どうして民主主義は「愚か者」も含めなければならないのか

どうも、虚無の先と名乗らせていただいている者です。

7月10日に参議院選挙がありました。大方の予想通り立憲/共産/れいわは大負けしたのですがそうなるとTwitterで自称リベラルが負け惜しみとでもいうべき「愚か者に投票権を渡すな」や、「右翼がいなければ圧勝だった」、今回のハイライトとしては「俺に最低30票くれないと間に合わない。」というような平等選挙、普通選挙の原則を覆そうとする意見が現れます。

正直すべてあまりのパワーワードすぎて笑うしかないのですが、笑ってるだけだと仮に自称リベラルが政権を取った場合に冗談抜きにリベラルでない方が恣意的に「愚か者」にされて投票権消し飛ばされてリベラルとは名ばかりのファシズム国家が生まれそうで怖いので、自称リベラルがこのような意見を表明している現状では政権を取れないように求心力を奪うという予防策でも打っておこうかなという次第です。

先に断っておきますが自分はここから先の思想に同意するわけではありません。あくまで仮に自称リベラルが平等選挙、普通選挙の原則を破壊した場合に無能な自分がそれを最大限悪用しようと考えた場合にこのような形になることを示します。

また、これはいわゆる「リベラルの悪魔化」ではありません。リベラルが作りたいと考える社会のフィールドを最大限に悪用した場合どのような世の中になるのかという想定です。別にそれをやるのがリベラリストであろうと誰であろうとどうでもいいです。「こういうフィールドを作るな」そして「こういうフィールドを作れと言うやつに政治的な権力を移譲するな」というところを伝えたいのです。

1:愚か者の判断方法

自称リベラルに聞きたいのは一つです。

何をもって「あなたが愚か者でない」ことと「リベラルでない人が愚か者である」ことが証明できますか?

どのようなやり方で「愚か者」かそうでないかを判断しようとしてもリベラルでない人が潜り抜けられる可能性は否定できないし、自称リベラルの仲間が愚か者として切り捨てられる可能性を否定できません。言うなれば「愚か者」から選挙権を奪ったところで自称リベラルが選挙で勝てる可能性が高いとは言い難いのが予測です。

判断方法1:学歴

無理です。日本における最高学府である東大にて支持政党の調査をしたところ一番支持が多いのが自民党、その次が国民民主党、そして3位にやっと立憲民主党、そしてそこに日本維新の会、共産党、れいわ新撰組が続くという結果になりました。学歴が上がったところで自民党の支持が揺るぐことは少なく、また、若い人は国民民主党の支持が多いという結果です。自民党も国民民主党も自称リベラルの皆さまが大っ嫌いな政党ですね。学歴フィルターではどうしようもありません。また、支持政党がないことは自称リベラル様御用達の政党に100%入れることを保証するものではありません。

上の年代の高学歴層に対しては十分に信頼性のあるデータがあるわけではないので明言は控えますが、7/10の参議院選挙の結果を鑑みても立憲/共産/れいわに支持が集中する可能性は高いと言える根拠はないのが現状です。

判断方法2:思想調査

そもそも思想調査そのものが内心の自由に抵触するところから始まるのですが、自称リベラルに日本国憲法説いたところでそもそも平等選挙、普通選挙を無視する時点で「終わっている」ので、もう少しだけ突き進みます。思想調査を行い、それが適合している場合に選挙権を渡すとなった時に、まずそもそも適切な思想調査とは何でしょうか?

例えばマークシート方式で思想を調べる場合、単純な運や、権力者が気に入る答えを選ぶことで「愚か者」が入る可能性を否定できません。ジェンダー論を大学で教える教員がジェンダー論に肯定的な若者が多いと喜びながらもジェンダー論は若者に受け入れられていないという事象があります。これは、学生からはジェンダー論の授業が出なくてもいいのにフェミニズムに肯定的な文章一枚出せば単位がもらえる「楽単」とされるためです。一応それを否定するために大学では思想を教育してはならないという自主規制的ルールがありますが、ことジェンダー論に関しては守られていないようです。

だからといって面接や小論文でもやろうものなら思想調査に信じられないほどのコストがかかりますし、この上で述べた問題に全く解決がされていません。もし投票権(この場合得られない方が出てくる都合上特権的なものになります、後述します)が欲しければうそをつく必要があるのなら、筆者は下記の未来を予見した以上喜んでうそをつきます。でないと人権が守られる保証なんてありませんから。

2:特権的民主主義が生み出すディストピア

別に上記のどちらの手段をとってもいいです。仮に平等選挙、普通選挙が消え、学歴が基準に満たないか思想調査で不適合とされた方の選挙権が取り上げられた場合を考えてみましょうか。ここからが地獄の始まりです。学歴差別/思想調査は地獄じゃなかったのか?まあここから先に比べたら…

その1:基本的人権のはく奪

「こんなこと起こるはずがない!」と怒る方がいらっしゃると思います。が、話題性のためにこんな外道な見出しを使ったわけではありません。表現の自由にかかわる男女論界隈とでも呼ぶべきこの界隈にいたら、「AV新法」という言葉を聞いたことがあると思います。

端的に言うと撮影の契約に介入してまともにAVが撮影できない状態にした禁酒法並みの悪法がAV新法です。そこで従事される方はまともに働くことができないのが現状です。ただ、その改善のための動きは以下のリンクの二つがあります。

そして、その改善に向けて何人かの政治家が動いています。では、その理由は何でしょうか?冷酷な表現をしますが、端的に言うと票のためです。こういった悪法をどうにかすれば有権者(当事者であるAV関係者や、AVの視聴者など)からの支持が得られるために動いています。では、仮に今述べたAV関係者、視聴者、関心を持つ人の投票権を全部奪ってみた場合を考えてみましょう。議員はAV関係者のために動く理由を失います。特に性に関することは忌避される傾向もあるので票は得られず、仮に動いた場合、エロい議員というレッテルを貼られるだけです。そのような有権者に忌避されるというリスクしかなく票というリターンがない状況下で誰が動きますか?

と、このように仮に投票権を失った場合法律によって抵抗されることなくその投票権を失った方の仕事を奪うことは容易です。あと、法の下の平等が無視されている時点で日本国憲法に期待できません。だから、筆者は人間らしい生活、自己実現の可能性、すべてを踏みつぶされるぐらいなら喜んでうそをつきます。そして、多くの方もそのためのウソならつくでしょう。

その2:一様な社会

思想か学歴によって選挙権を持つ方を選別した場合、選挙権を持つ方の多様性が縮小します。低学歴や異端思想を持つ方というあり方が参政権の取得においては否定されるためです。これの何が問題かというと、そもそも高学歴男性が中心となっていることで多様性が不足しているとされる政治家の一様性に拍車をかけることになります。基本的に民主主義社会における政治家というものは多種多様な有権者からの意見(この「多種多様」は有権者にも意見にもかかります)を集約し、国会で議論することが役目です。ゆえに、政治家そのものが一様であったところで多様な方からの意見を受け入れることができれば政治家が政治のテーブルに持ってくる議題は十分に多様性を意識したものになります。だからこそ、アイヌ民族の国会議員の数は少なくてもアイヌ民族支援法が成立しうるわけです。だから、女性国会議員の数が少なくても男女共同参画社会基本法が成立しうるわけです。

当事者に対する十分なヒヤリングを行いさえすれば、それらの声を代弁する議員がどんな属性であろうと十分に良い法律は出来上がります(逆に当事者が議員になったところで自身の偏見で自身の声のみを国会の場で弁することになれば十分に良い法律はできません、これが「AV新法」がうまくいっていない原因だと考えられます)。では、その代弁する元の声を断ち切ったら(=マイノリティから選挙権をはく奪したら)どうなるでしょうか?「お前たちのための法律だ」と言われながら自分たちの人権を制約してくる悪法が生まれるための素材、そろっていませんか?

ついでに言っておきます。そんな最悪な世の中になっても政権交代が不可能になるのも問題です。反対意見を持つ方から選挙権を奪えば、政権交代なんてやりようがないです。ちなみにそういうことをやったのってどこか知ってます?ナチスって言うんですけど…ちょっとわき道に逸れ過ぎましたね戻しましょうか。このような世の中、長期的に安定した政権ではありますが、あまりにもディストピア的ではありませんか?

その3:補足

一応ここまでを要約すると選挙権を奪われた方には脱出不可能なディストピアが待ち構えているとしたのですが、アメリカの奴隷解放のようにもしかしたら人の良心でディストピアを脱出できるかもしれません。が、さすがに人の良心を頼るのは可能性として高いとは言い切れないのでそこを信じる可能性を否定こそしないものの、筆者としてはそこに全てを賭けるわけにはいかないとしておきます。

3:最後に

このように一人一票の原則を覆したらかなり簡単に悪用できます。また、一人一票の原則を覆した特権的民主主義を十分に自称リベラルにとって有効な形で実装することもほぼ不可能と言っても過言ではありません。なので、元から信じられない奴に政治に関する全権利を委任するつもりはありませんし、それを主張する人間には全力で反対します。

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