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フルーツカレーは夢のカレー

スイスのジュネーブから列車に乗り、どこからか登山鉄道に乗り換え、たどり着いたツェルマッ ト。車も規制されていることから空気も澄んでいてとても綺麗だった。季節は夏。そびえ立つマッ ターホルンを眺めながら山道を歩くとのびのびとした牛たちが幸せそうに草を食べていた。本当 に幸せそうに。

宿のロビーの正面には大きな窓がありカーテンが開くと綺麗なマッターホルンが飛び込んでく る。夕暮れ時になると黄金色に染まるとんがった山。それを見るだけでも遥々来た甲斐がある。 併設されていたレストランでメニューを開くとカレーと書いてあったので頼んでみることにした。 出てきたのは夕暮れ時のマッターホルンのように黄金色のソースに白いご飯。山にかかっている 雪のようにも見えた。具材がなんだったかは忘れてしまったがカレーソースはパイナップルででき ていた。
マッターホルンを望むレストランで食べたフルーツカレーが私が出会った最初のフルーツカレー だったのかもしれない。

林檎をカレーに入れたり、フルーツチャツネをカレーに入れたりしてコクや旨味、甘みを加え ることは多いがしっかりとスパイスとフルーツが際立って前に出てくるようなカレーはあまり食 べたことがなかった。

それから十数年。数々のカレーを作ってきた。定期的に開催している料理教室では毎回違うカ レーを作るので受講してくれている方々にどんな具材を使って欲しいか聞くこともしばしば。そう すると稀にピーチやバナナなどフルーツをリクエストされることがある。

フルーツをカレーに入れるなんて...なんて声も聞こえてきそうだが、フルーツをカレーに入れる なんてなんか夢があるなぁとも思う。スイスのような雪国でフルーツが身近でないところでカレー にフルーツが入っている。フルーツだけでなくカレーに入れてみたい食材などを色々なところで聞 いてみるとそれぞれの夢や希望を食材や具材に変えて言って見てる人も多いような気がする。秋 田の人たちが舞茸をカレーに入れてくれと言ってくるのもその土地の希望や夢がそこに詰まってい るのかもしれない。鳥羽の方々が海草をスパイスと混ぜて欲しいのも、岐阜の人が山椒をシーズ ニングにしたいのも。その先に夢があるからなのかもしれない。

バナナをカレーに入れるのも、桃をカレーに入れるのもマンゴーを入れるのも。カレーやスパ イスはなんだか色々な人の夢を叶えてくれる魔法の粉なのかもしれない。

夢は人生の隠し味ではないので、私が作るフルーツカレーもしっかりとフルーツが感じられるものにしたい。

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