【ドラマ感想】ハコヅメ~たたかう!交番女子~
「泣くし、笑うし、文句も言うし、やけにリアルな交番エンターテイメント」と公式HPにある通り、毎回笑えて、泣けて、気分をリフレッシュさせてくれる良エンターテイメント。
基本的に各エピソードは1話完結型だが、元エース刑事の藤聖子がなぜ交番に異動してきたのかという謎から始まり、事件解決で幕を閉じる作りになっている。肝は事件の真相や展開というより主人公である新米警察官、川合麻依のお仕事成長ドラマだ。
同じように1話完結型で最終話まで謎を引っ張る構成は、同時期に放送されたIPサイバー捜査班と似た印象があったが、ハコヅメのキャッチーなオープニングがまず明暗を分けたように思える。
次に、はまり役のキャスト陣。デキる藤の圧倒的な安定感と、ドジっ子川合の甘辛がちょうどいい。藤のことが好きすぎる川合が可愛すぎる…!!ハコ長含め組織のリーダーやトップは男性という男社会が現実として描かれ、藤と川合が鼻をつまんで入室するシーンも描かれるが、藤の最強同期4人組はall女性、藤・川合の女性ペア、源・山田の男性ペア、牧高・鈴木の男女ペア、と画面のバランスは良い。川合の初恋エピソードは見ている側が恥ずかしくなるほど役者の皆さんが真面目に演じてくれたおかげで、最後は川合の成長に加速をつける名エピソードに転じた。
そのうえで、わかりやすく笑って泣ける爽快感。公僕としての責任感だけでなくサラリーマンの側面を描いたことが、交番の存在や事件をより身近に感じさせ、親しみが湧くような作りになっている。
通常のサスペンスやミステリーに登場するような事件ばかりではない。チャイルドシート未装着による赤ん坊の事故死と川合のメンタル不全エピソードを、子供たちへの交通安全講習につなげるくだりなどは特に、身近に感じながら心に残る内容だった。
そしてドラマの最初と最後を締めくくる違反切符、「どうせ来るならクソ野郎。」職務上、目の当たりにすることはどれも普通のことじゃない。慣れないのが普通。だから、少しずつ警察官になっていけばいい。少なくとも制服を着ているときは、真面目に職務を全うする警察官であること。警察官も制服を脱げば同じ人間であるということをリアルに、コミカルに演出している。
守護天使事件の真相そのものは、ドラマ的にはそう重要ではなかったように思う。ハコヅメで取り上げられた事件は日常ありがちなものが多く、万引き犯も含め加害者が悪党でないことがほとんどだ。桜をリハビリ送りにして退官まで思いつめさせた事件の真犯人が、家族を想う気持ちがありながら、自分の弱さから逃げ回るだけの小心者のおじさんであったとしても、生かしたまま逮捕しなければならない。加害者を捕まえ、真相を明らかにするのが仕事だ。裁くのは警察官の仕事ではない。
守護天使関連でもっと話を膨らませて、事件を感動的に盛り上げることもできたのではという気もするが…。ただ、本ドラマで大切にされていたのは、警察官の日常と非日常を行ったり来たりしながら主人公川合の成長を描くことであって、特定の誰かの華々しい活躍やアクションシーンを描くことではない。
藤の気持ちを想い、川合が嫌われ役を買ってまでドア越しに「あのマウンテンメスゴリラ!」と叫ぶシーンこそが、最高のクライマックスである。そこに川合の警察官及び人としての成長、町山警察署の警察官たちの温かい絆が詰まっている。
いつもちょうど良いタイミングで流れるエンディングが、心地良い。
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公式HP:https://www.ntv.co.jp/hakozume/
番組名:「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(第9話)
オープニングテーマ:「YY」(ロイ-RöE-)
エンディングテーマ:「Ordinary days」(milet)
※上記情報は公式HPから引用しています。
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