「自力」を超えて〝はたらく〟チカラには「意味」がある
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何を(自力で)生むかよりも、何が生まれようとしているのかと期待したほうがワクワクする。どこかへ(自助努力で)向かうかよりも、己をどこへ向かわせてくれようとしているのかと(見えないご縁を)想像するほうが神妙な心持ちになれる。見えない何かの作用を感じることで連れられる高みの景色がある。これはそこを知るそんな本です。
私たちは、日々もろもろの問題に直面します。すると、当然ながらまずは自力での解決を目指すものです。
しかし、困ったことに自力での対処が難しい、思わぬ敵と遭遇することもままあります。
身近なところにこそ、しばしばそんなやっかいな敵は潜んでいたりもします……。
私ごとで恐縮ですが、先日もこんなことがありました。
それは、マスクのトラブルでした。
法要の席で読経を始めて、第一回目のブレスを迎えたその時!
<ピタッ>
不織布が鼻の穴に張り付きました。当然ながら息がまともに吸い込めません。
目立たぬようにソッとずらしてみたりするのですが、うまくいきません。
そのうちに、明らかに酸欠の様相を呈してきました。
ボーッとしだします。
「地獄……。助けて……」
遠のく意識の中で悶絶していると、次の瞬間には一転して、天から美しい声が聞こえだし花びらまでもが舞い始めるではありませんか。まさに経典の中に記されている極楽そのもの‼
——まだだ、まだ俺は逝くわけにはいかない。
読経を必死で繋ぎながら僕は自分にビンタを張る想像をして気合いを入れます。
必死の格闘の末、何とかお勤めの終わりを迎えると、安堵の吐息が漏れました。
「よし、まだ娑婆にいる」、と。
それにしても、僕が〝自力で〟あれほど必死で改善を試みたのに、この難敵はびくともしませんでした。心の中でつい毒づいてしまいます。
「このド腐れマスクが💢」
実は、そのマスクはいつも使っているものではなかったのです。愛用品は、たまたまの売り切れで。
然るに、何かの不都合が生じる際には、このような小さな偶然が重なって、必然となっていくのでしょう。
それにしても、「なぜ、こんな時にかぎって」という気持ちにだって、どうしてもなってしまうものです。
あまりにも腹が立つので、少し時間をおいてそれを消化すべく、僕は起こった出来事ついてこう考えてみることにしました。
「これはきっと仏さまがこの愚僧にお慈悲をかけてくださっているのだ。思いも寄らぬ出来事を通して、極楽と地獄の両方を同時に味わうことができるようにとの、ありがたい思し召しなのだ」と。
別に僕は冗談を言いたいわけではありません。
そうではなく、見てきたように、日常の中には私たちの自力での対処範囲を軽々と超える想定外の出来事が、大なり小なりゴロゴロしているという現実をまずは見つめて欲しいのです。
その上で、こうした想定外の事態に万一遭遇したとしても、それを嫌がったり怖がったりすることなく、むしろ自分の糧としてしまう味わい方だってあるよ、ということを同時に知っていただきたいのです。
起きてしまった出来事に直に(困ったなとか嫌だなとか)反応するだけでは、せっかくのその経験がそれ以上の深まりをもたらすことはないでしょう。
ですが、一歩離れたところから見つめ、その意味を考えることが出来れば、嫌な困った経験ですら、自分の骨肉とすることができるのです。
このようなものの捉え方をするにはちょっとしたコツを掴む必要があります。
それには、「自力」をあっさり超えて想定外の〝はたらき〟かけをしてくる「他力」という存在への気づきが近道です。
思えば、私たちの人生はそんな「他力」に包囲網を形成されています。
その時々において、「なぜそれが我が身の上に起こったのか。決してそれは本来悪い出来事などではないはずだ。だから意味を考えてみよう」というように捉え直す癖をつけると、それまで「ちょっと困ったな」と思っていた出来事が、実は「大きな意味をもって自分を変えてくれるチカラ」としてはたらきかけていることを実感できるでしょう。
実のところ、いわゆる仏教的な世界観に基づく生き方とは、ものの見方に逆転の発想を取り入れて、全てを自分のエネルギーに変えていく道のことをも指しています。
さぁ、皆さまの身に起こった本日の思わぬ出来事を、「他力」を意識してひっくり返してみましょう。
それにはどんな意味があると思いますか? あなたの心の中に降りてくる声に耳を傾けてみましょう。
それが「他力」からのあなたへの、極めて奥ゆかしい「応援エール」なのです。
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【著者略歴】水月昭道(みづき しょうどう)。福岡県生まれ。人間環境心理学者。博士(人間環境学 九州大学)。西本願寺系列寺院住職。立命館大学客員教授。「子どもの道くさ」研究本が14年の刻を経て2020年夏にバズる。著書に「高学歴ワーキングプア シリーズ」(光文社新書)、「子どもの道くさ」(東信堂)、「お寺さん崩壊」(新潮新書)、「他力本願のすすめ」(朝日新書)他。レア雑誌「月刊住職」連載。