ショパン国際ピアノコンクールが終わって思うこと
ショパンコンクールが終わりました。
情報収集という名で始めたTwitterのおかげでずいぶん世界が広がり、ショパンコンクールの情報も知らぬ間に目に止まっていました。でも、流石に予選から全てを聴くにはちょっと忙しすぎる生活で、気づけばファイナリストの演奏も終わっていました。
結果待ちというツイートの後、日本人が入賞と聞き、まず、その演奏を聞いてみようとYoutubeを開いたら、新しい世界が待っていました。
彼の演奏はこちらです。
娘とほぼ同じ歳の反田さんの演奏を聴きながら、もう、45年以上も経ってしまった、私とショパンとの出会いの頃から、チェロを持ってヨーロッパへ行ってしまった長女のことなど、あれこれ頭の中をいろんな想いが駆け巡りました。そして、彼の朝日新聞のインタビューを読み、音楽への情熱、とりわけ「オーケストラやアーティストが世界で輝くために何かできることをしたい。音楽の学校を作りたい。」「学長が有名じゃないと生徒は学校に来ないから、自分がまず有名にならないと。」と語る彼に、心からエールを送りたいと思います。
27歳の彼が奏でるショパンのピアノ協奏曲第一番は、私の中ではショパンが伝えたかったそのものの姿を伝えているように思えました。オケとの対話も素晴らしく、彼はオケとの演奏活動をずいぶんしているんだろうなあと思いました。後から、彼はすでに演奏家であること。40分以上の曲なのに、ショパンコンクールでは、ファイナルのリハーサルは45分しかないことなどを知りました。リハは一回合わせて終わりなんですね。
そして、娘のことを思いました。
イタリアに留学してチェロを弾いている娘は、ローマにある音楽学校の特別プログラム(イタリア語なので発音できないし、覚えられませんでした)の予選に通り、最終選考の6人に残りました。選ばれると有名なチェリストのレッスンを受けられるので、名誉なことだそうです。親としては、もしかしたら、次のレベルに行ける?と思う期間を経験しました。先日、ローマで本番に望みましたが、残念ながら選ばれた2人には入れませんでした。娘によると、ピアニストとのリハーサルがなかったとのことでした。彼女は、小さな頃からピアニストと合わせるトレーニングは積んできていましたが、一回もリハーサルがなく、本番というものはやったことがなく、そもそも、そういうことが起こってしまうことが信じられなかったと言っていました。北米の有名な音楽学校では、オーディションに行っても、ウオームアップする部屋もないこともあるそうなので、どこでもある程度、驚くようなことはあるのかもしれません。そんな中でも力を出せる人しか残らない。要するに、そんな世界なのかなと思いました。
翌日。「これからバスに乗るけど、話せる?」とメッセージがありました。いつものように、いきなり攻撃です。
石畳を歩く音と、バスの到着の音。
運転手との短い会話とおひさまに当たる娘の顔。
「ここでは、リハなしで、ピアニストと弾くことがあるということがわかっただけで勉強になったよ。あ、着いたから、行くね。」と言って、娘とのフェイスタイムの短い会話は終わりました。ローマのオーディションの前後にどのくらいのドラマがあったのかはこちらは知る余地もありません。そのうち話してくれるかな?
「ショパンコンクールのファイナリストになれるだけで夢のようだった。」と語っていた反田さん。この快挙は、彼が積み上げてきたものに明らかに華を添えました。
インターネットは終わることなく情報を与えてくれます。ネットの情報を厳選していろんな点を繋いでいくと、彼の演奏の外の部分が見えてきます。
イタリアの娘からは、早速、恭平くんのインスタの情報が届きました。早速フォローしました。新聞でまとめられている、彼の活動は、実際にSNSをフォローしたりすると驚くような速さで、可視化され、引き込まれていきます。涙が出そうなくらいに切ない、彼のファイナルの演奏は確かに、ステージ上で繰り広げられた感動ですが、そのほかに、ネットの中で動き回る彼は、またとても魅力的で、新しい世界でした。
恭平君は、日本語と英語で発信してくださるのでありがたいです。これで、彼のファンは世界中から彼のことを知ることができます。英語の力です。
彼の演奏は、ネットでも聴けますけれど、やっぱりいつか、コンサートホールで同じ時を共有して、あの感動を味わいたいです。そんな日が待ち遠しいです。