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ミレットクラブ
山登りをする人になぜ山登りをするのかを尋ねると多くの人はそこに山があるからだと答えるそうだ。
山登りの山頂を目指し、一人しか立てない頂上に向かって行くのは男性が多いのだとか。山登りよりも山の周りをぐるっと歩き、その環境や自然を楽しむのは女性の方が多いのだとか。我こそはと頂上を目指し、そこからの景色を見たい男性。山全体の環境を観察しながら山のことを上からではなく全体としてみる女性。
時代が変われば環境も変わる。変化しないことなんてほとんどない。我々はその環境の変化に常に身を置いているのである。そして最近になってより強く思うのは女性の環境の変化への柔軟性がとても高いことである。
去年の夏前くらいから鎌倉のアナン邸では「ミレットクラブ」というものが始まった。私の父が生前強くミレット(雑穀)の意義やその可能性、未来への希望として常にミレットの事を語っていた。その話を聞いて共感してくださり、その大切さや可能性を信じてくれた女性たちが集まり始まったのが「ミレットクラブ」である。はじめたばかりはミレットの使い方に四苦八苦していた彼女たちも会を重ねるごとにミレットと仲良くなってくるかのように様々な料理をミレットで作るようになった。その楽しさが周りにも波及していき参加者は徐々に増えていっている。
インドには様々なミレットがある。例えば
●パールミレット(Bajra /バジラ・シコクビエ)お粥やロティ作りに使われることが多く、発酵料理にも度々登場する。
●ソルガム(Jowar /ジョワール・タカキビ)こちらもロティやバクリ、お粥に使われる。
●フィンガーミレット(Ragi /Nachini /ラギ/シコクビエ)カルシウムが豊富でドーサ、ロティ、
お粥に使われることが多い。
●バーンヤードミレット(Sanwa /Samvat /サンワ/サムワット/ヒエ)キチュリやイドゥリ、ラ
イスの代わりに使われることも。
●コドミレット(Kodon /コド・ハトムギ)糖尿病の方に優しく、ドーサ、イドゥリ、ライスにもよく使われる。
●プロソミレット(Chena /Barri /チェナ/バリ/キビ)焼き菓子やお粥に使われることが多い。
●フォックステイルミレット(FoxtailMilet /カングニ/コッラ/アワ)消化がよく、ウプマ、キチュリ、ドーサなどに使われる。
2023年3月18日に「世界ミレット会議」が開催され世界の食料安全保障や生活習慣病の対策に役
立つと述べ普段の食生活のミレットの割合を増加させようとインド政府が発表した。ミレットの
生産拡大や消費促進は栄養改善にも農村部の経済活動の活性化にも役立つ。
鎌倉のアナン邸に集まっているミレットクラブの女性たちを見ていると本能で世界の環境を感
じ、それに対して数字や会議ではなく楽しく、美味しく生活にミレットを落とし込んでいるよう
に見える。
環境が大きく変わろうとしている現在。彼女たちの活動こそが未来への希望なのかもしれない。