ライアーズ・アンド・ビリーバーズ
今週は、うでパスタが書く。
キノコさんと隔週で担当するBibliothèque de KINOKO Weekly Magazineは、つまり二週間にたった一本書くだけだから、始めて二ヶ月経ったいまごろはもう向こう一年分ぐらいの書きためができているだろうと高をくくっていたが、相変わらず締め切りに追われるように書き綴る日々が続いている。
まぁそれがいいのだろう。
米ボストンで暮らした四年のあいだにアメリカ生活には辟易してしまったが、意外にもアメリカ人のことはいくらか好きになって帰ってきた。
人間は何かを理解すると好きになるものだから、僕はアメリカ人のことを少し理解したということなのだろう。これは理解するために払ったコストが惜しくて嫌いになれない、いわゆるサンクコストの作用だと思う。ネットでも誰かのことを叩きに叩いて叩き続けたあげく、もう逆に好きになってるんじゃないかというひとがたまにいるが、同じことだ。
「アメリカ人のことが好きだ」とわざわざ言うひとは今日世界的にみてもめずらしく、これがアメリカに生まれた人間の背負う原罪とでも言うべきハンデキャップになっている。いわゆるエスニックジョークの類いに目をこらせば、オチはユダヤ人や日本人、ポーランド人であったとしても、アメリカ人が人類として一目置かれているというわけでは決してない。
「ユダヤ系アメリカ人女性が夕食のためによくすることは?」
「レストランの予約」
(「エスニックジョーク―自己を嗤い、他者を笑う」クリスティ・デイビス/講談社選書メチエ)
先輩がイタリアのトリノに駐在していたとき、アメリカからきた客を地元のピッツェリアへ連れていった話が好きだ。
大喜びしたアメリカ人が、「慣れない食事で困っていたけど、ピザなら俺にも分かるぜ。まかせてくれ」と言ったあと、「スパイシー・チキンをくれ」と言って爆笑されたという話。
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