縦と横に繋がる:朝井リョウ『正欲』を読んで
性欲は社会的に「正しいもの」と「正しくないもの」の線引きがなされている。そして「正しくないもの」、社会の中で異常と見做される性癖を持つ人間は、社会から奇異の目で見られる。そして本作は、性欲のうち、「正欲」を持たず自分だけの性欲を抱える人間や、そのような人間を社会正義の名の下に正常化させようと意気込む人間が縦横無尽に描かれている。現代社会で悩みを抱えて生きる人間模様を描き切る朝井氏には毎度驚かされる。もはや朝井氏は現代の夏目漱石といっても過言ではない気がする。夏目漱石の『吾輩は