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BiblioTALK de KINOKO vol.052のお知らせ|2024-12-25

この告知は、うでパスタが書く。

メリー・クリスマス!
宗教や慣習上の多様性に配慮して「ハッピー・ホリデー!」と声をかけるのが北米では概ね都市生活上のマナーになっている、という話にはもう耳にタコができた方もおおいだろう。実際、この話はその通りだ。そして先日ご紹介した「西洋の敗北」でエマニュエル・トッドが西洋の衰退を招いた堕落の本質をニヒリズムと呼び、そのほとんど唯一の社会的要因(政治的や経済的ではなく)としているのはまさしく「プロテスタンティズムの消失」である。

トッドはプロテスタンティズムについて、マックス・ウェーバー的勤勉さをもってその道徳性を評価し、高い貯蓄性向が厚みのある中産階級を生み出し国民国家の形成を促したばかりか、国民国家の設計図はプロテスタンティズムそのものの中に存在したと論じている。その一方で、プロテスタンティズムは予定説によって「救われる者」と「救われない者」をあらかじめ峻別するため強い差別精神をも内包するというのがトッドの主張である。このふたつから導かれる必然的な結論とは、国民国家は統合のために差別対象を必要とするというものである。
見かけ上の紛争当事国であるウクライナ、ロシアのそれぞれに続き、東欧諸国や英国、スカンジナビア諸国などについて、それぞれの社会状況と二〇二二年をまたいで起こった倒錯的な外交政策転換について分析を加えたあとでトッドは、アメリカ社会がアファーマティブアクションによってもはや黒人を差別しなくなった結果、白人同士の平等という幻想を維持できなくなって統合を失い、急速に寡頭制への変化を進めたと読み解く。ここまでは多少不都合な真実であったとしてもいまさら驚くほどの話ではないが、トッドはさらに出生率や乳幼児死亡率、殺人の発生率、市民の収監率などの数字を取り上げ、これらすべてにおいてロシアに劣るアメリカは西側諸国の見方にかかわらずこの戦争でロシアを打ち負かすことができず、そればかりか遠からず自壊する運命にあると予言している。この予言はもちろん、かつてトッド本人が予言した「ソ連の崩壊」と韻を踏むものである。

ところで、来る2024年12月26日(木)20時頃より、九段下の私設図書室ビブリオテーク・ド・キノコからYouTubeLIVE配信「BiblioTALK de KINOKO vol.052」をお送りする。このままいけば私にとってこれは実に一週間ぶりの飲酒機会である。理由はここでは伏せる。
配信は定期購読マガジンの購読者限定であり、配信URLはこのノートの末尾、有料部分に記載されている。表示されていなければ、あなたはまだカネを払っていないということだ。

配信では皆さんからのご質問やメッセージにお答えしている(お答えしないこともある)。noteのサポート機能(や、チップ機能)を使うとメッセージを送ることができるので、そちらを利用するか、あるいは以下の質問箱を通していただいても構わない。

以上、簡単ではあるが、最近はそれこそが重要なのでこれをもって今年最後の配信の告知とさせていただく。
(以下、有料部分に配信URLを記載)

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