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「例外的」|2022-08-06

今日は、うでパスタが書きます。

これはインターネットに端を発したことではないかと私は思うのですが、発達障害なる用語が広く人口に膾炙するようになり、もうしばらくになります。
そもそも発達障害であるという診断のあったひとやその保護者にとって、とにもかくにもそうした偏りをもったひとが結構な割合で社会に存在していることが一般論として認知されるようになったのは悪いことではないのでしょう。また、昨今発達障害は単に何かが欠落・欠損しているというよりは認知能力・機能に多かれ少なかれ有意な偏りがあるという文脈で受けいれられてきており、「スティーブ・ジョブズは発達障害だった」というように、むしろ社会全体としてはそうした凹凸のある人材をいかなる環境において遇することができるか、そうしたひとびとはいかにしてそうした場所へたどり着き輝くことができるかといった課題への気付きが見られることは、発達障害に限らず広く多様性と受容、活躍機会との出会いという意味でかなりの深度をもった重要な転換であると思います。

たとえば現在では、派手で目立つケースとして性的マイノリティの権利を社会全体のなかでどれほどのコストと配慮をもって実現していくかというイシューに見られるように、「多様性と受容」問題はこの「多様性」の深度をどこまで下げていくか、どれほど深いところまで下ろしていくかということをめぐって論争が繰り広げられているところで、その激しさはほとんど市民のあいだに血を見ることもありそうな勢いですが、そもそも社会のダイナミズム、つまり価値観の転換というのは人の生き死にともさほど変わらない重大事であり、こうした軋轢を避けて進むことはそもそも不可能だと覚悟しなければなりません。

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