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【調査編その2】誰もが憩える公園を考えよう 

おはようございます、Setoです。前回に引き続き中央公園の調査について
取り上げます。前回の記事では、主に社会実験の対象エリアについて
現在の状況を中心にみてきました。
中央公園そのものは、各時代に応じて整備が重ねられており、
園路や緑地環境、公衆トイレなどの設備は、公園として基本的な整備が
概ね行き届いているような印象を受けました。

歩きやすさ

蔵本通りに沿って広がる公園区域。今回、社会実験の対象となったのは、
公園区域の中央から北側、6・7・8ブロックと呼ばれるエリアです。
興味深いことに、対象となった区域だけをみても

  • 土/土系舗装

  • タイル/ブロック舗装

  • 芝/人工芝

など地面ひとつをとっても変化に富んでいました。
例えば、歩きやすさという点からみると各々一長一短あります。

土や土系舗装では歩き心地がソフトで足腰への負担が軽い一方、
耐久性に乏しく、ぬかるんだり、えぐれたりすることもあります。
また、車椅子など土の上ではタイル/ブロック上よりも
移動するのにより大きな力を必要とすることがあります。

日当たりの良い6ブロック
程よい広さがあり土系舗装で
学校のグラウンドのよう

逆にタイル/ブロックの上では、特に車椅子やベビーカーの移動は
楽になりますが雨の日に滑りやすく、割れや欠けに伴う転倒に
注意が必要です。また、タイルやブロックの目地が粗いと、
車椅子やベビーカーでは不快な振動につながります。

タイルやブロックの上は走りやすい。レンガ調舗装は装飾性が高いが
街中の歩道では割れや欠け、浮きが目立つ場所も

芝生は感触がやわらかく、鮮やかな色は景観的にも優れています。
一方で車椅子などが通過して移動、あるいは滞在するには不向きで、
そのような使用の方法は芝生を傷めてしまいます。

ところで視座を少し変えて眺めてみると、グラウンドに森に
子供向け遊具、路面仕上げも土にタイルに芝生があり、
川が流れて水辺もあり、環境としては非常に豊かです。
街中でこれだけ豊かな環境があるということは、
中央公園の良さと言えそうです。
したがって、今後園路の整備・改修が計画される際には、
歩きやすさや安全性に配慮しつつ、今ある良さを活かせたらと
思います。

サイン計画

園路つながりでいえば、現在の中央公園は園路を通じて階段やスロープで
エリアをつなぐ部分があります。その割には、案内サインが少なく、
園路の終端までいかなければその先が階段なのか、スロープなのか
交差点や車道と接続しているのかわかりづらいという課題があります。
中央公園は春の「みなと祭り」や秋の「食の祭典」など、
多くの人々が集まり、混雑するイベントの会場として
利用されることもあります。あるいは、植栽や樹木が育って
木漏れ日あふれる森のようになっていることは、癒しの景観でありつつも
見通しの悪さにつながっています。

また、園内の規制事項・禁止事項などを記した張り紙が、養生テープや
トラ柄テープでベタベタ貼られている現状は、あまりに統一感がなく
景観を損なっています。

オシャレ日除けに緑の養生テープで色を添える。
このような貼り紙がいらないようにしたいですね

整備にあたっては、盛り込むべき情報を精査した上で
配色やフォントについてもユニバーサルデザインを取り入れながら
景観と調和した、利用者にとってわかりやすいサイン計画が
必要だと思います。

また、禁止・規制事項については内容と理由を適宜見直し、
市民による活用を通して公園の環境を向上し、
その設置趣旨を実現するという方向性が良いと思います。

やわらかい緑の森に突如現れる警戒色の看板。
苦情の有無に関わらず、公園を壊してはいけません。

水辺

中央公園の東、中通商店街そばには堺川(さかいがわ)が
呉湾に注いでいます。Setoは今回の調査で知ったのですが
川のそばには親水デッキのようなものがあり、歩道から
スロープや階段を通じてデッキに行けるようになっています。

舵輪を模した遊具。足元のペダルを踏んで
水を汲む。右隣はねこ型遊具(故障中)

川の水を汲み上げ、吐出する遊具もあるんですが
目立った案内もなく、公園からの見通しがよくないせいか
デッキの存在を知る人はあまりいないようです。
海に近く潮の満ち引きにより水位の変化が大きいですが、
ここも街の人に親しんでもらえるエリアにできたらいいですね。

ベンチ

今回の社会実験のテーマのひとつにウォーカブル(歩きやすい)な
まちづくりというものもあります。対象エリアとなった6・7・8ブロックをみてみるとそれぞれがそれなりの広さを有していることもあって、
ベンチもよく整備されています。

時代ごとに整備が重ねられていることもあり、ベンチの素材や形状も
様々です。「誰もが憩える」という点から見ると、
これは非常によいことだとおもいます。
同型の規格化されたベンチを導入する方が、維持管理の面では
容易になるかもしれません。一方で、背もたれの有無やサークルタイプ等
異なるタイプを同時に整備することで、使いたいベンチを利用者に
選んでもらうことができます。

大きな木をぐるっと囲むサークルベンチ
座板も広く使いやすい

例えば、背もたれのあるベンチは、足腰の弱った方や子どもたちにとって
座りやすい一方、車椅子やベビーカーを利用する場合は、
ベンチに近づきにくい場合があります。
あるいは背もたれがない場合は、背中の支えが利かない人には、
使いづらくなってしまいます。
メリットとしては、前方・後方からだけでなく
周囲に充分な空間がある場合、左右方向からのアプローチも可能に
なります。

こちらは早くに整備されたベンチ
背もたれ、座面に角度もついているようで
腰掛けやすくなっています。

また肘掛けの有無でみると、肘掛けがついていると、
立ち座りの際に支えになるメリットがありますが、
肘掛けの設置場所や形状によっては利用しづらくなるケースも
みられるようです。

近年、公園のベンチは座面がフラットなものが
主流になってきているようです。
背後の背無しベンチには手すりがついています。
手すりの取り付け位置は知恵の絞りどころ

座面も角度をつけることで、ベンチからの立ち座りを
容易にできる一方、座面をフラットにすることで、
テーブル代わりに使ったり、非常時に横になるなど
色々な使い方ができます。

座面のフラットなベンチは使い方自由
飲み物を飲むにもよい高さです
テントは社会実験に伴うもの

普段車いすを使うSetoは、ごく自然にベンチをテーブル代わりとして
お弁当を食べたり、コーヒーを飲んだりしているのですが、
他のバリ研メンバーと話すと、「そんな使い方もあるんだね」と
言われたのは新鮮でした。

車いすだと、地べたのレジャーシートの上に置いたお弁当は
取りづらいのです。(意外や高さがちょうどいいベンチも多い。)

街と一緒に"育つ"公園

毎日見ていると、変わらずそこにあるように見える公園。
大規模に一体整備するのもひとつの方法ですが、
時間をかけながら手を加えることで、環境や設備、使い方に
バラエティーが生まれ、豊かで楽しい公園になる気がします。
次回は飲食や遊具スペース、トイレを中心に見ていきます。

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