どん底に大地あり
現在放映中のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)『エール』には、クリスチャンやキリスト教関連のものが多く登場します。
薬師丸ひろ子さん演じる関内光子は聖公会信者という設定になっており、第18週には空襲で焼け落ちた自宅で、約3分間に渡って賛美歌を歌うシーンが視聴者の心を打ちました。
本来の台本では、戦争を呪って地面を叩くというものだったのですが、薬師丸さんの提案で、死からの復活をテーマにしたこの賛美歌「うるわしの白百合」を歌うことになったそうです。
第19週に登場する永田武医師は、『長崎の鐘』などの著作を残した永井隆という実在の博士がモデルになっており、この人もまたクリスチャンです。
戦時中に医師として結核のX線検診に従事していたのですが、フィルム不足で危険な診断方法を行なっていたため、白血病にかかり、さらに長崎に原子爆弾が落ちたことにより被爆して、病状が悪化しました。
病床に伏してからは、信者仲間らの厚意で建てられた二畳一間の家で過ごし、そこをマルコによる福音書12章31節の「己の如く隣人を愛せよ」という言葉から如己堂(にょこどう)と名付けています。
『エール』第19週のあらすじと永井博士について、ぜひこちらを読んでください。
『エール』でも紹介された、「どん底に大地あり」という博士の言葉がとても印象的でした。
ドラマ内では、次のように説明されています。
「神の存在を問うた若者のように、『なぜ』『どうして』と自分の身を振り返っているうちは、希望は持てません。どん底まで落ちて、大地を踏みしめ、共に頑張れる仲間がいて、初めて真の希望が生まれるとです。」
この言葉を聞いて、どん底に落ちた聖書の登場人物を幾人も思い浮かべました。
●ヨブ:「東の国一番の富豪」と呼ばれていたけれど、財産も子どもたちも失い、深刻な皮膚病に侵され、妻からは「神を呪って死になさい」とまで言われました。
しかし、神を信頼し続け、最後には何倍にも祝福されています。(ヨブ42:10-17)
●ヨセフ:兄たちによって売り飛ばされ、エジプトの奴隷となり、虚偽の訴えにより牢獄に入れられました。
それでも、神を信頼して誠実を貫いたので、最後には宰相となり、大飢饉の際にエジプトばかりか、自分の家族をも救うことができました。これは神の働きであったと、兄たちに語っています。(創世記50:15-21)
どん底から立ち直った人は他にも数多くいますが、最後にもう一人。
●イエス:弟子の一人によって敵に売られ、別の弟子からも裏切られ、不正な裁判によってついには十字架で処刑されました。神に捨てられたとさえ感じるほどの苦しみを味わったのです。
でも、たった3日後に復活し、死にさえも勝利しました。
私たちがどん底を経験する時、そこには、同じようにどん底を経験されたイエスがいて、私たちを迎えてくださいます。
イエスは私たちの友であり、一緒に大地を踏みしめて立ち上がり、また進み始めようと励ましてくださるのです。
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「この大祭司(イエス)は、わたしたちの弱さを思いやることのできないようなかたではない。罪は犯されなかったが、すべてのことについて、わたしたちと同じように試錬に会われたのである。」(ヘブル4:15)