BiblioTALK de KINOKO vol.053のお知らせ|2025-01-16
この告知は、うでパスタが書く。
年が明け、ひと月がはや半分も過ぎてしまった。
この告知はトイレで書いている。
トイレで、というのは犬の一頭がいままたトイレトレーニング中だからだ。
犬のトレーニングはとにかく成功したらすかさず褒めてご褒美を与えるというタイミング、リズムがすべてで、「二秒しかもたない」と言われる犬の記憶から成功体験がすり抜ける前に褒めることで狙った行動を強化していく、というのが一応理屈になっている。これに従うならば、ネットのフッテージに登場するどんな利口な犬たちもそれぞれのトリックはこうして教え込まれていることになる。
「どれぐらいの期間(回数)で覚えるか」「どこまで複雑なトリックを覚えるか」「何種類覚えるか」「どれだけ忠実に従うか」には犬種や個体に依存するところもあるが、「まて」や「おすわり」に代表される基本的なコマンドから散歩のときの歩き方、トイレなど一般的なしつけがそもそも入らないという犬はおそらく存在せず、そうしたケースでは通常、飼い主の根気が必要な期間や試行回数に足りないというだけであるようだ。
もっとも犬の認知能力は人間のそれよりも範囲が狭く、一部に集中している。このため飼い主が「分かっている」と思い込んでいるだけで、実は犬の方は飼い主からまったく違うメッセージを受け取ってしまっており、何度トレーニングを繰り返しても一向に望む成果が得られないという方法論にまつわるエラーが生じているのも事実のようだ。
たとえばトイレに成功したからご褒美を与えても、三秒経っていれば犬はなぜ褒められたのかを理解できずに棚ボタと受け取ってしまうだろう。あるいはうちの子は「給水器の水が少なくなってきたらこのボタンを押すようにしつけたい」とプランニングしていたが、犬は「少なくなってきたこと」つまり近い将来なくなるであろうという事実を認知できない。このプランは「水がなくなったらこのボタンを押すように」とするのが正しくて、そのトレーニングとはまず給水器が空っぽで困っている犬を前に、ボタンを押してから水を足すところを見せるというようなものになるであろう。
しかしそれでもなお、「給水器に水がない」という認識と、「ボタンを押す」というアクション、その結果「水を足してもらえる」という因果関係をひとつのパターンとして犬に認知させるのは簡単ではなく、最終的にできる犬とできない犬がいるのではないかという気がする。
このように、人と犬との認知能力の(かなりの)開きを超え、犬をこちらの望むよう導くことは、いつも私にとても長い糸で結ばれた糸電話を想像させる。どちらもまだ本当の姿を見たことのない「ふたり」が、引けば途切れて緩めばたわんでしまう細い細い糸を頼りにかすかな声でメッセージを交わす、それが犬をしつけるということだと感じる。
さりとて、飼い主が上機嫌であるかぎり、犬は飼い主から何か働きかけられることが好きなものであるし、その喜びのなかで「アクション(トリガー)」「リアクション(アクション)」からなるトレーニングを繰り返すことはそれ自体が犬の精神衛生によいとされ、長寿の傾向を強める飼い犬にとり晩年の認知症を防いだり弱めたりするのに効果的だと考えられている。
なお冒頭のトイレトレーニングは、犬のトイレには慣れている犬を人間のトイレ、つまりレストルームの床まで導いてそこでトイレをしてもらうことが目的だ。理由は言わずもがな、床の掃除や匂いの処理が簡単だからである。今日は結局、私が席(つまり便座)を外した隙に犬は敷き詰めたトイレシートの隙間へおしっこをしてしまい、褒めても良かったのだがそのタイミングすら逃して終わることになってしまった。一日目である。
(犬の小説を探していたらなぜか検索に引っかかってきた古川日出夫の新刊である)
すでに数時間後のことになった本日、2025年1月16日(木)の20時ごろより、YouTubeLIVE配信「BiblioTALK de KINOKO」vol.053をお送りする。
配信は当有料マガジンの定期購読者限定であり、配信URLはこのノートの末尾・有料部分に記載されている。
配信では皆さんからのメッセージやご質問を紹介している(質問に答えるとは言っていない)。noteのサポート機能を使って(つまりカネを払って)どしどしお寄せいただきたい。あるいはどうしても無料がよければ質問箱でも受け付けている。
年明けからキチガイ水を控えており、その成績は元日より数えて昨日まで9日/15日である。昨年最後の配信も抗生物質を飲んでいたため前日まで断酒していたはずで、二ヶ月続けての異常配信になるかもしれないが是非ご視聴賜りたい。
(以下、有料部分に配信URLを記載)
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