収穫祭と牛の呪い
その昔、ヒマラヤに住むシヴァ神が可愛がっていた牛のバサヴァに「地上に行って人間たちに『1日に1回風呂に入り、食べるのは月に1回にしなさい』と伝えなさい。」と言ったそうである。数日後、地上にたどり着いたバサヴァはシヴァ神に言われたことをすっかり忘れてしまい「1日に1回ご飯を食べ、月に1回お風呂に入りなさい」と人間たちに伝えました。
人間たちが毎日食事をしているのを不思議に思ったシヴァ神はバサヴァを問い詰めました。そして怒り、バサヴァに地上に戻り人間たちの畑仕事を永遠に手伝うように呪いをかけました。
それ以降、牛や水牛は畑や田植え仕事には欠かせない人間たちのパートナーになったと言われています。
畑で収穫された作物を祝う祭が南インドにはあります。その名を「PONGAL(ポンガル)」と言い、南インドのタミルナドゥ州を中心に広く祝われています。雨と繁栄を願い1月の中旬ごろから4日間お祭りは開かれます。その頃に収穫できるものの代表的なものがサトウキビやお米、ターメリックなどインド料理には欠かせないものばかりです。
1日目は農業から出る廃棄物を燃料に焚き火をして雨の神インドラに祈りを捧げます。
2日目はお米をミルクと砂糖で茹でたり、玄関先にチョークでカラフルな模様を描きます。これは太陽の神スーリヤへの祈りになります。
3日目は牛たちを綺麗に着飾り、町の中心で開かれているお祭りに連れて行きます。
4日目は女性たちが農作物の収穫や家族の繁栄を願い歌ったり祈ったりします。
町中がお祭り気分なので、この時期には多くの結婚式が開かれていたり、ちょっとウキウキしています。
その昔、バサヴァがシヴァ神の伝言を間違わずに人間たちに伝えていれば、バサヴァは畑仕事を手伝うことはなかったかもしれません。人間たちは何日か食べなくてもお腹が空かなかったかもしれません。そして神々に雨を降らせてくれと祈らなくてもよかったかもしれません。太陽の神に感謝をしなかったかもしれません。何よりも毎日食べるために働かなくてよかったかもしれません。
神の使いだと信じている牛が、神の呪いだとしたら少し悲しい。
当たり前にように日々行なっていることが、当たり前ではないのかもしれない。
見方を変えたら世界が変わるかもしれない。
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