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NSNO Vol.21 エバートンFC 22-23 シーズンレビュー MF&FW編

NSNO Vol.21 エバートンFC 22-23
シーズンレビュー
MF&FW編


GK&DF編はこちらから。


選手レビューMFとFW編を
お送りいたします。
よろしくお願いします。


7,Dwight McNeil

「今季はいつになく早く終わった気がする」
ダイシとの再会が止まっていた歯車を再び動かした。親和性が本来の才能を呼び起こし、2月から18試合中17試合にフル出場。クロスカントリーで培った無尽蔵なスタミナ。ゲーム終盤に放たれる力強いショットは、デイビス、パターソンと3人で組んだ"ジム・クラブ"のお陰かもしれない。ピッチの外、EITCの活動にも熱心な7番の後継者は欠けていた我々のハートにフィットしている。


8,Amadou Onana


残留決定後、重圧から解かれ脱力した姿が印象的。プロである前に1人の若者であることを想起させた。しなやかな体躯、洗練されたタックル。熟成されたワインのように貫禄漂う21歳は多くの驚きを与えた。守備スタッツはリール時代より向上、攻撃面は課題を残すも既に核になりつつある大物は、今夏も噂の渦中にいる。沈着さとピッチで見せる熱い表情をいつの日か大舞台で披露するその時まで、私たちは目を凝らして見届けるだろう。


14,Andros Townsend


シーズンも終盤、アカデミーのラインナップに名を連ね、長い怪我との生活に終止符を打った。献身性と機敏さを兼ね備え、美しいゴールでチームを救った男は再び青いシャツを着られる喜びを語った。しかし時の流れは残酷で、険しい2季連続の残留争いに間に合わず契約切れを迎える。自身の再生とクラブの再建を軸に天秤にかけられた流浪のキャリア、結びついた縁と貢献に感謝を抱くと同時にクラブのマネジメントを問う一例でもある。


16,Abdoulaye Doucoure


前監督と口論、トレーニングから除外という報道でトフィーズでのキャリアは終焉に近づいたと思わせた。死んで花実が咲くものか。弱った心臓は脈々と新たな鼓動を産み、活力という血を送り続けた。走行距離の記録を更新、リーグ5得点は18-19季以来も出場時間はその半分。ドゥクレ不在で1勝もできなかった今季、残留を手繰り寄せた一撃を始め真価を証明した1年、掴み取ったもう1年。どこでも…否、どこまでも走り続ける気概だ。


17,Alex Iwobi


チーム屈指のチャンス・クリエイター。苦節4年にして初の全試合スタメン出場。ここに到達することを誰が予想したか。ランパードによるボランチ起用で優雅なマエストロとなり、ダイシ就任後はマクニールとの両翼で辛抱強く、汚れ仕事も厭わないエネルギッシュなスタイルに順応した。洒脱な雰囲気、何でも出来てしまうが故に、勿体無い気もする起用法。プレー選択、横パスロスト、凡ミスを改善できれば一級の仲間入りも夢ではない。


26,Tom Davies


花、動物、自然を愛で旅を好む。私生活と仕事の均衡こそ人生で最も大切だと語る青年は、その環境を大きく変えうる節目に立っている。物事を動かす特筆する強みはなく、継続的な積み重ねで実力を示す類の選手であり、その出番を失い存在感は薄まる一方だ。「あの時」から月日が経ち、期待、希望、我々が勝手に抱いた想いは霞がたなびく中で消えかかる。かつてキャプテンマークを巻いた生粋の若者を私はまた性懲りも無く待ち続ける。


27,Idrissa Gana Gueye


切望した"6番"に唯一無二のタックラーが帰ってきた。黙々と仕事をこなす球際の嗅覚、トランジションへ飛び込むボール・ハンターは華やかな舞台を経てもその鋭さは衰えず。しかし、彼を一度失い後進を築けなかったクラブにとっては応急処置に過ぎず、本来育むべきものを後回しにしているだけだ。タスクの重さ、諸刃の剣になりうるリスクは承知でも、肝心のボール奪取後、攻撃のメカニズムが未構築であることは浮き彫りのままだ。


37,James Garner


赤い悪魔は、この逸材を容易く手放したことをいずれ後悔するだろうか。柔らかいボールタッチ、冷静な球捌き、鋭い軌道のプレースキック。怪我で出遅れたイングランド期待の俊英がようやく軌道に乗り、苦境にあった終盤戦で重要な役割を果たした。不慣れなWBのポジションもスマートに乗りこなし、自負する創造性が垣間見える。弱者故の便利屋扱いは、拙い戦略で集められたチームの悪癖。原石をいかに扱うか、磨き方を疎かにしてはいけない。


9, Dominic Calvert-Lewin


冬にドバイ、今夏はドイツへ向かう。余暇の旅行ではない、耐えず彼を苦しめる怪我と向き合うためだ。健康でありさえすれば、誰よりも強く、巧く、速く、攻撃を完結させる凄みを放つスピアヘッド。代えの効かない9番だからこそ、代役程度の采配では現在のプレミアリーグで勝ち切ることは至難の業。今夏は彼を想定しない補強と戦略が求められる。幸いにも若い才能が台頭している。チーム最大のウィークポイントを克服できるか。


11,Demarai Gray

キャリーさせるなら彼にお任せ、局面打開はお手のもの!といった加入当初の輝きが薄れつつある。チーム事情と戦術、CFの不在、プレイエリアの限定、本来と異なるタスクを背負い、グレイがステップを踏むには窮屈な状況が続いている。苦手なプレッシングと空中戦で消耗し、ゴール前に近づけない光景は歯痒さが募る。マクニールやイウォビらが重宝される中、成長はもちろん、違いを示し凌駕する結果が求められる。来季は正念場か。


20,Neal Maupay


出発は完璧。ステーキ上手に焼けるかな?企画ではグレイとホルゲイトを差し置き、焼き加減と盛り付けで勝利。絶妙なタイミングで肉を裏返すように、ウェストハム戦で見せた瞬時の反転と判断はFWとしてこれ以上ないパフォーマンス。焼き加減同様、力加減も最高のショットだった。が、残念ながらこれがハイライト。スペースメイクとチェイシングで精力的に働くもブライトンと異なる戦法に手を焼き決定機逸も響いてフェードアウト。



50,Ellis Simms


リコールした手段は有効的だと思いたい一方で、出番を得るにはチームの厳しい状況が続き過ぎた。チェルシー戦で名手クリバリを葬った価値ある一閃はアカデミー時代の魅力そのままに、武者修行を積んだ成果として現れている。どうか更なる時間を得て欲しい限りだが、経験を重視するダイシのハートを射止めるには未だ多くの壁が立ち塞がる。来季はゴールを「夢」で終着せず確かな自信へと昇華させ、次代の点取り屋として地位を築きたい。




さて、今季を締めくくる選手レビュー、
最後までお付き合いいただきありがとうございました。

既に次の記事執筆に向けて準備を進めています。新たに公開できるのはしばらく先になりますが、またNSNOを継続させ極東のファンダムを盛り上げられるよう、読んでくださる皆さんと喜びや葛藤を共有できるよう、僕自身も楽しんで取り組んでいく所存です。


それでは、今後ともお世話になると同時に、残留できた喜びを噛み締めて、また来季に臨んでいきたいと思います。

気に入ってくださり、サポートしてくださる方、ありがとうございます。 今後の執筆活動や、エヴァートンをより理解するための知識習得につなげていきたいと思います。