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王様が愛したジビエ料理

インドにバスコ・ダ・ガマをはじめとするポルトガル人が唐辛子を持ち込んで約500年。アメリカ大陸では6000年も前から栽培されていると言われている。インド、中国と経て日本にやってきたのは16世紀ごろだと言われている。今や唐辛子の品種も世界中で数千種類もあると言われている。韓国料理、エスニック、中国料理にも欠かせない唐辛子だが、インド料理にも大事なスパイスとして台所に鎮座している。唐辛子がインドに伝わる前は胡椒や長胡椒などで辛さを引き出していただが今のインド料理には唐辛子「チリ」は欠かせない存在である。



インドの地域によって主に使われている唐辛子は異なる。

カシミリチリ、インドの北部カシミール地方で主に栽培されている品種。辛さは少なく料理をより赤くしてくれるのでインド全土の家庭で重宝されている。東北インドで栽培されているブートジョロキアという唐辛子は世界辛い唐辛子ランキングでも上位に入っている。南インドのタミルナドゥで出会ったグンドゥチリという品種は丸みを帯びていてそんなには辛くなかった。最近好んで使うようになったのは、より辛みを帯びたテジャチリというものもある。インド各地で唐辛子は栽培されているが、気候が熱く乾いた大地が上質な唐辛子を作ると言われインド北西に位置するラジャスタンでは様々な唐辛子が栽培されている。その中でもメーワールの商人たちが広めたと言われているマタニアチリは時の王様をも喜ばせた。



ラジャスタンのメーワール王国の王様はとにかく食べること、特に美味しいものを食べるのが好きであったらしい。常にKHANSAMA(カンサマ)と呼ばれる料理人を十数人引き連れていた。趣味の狩りに行くときはカンサマたちを連れて行き、カンサマたちは王様が狩りでとった動物たちを調理できるようニンニクやショウガといった調味料の他、ヨーグルトやスパイスそして貴重な水も持ち歩いたと言われている。だいたい狩れるのが鹿や猪や兎、野鳥などであったらしくそれらを素早く捌き調味料などで味付けして夜のキャンプ用に仕込んでいたそうである。そして夜になるとキャンプ地で豪勢な料理はカンサマたちによって振舞われたと言われている。



ある日、狩りに行った日、王様がカンサマたちに「獣臭がしない料理が食べたい。そしてそれは辛くて甘いものが良い」といったそうである。カンサマたちは悩みながら王様が狩った動物たちを調理しては食べさせたが、なかなか王様は納得しない。そんな中あるカンサマがマタニアチリをたっぷりと入れた真っ赤なカレーを作った。辛さばっかりではいけないのでギーもたっぷり使い甘みを引き立たせた。それを食べた王様は大層喜んだそうである。真っ赤なカレーをその後王様のおもてなしの定番として多くの客人を喜ばせたそうである。赤い肉「ラール・マース」の名ずけられ今ではラジャスタンを代表する名物料理である。その昔は鹿や猪などで作っていたが今ではヤギ肉で作るのが定番である。




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