【掌編小説】ブランケットを抱えて
AM4時、タクシーの車中は無関心の色で満たされていた。
グレーの分厚いブランケットを抱えている自分が、車窓にぼんやりと映っている。わたしはなぜ、こんな物を抱えているのだろう。一瞬思ったがすぐに顔をうずめて大きく吸い込む。彼の匂いと深夜の残り香が鼻腔をくすぐり、この子が一緒でよかったと思った。この子とはブランケットのこと……。独りで帰るなんて寂しすぎるから、ぬくもりは必要だった。
10月の深夜は寒かった。しかし私たちはテラス席で見つめ合っていた。私がどうしても此処がいい