とても勉強になったカリコ氏対談
ETV特集『世界を変える大発見はこうして生まれた』を観た。ノーベル賞科学者山中伸弥氏とコロナワクチンの立役者カタリン・カリコ氏のリモート対談プラス解説。
コロナワクチンはー私にとってはー治験が1年足らずとあまりに短いこと、他のワクチンに比べ副反応が重すぎること、(因果関係ははっきりしないが)接種後死亡した人がいることなどから、もたらされる恩恵よりも、その得体の知れなさ、不気味さはウィルス以上?と感じる気持ちの方が勝り、積極的に接種したいという気持ちになれずにいた。
でもこの番組を観て印象が激変!
カリコ氏はRNAを専門に研究してきた科学者。確かに今回治験期間は短いが、実は10年も前からメッセンジャーRNA(mRNA)を使った様々なワクチン開発に挑戦している。
つまり昨日今日突然降って湧いて出たような技術ではないということだ。mRNAを使ったガンやインフルエンザのワクチン開発もすでに行われていて、その実績を踏まえてのコロナワクチン開発という流れ。
mRNAは不安定で分解されやすいため、保存が難しく、長らく薬には不向きと考えられ、カリコ氏の研究はほとんど評価されなかったらしい。
だがカリコ氏は分解されやすいという性質に注目。裏を返せば体内に長く留まって影響を及ぼす可能性が少ないということだから、却って安全だと思っていた。
研究費の削減やポスト降格などの不遇の時期が続く中、陽の目を見ない研究をこれまで続けてこられたのは周囲の仲間の支えが大きかったという。
相棒であり、コロナワクチン開発の立役者としてともに「ローゼンスティール賞」を受賞したドリュー・ワイスマン氏はカリコ氏に初めて会った時、何よりその人柄に魅了されたと話す。
カリコ氏が科学者として優秀な人材であることはもちろんだが、彼女の研究が実を結んだのはその人柄によるところも大きいのではないか。対談中カリコ氏は常に笑みを絶やさず、相手の話に耳を傾け、苦しかったことも楽しそうに語ってくれる。親しみやすさが画面いっぱいに溢れていた。
反対にワイスマン氏は、自らシャイと認める通り笑顔に乏しく、とっつきにくい印象。彼のような性格の人ばかりが集まっていたのでは、いくら優秀な人材が揃っていたとしても果たして研究がスムーズにいったかどうか。
相手の考えにしっかりと耳を傾け、自分の考えも相手にきちんと伝える努力を惜しまない、何をするにもそういう態度が大切だと思う。
日本人には協調性があると言われるが、カリコ氏を観ていると、少し違うような気がする。日本人の場合はどちらかというと、協調ではなく、同調?時と場所をわきまえて自分の考えは飲み込み、相手に合わせる。特に目上の人に反対意見を述べたりしたら、楯突いたとみなされてしまうから。しかし立場の上下にこだわらず、率直な意見交換ができなければ進歩は望めないだろう。
カリコ氏が所属するビオンテックは大手製薬会社ファイザーと提携してコロナワクチンを開発、また以前からビオンテックの技術を使ってmRNAのワクチン開発を手掛けてきたベンチャー企業のモデルナも同じ頃独自にコロナワクチン開発に成功。しかし元を正せばどちらも同じカリコ氏の技術だから、両者は双子のワクチンと言えるらしい。
新型コロナも、ワクチンも、どちらも実態がつかめず、悶々と不安な思いでいたが、この番組を観てワクチンに対してようやく肯定的な見方ができるようになった。
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