それ残すなら食べるよ?
「秋の味覚といえば、やはり山の恵をたらふく食べたジビエである。丸々と肥え太ったイノシシやクマ、シカやアナグマといった四足もよいし、キジやハト、カモといった鳥類も捨てがたい。ハンティングの楽しみは、動物たちとの緊張感のある駆け引きももちろんだが、自ら狩り仕留めた獲物を食する時の充実感には得も言われぬ物がある。古来より人類は狩猟採集を行い生きる糧を得てきたわけで、その本能の赴くままに野山を駆け回り狩猟採集をすることで、現代社会によって去勢されてしまった本能を目覚めさせることは魂の解放であり救済であると言えるだろう。風下からそっと近づく時に、興奮から荒くなる息遣いをなだめつつ、耳を澄ますと自分の心音が大きく聞こえるような気がする。気配を感じるのか、サッと顔を上げた瞬間のシカと目が合うような気がする。山にこだまする銃声と火薬の香りで、こちらの存在が明らかになった瞬間、獲物がそれを悟る瞬間にはまだ意識はあるのか。」
彼女は音読を中断し、タブレットから顔を上げるとこちらに向き直り「動物ってどんな匂いがするんだろうね」と言った。彼女は匂いの話をするのが好きだ。花の香、料理の香り、海の匂い、雨の降り始めの香り。鼻孔をくすぐる、という表現があるが、無臭、無菌、無塵な空間で鼻孔をくすぐるものもない中でずっと過ごしているので、どんな感覚なのか分からない。
彼女の座っている背景には大きな窓がある。この空間で唯一、外の世界をうかがい知ることができるその窓の外には、廃墟と化した湾岸のタワーマンション群が見える。分厚い雲の切れ目から差し込む陽光が照らし出す廃墟群はいつも静かで荘厳だ。廃墟群と呼ばれているのでそう呼んでいるものの、ぼくらが生まれた時には既にそこにあったのは今の姿なので、廃墟と化す前の姿は分からず、つまり、そういうものとしてあるものだ、という認識しかない。かつて人類はこぞって湾岸のタワーマンションで暮らしていたという。その在りし日の姿はデータとしては残っているが、その生活がどのようなものであったのかは、今の姿からは想像するのは難しい。歴史や未来は確かに存在するのだろう、しかし、世界は目の前に存在するようにあるのであって、かつてこうだった、とか、いつかこうなる、という想像を具体的にするのは難しい。ぼくらは野山を駆け巡る、とうのがどういうことなのか、動画は見たことがあるが、風や温度、草いきれと表現される香りや、生命の息遣いといったものはデータ上でしか知らない。だから彼女が言うように、動物ってどんな匂いがするのか、というのは問われたところで返答のしようがないのだ。それでも、古代の文献を読んでいるとしょっちゅう出くわすこの手の質感を伴った世界観というものは、音や香りといったものから隔絶された、視覚的にしか外を見ることができないぼくらのような存在にとっては未知の世界であり、どうにも気になるもので想像をしてしまうのである。
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キノコです。
先日、冒頭のあの引用元はなに、と聞かれたのですが、キノコは引用は基本的にはしないので、創作です。まあより正確を期して言うのであれば、引用はしないのではなく、おぼえていないのでできない、というのもありますし、図書室に本をあらかた運んでしまったために手元にない、という実際的な問題もあります。ちなみに創作の質についてのご意見等は求めておりませんので、フィードバックは購入やサブスクリプションといった形でいただければと思います。
諸般事情により現在資格取得のための勉強をしているのですが、その過程でスノーデン事件に興味を持ちました。スノーデン事件、というとスノーデンに問題があるような気もしてしまいますが、実際にはアメリカの政府機関が令状なく市民のプライヴァシーを侵害するような通信の大規模な傍受活動を行っていたことを告発したものです。今となっては忘れ去られてしまっている感もありますが、2013年のことなのでそれほど前のことではないはずですなものの、風化させないBotによって定期的にリマインドすべき事件なのではないかとも思いますし、これはいつかこのnoteでもちゃんと取り上げたいなと思うお題でもあります。
コネクテッド、というのがキーワードになり、クルマやドローンその他様々なモノがネットワークに接続されようとしております。物事には良い面と悪い面がありメリットとデメリットがある、というのは当たり前ですが、コネクテッドな世界においてもそれは当然あるわけです。
通信するということはネットワーク上のお作法に従いパケットなりをやりとりするということになり、パケット、といえばドラッグの受け渡し単位でもあるわけです。何パケ?というやり取りをそつなくこなすことが通過儀礼でもあるわけです。さておき、コネクテッドな世界においては、通信というものがどのように確立され、またどのように情報として処理されているのか、というのを知ることで、何が起こっているのか、ということを垣間見えるような気がします。クロード・シャノンが発見した0と1のバイナリーの世界。
スノーデンが暴いたとされる世界的な通信の傍受というのは、今ではしていないのか?といえばおそらくしているのでしょう。国防のため、安全保障のため、など理由はあるのでしょうし、一度でも可能になってしまったものを止めるというのはなかなか大変なことです。新しいiPhoneが出れば買い換える、という人に、Appleはあなたの通信を傍受しているかもしれないし、より安全な通信のためには暗号化をする必要があるなどと進言しようものなら狂人を見るような顔で見られるでしょう。
インフォメーションシステムにおけるセキュリティがなぜこのようになってきているのか、という歴史は通信の傍受や悪用の歴史でもあるわけで、これもまたいつかnoteで取り上げたいテーマであります。
というわけで、前置きが例のごとく長くなりましたが、本日は人工肉の話と食から見た世界の動向という話です。ちなみにタピオカの話は出てきません。
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