
→消毒作用のある薬草で煮込む事で無毒化できる。
③ドラゴンはとてつもないデカさの魔石が取れることもあるので結晶化しきれていない魔力が可食部にも浸透している。死後、適切な処理を施さないまま死体を放置すると残存魔力によって自立行動し、さらには毒素を周辺に振り撒く。
→「盾の勇者の成り上がり」では放置されたドラゴンの死体がゾンビ化し、近隣に悪影響をもたらしていた。このようにアンデッドモンスター化してしまうというのもありかも。
属性を有するモンスターの肉は安全か?
しばしば属性魔法が採用されている異世界が存在する。このような世界観の水棲モンスター(例えばクラーケン)は水系統の属性魔法を使役することが多い。サラマンダーに代表される火系統の属性を有するモンスターもいたりする。属性を有するモンスターの肉を口にした場合、万人が可食できるのだろうか?
いくつかアイディアを考えてみた。
①火属性の魔法適正が高いキャラクターは水属性のモンスター肉を食した場合、処置をしないと火傷する。
→「メイディーア物語」では剋する属性に触れた場合、体調に不利益が生じていた。
②水属性モンスターの肉を処置しないまま食すと浮腫む。
→水分過多になり、浮腫んでしまう。
火属性モンスターの肉なら
→平熱よりも3〜5℃体温が上昇し、苦しむ。
風属性モンスターの肉なら
→全身に乾燥による痒みがおこる
土属性モンスターの肉なら
→腹痛、便秘など症例は様々。
③体質に合わない属性モンスターの肉を食した場合、皮脂漏症を引き起こす。
→バラムツを元に考えたもの。ニキビなど皮脂分泌を促すものでもいいし、腹痛や下痢を引き起こすものでもコミカルな描写を期待できる。
食は過酷
他にも思いつきそうだけどとりあえずここまで。
安全な食料が低価格で流通するというのは考えにくいし、適切な処置法を知識として持っている村人など滅多にいるモノでもない。単純に食料確保が難しいということからも貧しさを演出することはできるであろう。現実味を帯びた"嘘"を混ぜるにはちょうどいいと思われる。
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