アフリカのスパイスアイランド
マダガスカルに着いてすでに3日が経過しようとしていた。首都アンタナナリボからマダガスカ ル島の東海岸に移動して素晴らしい朝日を拝み、当日は休日だったこともあり友人の湖畔にある 家で過ごした。友人のいとこがマダガスカルの東海岸の北部と中部でバニラ農園を中心に様々な スパイスを栽培していると聞き次の目的地タマタブという街に行くのが楽しみであった。
湖畔で過ごした翌日は朝ごはんは食べずに早朝から移動した。5時間くらいで着くだろうと言
われたが、先日の道路状態からするとおおよそ5時間では難しいだろう。マダガスカルでの移動
は想定の倍はかかると思った方が良いと身を以て実感していた。
途中で小さな街に寄った。道路沿いにある食堂でマダガスカル定番のお粥と濃い味付けをされ た大さじ1杯分の牛肉をいただく。この牛肉を少しずつスプーンで削ぎながらお粥と混ぜていた だく。優しい味わいが一口一口と口の中で広がり単調な味わいだが飽きずに食べきることができ た。価格は2000アリアリもしなかったと思う。日本円だと50円くらいだろうか。
4日目のマダガスカル滞在になるがビシッとスパイスの効いたものはほとんどない。シンプルな 料理が多く、温暖ということでジャックフルーツを始め様々なフルーツが美味しくいただける。マ ンゴーの種類は豊富にあり、ちょうど時期だったこともあり美味しいマンゴーもいただいた。そ してどの店やマーケットにも瓶詰めされたり、ペットボトルのようなものに入れられたアチャール があった。自家製だったり工場で作っていたりするものだ。インドのアチャールのようにビシッ と塩味と油、スパイスをたっぷり入れて作られたものではなくどちらかというと上品な味わいで そのまま食べても美味しかった。
目的地である友人のいとこがやっているバニラ農園に行く前に彼の加工場に寄った。スパイス 加工場に入る前からバニラの香りが漂ってくる。そしてそのバニラの香りとともに芳醇なクローブ の香りが漂ってくる。作業場の入り口は厳重な門がありギーッと開くと中は広々としたグランド のような場所があり、そこではちょうどクローブを天日干ししていた。そのクローブの香りが外 まで広がっていたのであろう。ザーッと大量に干されたクローブの香りを横切り向かったオフィス はガラス張りになっており、働いている人々との関係、どのような労働環境を目指しているのかが 良くわかった。
オフィスを後にして違う建物に向かう、そこではピンクペッパーの選別作業を行なっていた。そ して見るまでもなく気がついた甘い香り。ピンクペッパーの先にはセイロンシナモンの山が出来 上がっていた。美しい淡い色をしたセイロンシナモンの綺麗な形にもびっくりした。
マダガスカルの東海岸の長さは約1300キロ。その熱帯雨林の気候を利用して栽培されている 様々な豊かなスパイス。世界最高級と言われているバニラの収穫量は世界中のバニラのなんと50 パーセント。セイロンシナモンは自然と侵食してきていると言われ、クローブの栽培量は世界一 のインドネシアに次ぐ2番目である。台風や荒波、干ばつなど多くの自然災害もあるが、インド やスリランカからくる風が豊富なスパイスアイランドにしているのかもしれない。
アフリカの南東に浮かぶ巨大なスパイスアイランド「マダガスカル」。丁寧なスパイスの選別 や良好な労働環境を見ているとこれからスパイスの世界の未来が大きく変わってくるかもしれな い。