インドの米文化と歴史
昔のサンスクリットの言葉に「米粒は兄弟のようでなければならない、近くにいるがくっついてしまってはダメだ」というものがある。北インドを代表する米の品種の一つ「バスマティライス」を炊くときに思い出す言葉でもある。「香りが溢れている!」という意味を持つバスマティライスはビリヤニやプラオといったスパイスの香りを引き立てるような料理にとても相性が良く、独特なナッツぽい香りが料理をより美味しくしてくれる。
インド料理を思い浮かべるときにナーンやチャパティなどといった小麦粉を使ったパンのようなものをよく食べていると想像する人も多いが、インドの人口の半分以上は米を主食として生活している。種類も豊富にあり、地域によっても食べられている品種も違いバスマティのように長いお米もあれば日本米のように短いお米もある。その数は6,000種類ともいわれ、インドは米の生産量世界第2位と多く、全体の約2割がインドで作られている。この1,000年の間に約110,000種類もの米の品種がインドで誕生したとされ、10,000品種くらいはこの40年でなくなってしまったといわれている。
それほどまでインドに根付いている米は、インド東北部、タイ、中国の雲南あたりで栽培の歴史が始まったようだ。「お米」は南インドのタミル語で「arisi」といい、それを持ち運んだアラブの商人たちは「al-ruz」と呼び、それがのちにスペイン語で「arroz」という名前になった。イタリア語では「riso」に変わり、フランス語では「riz」になった。そして英語は「rice」である。
お米は「明るい未来」「繁栄」「豊穣」の象徴でもあると信じられているので宗教上の儀式や人生の節目でも度々登場する。お米を意味するサンスクリット語の一つに「dhaanya」というのがあるが、これは「命を持続させてくれる」という意味があるらしい。ラジャスタンでは新婦が新郎の家に入るときにはお相撲さんさながら米を入り口から家の中に撒くらしい。これは新しい家族に幸せと繁栄をもたらしくれるといわれている。
ビリヤニなど有名な米料理から、ペーストにして発酵させて作った生地を焼いて作るドーサ、蒸して作るイドゥリ、揚げて作るワダといったものがあったり、甘く煮てデザートのようにしたものまで幅広く様々な料理や分野で使われているインドのお米。最近ではバスマティ米以外のインドのお米も手に入りやすくなってきている。
インドの米文化やその歴史、使われ方を紹介していくとインドの様々な宗教や人種、地域を知ることができる。何よりも「お米」というのは日本でもインドでもとても大事にされている。そんなことがとても大事なような気がする。
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