インドのエナジーバー
インドの列車の線路の距離は世界でも4番目に長いらしい。時間には正確ではないことが多かったが、列車で様々な場所や街に行ったのは良い思い出である。
Lonavala(ロナウラ)というムンバイから列車で2時間半くらい行ったところにヒルステーションと呼ばれる避暑地がある。そこには祖父の代からの縁があり、カイアヴァリヤダマ(KAIVALYADHAMA)というヨガを伝統と科学の両側面から長年研究している施設があり2週間くらいお世話になったことがある。最初に問診みたいなものをしていただき、その後1、2週間のスケジュールが言い渡される。毎朝のヨガや鼻うがい、身体中に泥パックを塗ってみたり、油を頭から垂れ流してみたり、樽みたいなものに体を入れてミストを浴びてみたりとゆったりと様々な経験と体験をさせてもらった。料理もそれぞれの体の状態によって少し変わっていたそうである。豆や野菜を簡単に調理したものが多かったが、どれも美味しかった。
健康体な私は暇を持て余すことが多く、時間さえあれば近くの賑わった市街地まで散歩と称してプラプラしにいく毎日であった。ロナウラの街は大きな幹線道路を中心に街が広がっているようなところで、ムンバイからプネーに行く途中で寄る宿場みたいなものでもあるのであろう。列車の駅の周りが一番の賑わいで、美味しい料理に楽しそうな遊び場と質素で健康的な生活とはまた違った世界が2、3キロ近くで繰り広げられていた。駅の前か後ろにあったかは忘れてしまったが青と白の看板が目印のお菓子屋に行くのが好きで、そこで「チッキ」(CHIKKI)というロナウラ名物のナッツやゴマなどを砂糖で固めたキャンディーのようなエネルギーバーのようなものを買っては食べていた。
チッキと同じような食べ物は世界中にある。蜂蜜とゴマで作られるギリシャのパステリ、アルジェリアのアマランスキャンディ、クルミを蜂蜜で揚げて作るジョージアのゴジィナキ(gozinaki)、ベトナムにもケオラックというピーナッツ、アーモンド、ペカンナッツを固めたものがあるらしい。
どれもハイカロリーで簡単に食べれてエネルギーになるというのが共通している。もともとチッキもイギリス植民地時代のインドで列車の線路を伸ばす工事が避暑地の山に向けて作られていたが、険しい山道と重労働で疲れ切ったインド人労働者たちのためにロナウラのお菓子屋の店主マンガンラル・アガルワル氏(Manganlal Aggarwal)が考案したといわれている。Gud Daniと呼ばれるお菓子を元に手元にあった黒糖(ジャガリー)、ギーとピーナッツを合わせて作ったのが広まっていき、ロナウラ名物になっていったそうである。
アガルワル氏が作ったチッキのお陰でインドの列車はどこまでも続き、様々なところに行くことができる。私のロナウラでのヨガ修行もアガルワル氏のチッキのせいであまり成果がみられなかった。