#36【ベトナム日系企業】駐在帯同 vs 単身赴任?仕事も家族も諦めない“海外就職”の選択肢
自己紹介
みなさん、初めまして!
Kyokaと申します。1996年の28歳で、2018年に慶應義塾大学の商学部を卒業しました。新卒入社した日系大手メーカーで4年間人事として働いた後、夫の駐在に帯同する形でベトナム・ホーチミンに移住し、今は現地の日系企業の人事で働いています。
後編では、日本で生まれ育ち、留学経験ゼロ&英語初心者の私がベトナムで働く現在のお話や、将来のキャリアプランについてお伝えします!
ベトナムで人事として働く
現在、私はホーチミンにある日系メーカーの人事部門で働いています。部内には採用や教育、福利厚生などいくつかのチームがありますが、私はどのチームにも属さず、“スペシャリストポジション”のような立ち位置にいます。
具体的には、日本人の社長と、ベトナム人スタッフの認識のギャップを埋めることが私の役目になります。日本人とベトナム人でコミュニケーションをとっていると、やはり言語のニュアンスが伝わりにくいところがあるんです。例えば、言葉の意味は理解していても、想定するクオリティに対する認識の違いなどが生じます。そのギャップを汲み取り、社長の指示を現地スタッフが分かりやすい形で咀嚼して伝える役割を担っています。
ちなみに、現地のベトナム人スタッフとは、基本的に英語で会話をしています。日常会話なら話すことができたのですが、ビジネスで使う英語は全然違いますね。仕事の現場では専門用語が多かったり、ビジネスならではの伝え方が求められたりするので、毎日試行錯誤しています。
ただ、ベトナムに移住してから面白かったのが、日本語を理解しているベトナム人が多いということ。日系企業で働いていることも関係するかもしれませんが、日本語を話せなくても単語が分かる人もいるんですよ!
ベトナムでのカルチャーショック
働き始めてからのカルチャーショックは、スケジュールへの意識の違いです。日本では、会議の日程はあらかじめ予定を入れて、担当者に案内して…と計画的に進めますよね。ですが、ベトナムでは「今日の予定を今日決める」ということが頻繁に生じます。ゴールから逆算するよりも、目の前の仕事をどんどんこなしていくスタイルなんですよね。「仕事の進め方」という点では、個人的には日本のやり方が性に合っていると感じます(笑)
また、ルールに対する考え方も違います。日本では「新しい規則を発表すれば、翌日からそれに従う」という移行が自然に行われます。ですが、ベトナムでは「なぜこのルールが必要なのか」という理由が納得できないと誰も行動を変えません。そのため、人事という役職上、社内向けにアナウンスをすることも多いのですが、皆さんに納得してもらえるような工夫をする意識が身につきました。
家族を優先する国
労働時間においては、定時になったらすぐに帰る方が多いですね。日本では仕事が残っていたら残業することは当たり前ですし、仕事が終わってても残業する人もいるのではないかと思います。
一方、ベトナムでは、仕事が残っていても定時に帰る人が多いんです。家族を大切にする文化が根強く「家族を優先するのが当然」という雰囲気があるため、残業せずに退勤することも受け入れられています。ワークライフの観点では魅力的ですが、ワークにおいてはもう少し改善できるとこともありそうです(笑)
組織全体では、想像以上に日本企業と共通した課題が問題視されています。日本の前職では退職率の高さや後継者不足が課題でしたが、ベトナムでも同様の問題が注視されています。ただ、日本と決定的に違うことは、ベトナムの転職率の高さですね。前編でもお話したように、日本よりも人材の流動性が高いので、人事の仕事も国ごとの文化から影響を受けた違いがあると感じます。
あなたの最大の強みは、日本人であること
ベトナムでは、日本のような「新卒一括採用」はほぼありません。大学在学中に3〜6ヶ月の長期インターンに参加し、そのまま本採用となるケースが多いです。そのため、毎月新入社員が増える…というイメージでしょうか。研修も日本ほど手厚くなくて、部署に配属したらすぐに仕事をお願いされることも多いです。だからこそ、研修に力を入れる日本企業の仕組みは1つの強みであると再認識しました。
人事の目線から話すと、海外で働く上で大事なことは「自分の一番の強みを知っておくこと」だと思います。日本の就活で重視される「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」よりも、実際に自分がどんな能力を持っていて、どのような成果を出せるかという、即戦力になるスキルが重視されます。
私がベトナム移住に向けて転職活動をしていた時、面接で「あなたの最大の強みは、日本人であることです」と言われました。「日本人」という属性は努力で身につけたものではないので、この言葉を聞いたときは複雑な気持ちになりました。ただ、組織としては「日本の感覚を持つ即戦力」を求めていたことも事実です。このような経験を踏まえると、自分にとっては当たり前でも、人から評価され得るスキルを自覚しておくことが重要であると思っています。
高島屋、ユニクロ、無印…in ホーチミン
普段のベトナム生活についてもお話しすると、生活は日本と同じくらい快適です。ホーチミン市内には高島屋やユニクロ、無印など馴染みのお店もあるので、買い物をする上でも全く不便なことはありません。
一方で、ベトナムは公共交通機関が発展途上なんです。つい最近まで電車がほとんど通っていなかったため、車やバイクで移動する人が多く見受けられます。最近、一部区間で電車が開通したのですが、駅の数も少ないのでまだまだ普及はこれからといった印象です。
帰国後はグローバル人事
前編でもお話した通り、私の中には「家族が最優先」という優先順位がはっきりと存在します。とはいえ、「夫に帯同して、仕事をしない」という選択も取りたくなかったんです。2年間のブランクを作ることが怖かったですし、キャリアを諦めたくないという気持ちもあったからです。
前職の日系メーカーには「帯同休暇」のような制度がなかったので、夫の駐在に帯同するためには退職しか選択肢がありませんでした。そのため、ベトナムで転職先が決まるまでの過程は、不安を感じることも多かったです。帰国後の転職のことも考えると、移住先でも、いまと同じレベルかそれ以上の仕事をしていきたいという想いがありました。
無事、ベトナムの日系企業で働く生活を実現できましたが、2年間の駐在終了後は日本に帰国予定です。帰国後は、また人事として働きたいと考えています。事業会社の人事に就くのか、人事コンサルの道を選ぶのか…など、具体的な選択肢は検討中です。ですが、将来的にはヨーロッパなど違う国のローカル企業の人事にも挑戦してみたいなと思っています。色々な場所で自分の可能性を試してみたいです!
読者へのメッセージ
私は、帯同にあわせて自分も現地採用の道を選びましたが、会社で働くことだけが選択肢だとは思っていません。専業主婦も立派だし、素敵だし、大変な道だと思います。
ただ、もし仕事を続けたくても何かしらの理由で仕事を諦めざるをえないと思っている場合、まずはキャリアを続けられる道が本当にないのか、諦めずに調べてみてはと思います。 私のように配偶者の海外駐在を機に、キャリアを諦めようか迷っている方もいると思います。配偶者の会社が制限をかけている場合もあるかもしれません。ですが、諦めずに調べているとキャリアを続けるため道を発見できたりするので、いろいろ模索してみてほしいと思います。 そのために、もし何か私にお手伝いできることがあったらご連絡ください。
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