何も傷つけず意志を為せ (『出版業界唯一の専門紙 新文化』コーナー『本を手渡す人』掲載記事)
(こちらは出版業界唯一の専門紙 『新文化』 2023年4月27日号に掲載された記事になります)
4月30日の夜から5月1日にかけて行われる、「ワルプルギスの夜」と呼ばれる魔女たちのお祭りがある。
これは伝説だが、この記事が掲載される頃にはちょうどその時期が過ぎる頃だと思うので、魔女の話でも。
最近メタバースで知り合ったアート系の人たちと、色々なカルチャーについて語ることがあり、つい最近は「魔女」についての勉強発表会に参加していた。
魔女といえば魔女狩りや中世ヨーロッパなどのイメージ、あるいはアニメや童話のキャラクターが思い浮かぶと思う。
この会ではおよそひと月間、創作やキリスト教との関わり、伝承などの面から各々発表をして新たな見識が広がった。
なかでも興味を引いたのは、魔女宗と現代魔女について。魔女宗とはウィッチクラフトやウィッカとも呼ばれ、比較的最近、キリスト教へのカウンターとして太古の多神教的信仰を復古させる新異教主義運動のひとつとして創始された。
星占いにタロットやハーブ、まじないや集団儀式、多神教的信仰など我々の思い描きやすい魔女の特徴がある。
今の魔女と呼ばれる人々は大抵、このウィッカ系の流れを汲むことが多い。
面白いのが、この魔女宗がアメリカに渡り、ヒッピー文化やフェミニズム運動などと合流して各種カウンターカルチャーに大きな影響を及ぼしたことだ。
そして現代ミレニアルウィッチと呼ばれる新世代が、TikTokやインスタグラムなどのSNSを舞台に魔女活動を広げ、面白いまじないや魔女ならではのトリック映像などで楽しみ、コミュニティを形成している。
魔女は一人一派と言われるほど多様なスタイルがある。
現代のテクノロジーを取り入れたり、洋の東西や自分の好むものを混ぜてつくり出す表現。ライフスタイルとして、魔術と信仰、現実と社会、それらの世界を往来して生きる術など、なかなかに興味深く、参考にするべきところも多く感じる。
魔術やITなどと絡めてもう少し色々述べたかったが、まず魔女は面白いというのを伝えたい。