9つの夜
インドではナヴァラトリと言うお祭りが開かれている。春と秋に開かれるこのお祭りは北イン ドを中心にインド全土で盛大に祝われる。サンスクリットの言葉で9つの夜を意味するこのお祭 りはこの時期、秋の太陰暦に基づき毎年開催される。熱心な人は断食をしたりする。新しいこと を始めたり、自分と向き合うには最適な期間と言われ、日本でいうところの大晦日にちょっと似 ている。悪鬼を倒すために9回も姿を変える女神。そして10日目の昼に戦いは終わり悪鬼の首は 川に流される。それを盛大に最終日に祝うのだとか。
最初の3日間は己の不浄との戦い。そして己の内面をじっくりと見る期間。
次の3日間は富を授ける女神に祈りが捧げられる。自らの生き方、仕事の仕方、生活のあり方 を見つめなおす。
そして、最後の3日間は知識を司るサラスヴァティに祈りを捧げる。知識、経験、知恵をどのよ うに活かすかを考える3日間。今までの経験や学んできた知識を考え、どのように活かしていくか を考える。
時に優しい眼差しでこちらを見て微笑む女神、次の日には冷めた目で見ている。ある日は怒り 狂った女神やまたはリーダーさながら先導してくれることもある。どれも偉大な女神である。
ナヴァラトリを私はしっかりと祝ったこともない。しかし季節が変わるこの節目の時に自らの
環境や自己をちゃんと見つめ直し、次の季節やステージに進めてくれる大切な期間であることが
ナヴァラトリというお祭りを通して知ることができる。
ナヴァラトリのドゥルガー(女神)が9回も姿を変えることも、姿を変えるたびに乗っている 動物がライオンになったり牛になったり、ロバになったりするのも、表情が様々に変わっていく のもそれぞれが自身を見つめる上での導きになっているのではないかとも思う。導かれた先に何 かが見えたり、何かを考えたりするかは私はわからないが前向きにも後ろ向きにもきっと進み始 めるのであろう。
私のインドでの故郷ではこのナヴァラトリをチャパティを伸ばす棒を持って踊りながら祝うの である。男と女が交互にチャパティを伸ばす棒を叩いて踊る。
私が住んでいる鎌倉でも8月から9月にかけて様々なお祭りが開催されていた。お祭りそれぞれ に物語がちゃんとあり、その時期、その場所でやる意味があるのであろう。だんだんと短くなる お祭りの期間。人が立ち止まって「今まで」と「今」と「これから」を考えるにはやっぱり10 日間は欲しいところである。
そういえば昔参加した瞑想の体験も10日間だった。
秋の夜長。「今まで」と「今」と「これから」をじっくりと考えようかと思う。