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やっぱりカレーリーフ

学校での食事は大して美味しくなかったが、外食で食べた数々のタミル料理は本当に美味しかった。蒸し暑い陽気の中に食べる料理はどこか爽やかさがあり、誰しもがお代わりをしてしまうのも納得する。スパイスで香りづけされた様々な野菜たちにフワッとサクッと揚げられたパパド。サンバルにチャトニ、これらをライスと一緒に食べる。ご飯を手で潰すようにサンバルなどを混ぜて、混ぜたご飯を人差し指と中指もしくは薬指にも乗っけて口の近くまで運び親指で押し出すように口の中に運ぶ。日本米と違ってご飯も軽いのでモリモリ食べられてしまうのである。定食屋などで提供されている「ミールス」と呼ばれているものは全てお代わり自由なのでついつい食べ過ぎてしまう。



日本でスパイスのことなどをあれこれやり始めて間もなく、南インドの料理が巷で流行り始めた。私もあの時食べた「あれ」を再現しようと色々と持っているスパイスや豆で試行錯誤してみたがなかなか「あれ」は作れなかった。深みや旨味、スパイスの香りはあるのだが爽やかさが足りないのである。何が足りないのか見つけるために南インドへ行った時には様々な厨房や家庭のキッチンで作り方を見せてもらった。そして足りなかったのは「カレーリーフ」というハーブだということがわかった。プチプチプチっと4、5センチくらいの葉っぱを細い枝から切り離していきそれらを料理に足していくのである。パッと柑橘にも似た爽やかな香りがあたりを漂う。



インド、スリランカ、バングラデシュ、アンダマン諸島などが原産地とされるカレーリーフはヒマラヤ山脈を除くインド亜大陸ではそこら中に育っている。1世紀ごろにタミルの書物に登場するのがカレーリーフの最初の記述であり、英語の「curry」ももしかしたらタミル語の「kari」という言葉からきていると言われそれに欠かせないスパイスとして「kari pattha」(カレーリーフ)が入るため「curry leaf」と呼ばれるようになったのかもしれない。日本ではオオバゲッキツ(大葉月橘)、または、ナンヨウザンショウ(南洋山椒)と呼ばれミカン科の仲間である。数百年前にイギリス人たちが南インド料理を食べ、再現しようとしてよく使われているスパイス達を混ぜて作ったのがカレーパウダー(カレー粉)の始まりである。そしてカレーリーフも乾燥してパウダーにして入れてみたが、乾燥させたがゆえに爽やかさが抜けてしまい代わりに柑橘類のパウダーを入れて作ったのではないかと想像してみる。



我々が作っているカレーパウダーにも陳皮、柑橘の皮のパウダーを入れ爽やかさを出している。



生まれた時からそばにあったカレーパウダーに「あれ」の答えがあったとは。



今ではフレッシュなカレーリーフを割と手軽に手に入れることができ、南インドで過ごした学生時代を懐かしみながら今日もプチプチプチっとやっている。

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