トゥールダールと海の道
トゥール(toor)、アルハール(arhar)と呼ばれインド全土でよく食べられている豆がる。
大体は皮が剥かれ、半割りにしてありとトゥールダール、アルハールダールなどと地域によって呼ばれ方は異なるが日々の食卓に提供されるために半割りの状態で保存されていることが多い。軽く洗って煮込むと独特の甘い香りが漂う。ムングという緑豆だったり、チャナというひよこ豆だったり様々な豆をインド料理ではよく使うので煮込むことが多いが、私はこのトゥールダールの煮込まれた時の香りが結構好きである。
日本では木豆、樹豆、キマメなどと呼ばれ、琉球豆と呼ばれることもあるらしい。先日カレーを作りに沖縄の北部を訪れた時、カレーリーフや様々なスパイスを栽培している方がトゥールダールも何本か栽培されており、キマメは土壌に窒素を多く含ませてくれることで天然の肥料ともなり様々な野菜などの栽培の間に蒔いてあげたり、植えてあげたりすると土壌が豊かになるそうで、沖縄では昔はよく栽培されていたそうである。その役割は沖縄だけではなく九州や本州などでも活用されていたといわれていた。食用としても深く親しまれたインドでは天然の肥料としての役割だけではなく南インドのサンバルや西インドのダールといった料理にもによく使われ、日々の食卓には欠かせられないものとして今でも使われているが、肥料としてだけでは技術によって生み出された肥料には勝てなかったのかな、と沖縄のヤンバルの地で力強く、しかし少し寂しげに育っているトゥールを見て思った。
長胡椒やキマメなどインドから伝わったであろう植物などを目のあたりにすると1世紀ごろに活躍したエジプトの商人エリュトゥラーが記した書物「エリュトゥラー案内記」を思い出す。エリュトゥラーはインドからアフリカの海流を発見したことにより海洋貿易がもっと活発になったそうである。そしてその海流もエリュトゥラー海流と名付けられているそうである。西側の書物としては初めてティナイと記されたシナ・中国が登場するらしく、古くからシルクロードとは別の「海の道」別名「スパイスロード」があったのではないかといわれている。
エジプト、アフリカ、インド、インドネシアに沖縄、香料の道、スパイスロードをたどってスパイスを調べたりしながら旅をするのもとても楽しそうだ。もしかしたら日々の生活や食卓に香料の道を辿ってやってきた文化が根付いているかもしれない。アジア、アフリカのあまり知られていない豊かな歴史がそこにはあるのかもしれない。そんなことを思うとワクワクしてくる。