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契約カット数を考えずに撮ること

はじめに

竣工写真の分野は見積書を作る段階で「契約カット」が割り出されます。
ある現場では30カット撮ってほしいとします。30カットの見積りに対して契約より多い40カット撮る場合があります。契約より多く撮ることはどういうことなのか今回は現時点での自分なりの記事を書いてみようと思います。

駆け出しの頃

竣工写真はいざ契約が決まると書類の提出等があります。収入印紙を貼ってハンコをついて書類を取り交わします。竣工写真以外の他業種の撮影の契約はあまり詳しくないのですが少ない経験から言いますと書類の契約までは少ない印象で。竣工写真の場合は割ときっちりとした契約を結びます。

若い頃は契約カットという言葉にこだわって30カットなら30カットだけを撮影して納品していました。時々設計者の方からもっと別のアングルはないのかと問い合わせがありました。設計者の方へは契約カット数しか撮っていませんと返事をしていました。若い頃の僕は契約以上のカットを無償で撮るのは良くないことだと思っていました。

偶然見かけた写真家の仕事

30歳手前だったと思いますが営業でベテランの設計の先生にごあいさつに行きました。先生の次回の作品を撮らせて欲しいとお願いしました。建築写真の世界では良くあることですが設計者が好むカメラマンを指名して全てその方に撮ってもらうということがあります。ベテランの先生にも当然お気に入りのカメラマンがいてそのカメラマンの写真を見せてくれました。同業者の写真というものはこの業界ではなかなか見る機会がありません。
L版に焼いた写真が先生の両手いっぱいにあって驚きました。似たようなカットも多くありました。よく見ると光の加減が違います。朝昼夕と何度も撮影を試みていました。たまたまですがそのカメラマンというのは僕が密かに尊敬している方でした。雑誌にも度々登場しておられる方です。撮られていた現場は中規模の病院でした。自分だったら40カットか50カットくらい撮る物件だと思いました。尊敬するカメラマンは違いました。納得がいくまで撮影していました。質と量で設計者を圧倒しようとしていました。

「質」と「量」について

若い頃は写真の「質」さえよければよいと思っていました。設計の先生から写真の束を見せられた日から「量」についても考えるようになりました。
一度自分の損得は考えずに自分の思うまま良いと思った場所はどこでも、何度でも撮るようにしました。「質」と「量」で攻めると当然ですが関係者の方には喜んでもらえました。それ以来少しずつですが設計者の方からの指名がくるようになりました。一つの建物でもある一定の「量」を撮らないと良いカットが出てこないと思うようになりました。時間や季節や光を今まで以上に観察するようになりました。

おわりに

今フリーで写真を始めた方は契約や約束の枠組みの中で仕事をしていると思います。竣工写真の場合は契約枚数だったりします。契約からはみ出た仕事はただちに利益にはなりませんが一度でよいので自分が良いと思ったカットを山ほど撮ってクライアントを「質」と「量」で満足させてみてはいかがでしょうか。きっと次の仕事につながると思います。お互い頑張りましょう。

最後まで読んでくださってありがとうございます。

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