2023年1月 読書メモ
これまでTwitterでやっていた最近読んだ本のちょっとした記録。
本当にちょっとした記録なのであらすじとか内容を詳しく知りたい人は各自お調べ下さい。
出版社の人のエゴサで引っかかるように始めたのですが、いまどきTwitterだけでエゴサしてる会社もないだろう、ということでこれからはnoteです。
ジョージ・W・M・レノルズ 『人狼ヴァグナー』(国書刊行会)
ものすごい低俗だけど歴史小説の風格があって面白かった。タイトルの人物より姫の造形が最高だし16世紀地中海世界を背景にするスケールのでかさも魅力。いいところでシーンが切り替わるのが大変娯楽小説だった。
登場人物はだいたいゴシックロマンスのキャラクターなので、今どきの感覚だと古くさいとか類型的とか言われそうだがそういうありがちな批判を踏み潰す勢いでニシダ姫がとんでもなかった。スマブラにゴシックロマンス枠代表で出られると思う。このニシダ姫がすごい2023。
ピエール・マッコルラン『黄色い笑い/悪意』(国書刊行会)
ナンセンスと呼ぶには毒があり、どこまで意図されたのかわからないが解説にあるとおり今このタイミングで出る本としてはなかなか冒険的。ただこちらは不真面目な読者なので、そんなに希望はなくもっと死んでもいいぞと思ってしまう。申し訳ない。
ポール・アルテ『死まで139歩』(ハヤカワ・ミステリ)
この人はカーが大好きなので、そこまでせんでもいいのでは?回収できるん?と不安になるくらい大盛りの不可能犯罪も意外と手堅い解決編もラブコメもある。ラブコメあるんですよ。
読んでから「はい?????」と思ってほしいので謎の段階からもう喋りたくない。そうすると「ラブコメあるよ」しか言えることがない。
ピエール・マッコルラン『北の橋の舞踏会/世界を駆けるヴィーナス』(国書刊行会)
前のが面白かったので連続で読んでしまう。戦時中の実際のエピソードを下敷きにしているので笑いはあるけど不穏さが隠しきれない。特に「世界を駆けるヴィーナス」の置き去りにされた感じ、そのあとのどうにもならない感じがたまらなく好き。
J・D・サリンジャー『彼女の思い出/逆さまの森』(新潮社)
「逆さまの森」がすばらしかった。
ざっと検索してそういう感想が見つけられなかったのだが、これは親から逃げられなかった子どもの話です。だって本人がそう言ってるでしょう。結末まで読んでから振り返ると、変わり者の老人に助けられたのがきっかけで詩人になったエピソードも依存がたまたまうまく回っただけだったように見えてくる。
この詩人も、彼を追っていく主人公も、途中で正体を明かすも三人称のほうがよさげという理由でそのまま地の文に埋もれる語り手もみんなそんなに好ましい人物と思わなかったのでいやな気持ちになったりはしなかったが、ただ見事だな……という顔をせずにはいられない。
#読書感想文