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【ドラマ感想】救出劇

臨床心理士の夏目が主宰するオンラインカウンセリング。参加者は幼なじみ同士の杉崎、五味、泉沢。

視聴者には何をテーマに開催されているのか、登場人物の関係性もよくわからないまま話がスタート。コロナ禍ではお馴染みとなったオンライン会議の体裁を取り、俳優たちは画面と1対1で演技、ドラマは画面から一切外に出てこない。

第一話の半分はオンラインの雑談が占めるのだが、幼なじみたちの間には緊張や遠慮が見え隠れし、杉崎の調子の良さがだんだん鼻につくようになってくる。今回の仕切り役を買って出ていた泉沢が画面から消え、やがて風呂に沈められるという刺激的な展開に…。これは事件なのか?だとしたら、犯人は?その目的は?

果たして、救出されるのは誰なのか?

杉崎の弟の登場後、ドラマはダークな方向に舵を切る。杉崎の闇と幼なじみの過去が明らかになるにつれて、話は予想を裏切り裏の裏を読む展開となり、謎解きの面白さを増していく。オンラインという特殊な密室空間に終始しながらも、登場人物一人一人の人間性が画面上であぶりだされていく様がキラリと光る、ミステリー心理劇。


・全6話ではなく、全5話。あとは脳内補完すべし。

俳優も若くフレッシュで意欲作だと思うが、ドラマは全5話で終わることに注意。テンポが速く、事件の真相解明に向けてのめりこんで見ていると、最後に大きな肩透かしを食う。というのは、明確な結末が描かれておらず、終わった、解決したという爽快感がないからだ。

一方で、そうとわかればなぜこのような終わり方になったのか、考察する面白さが残る。ドラマはとにかく裏の裏を読む衝撃的な展開が続いたため、実はこうだったのではないか…?とさらに裏を読める余白がある。

杉崎、泉沢は死んでしまったのか?

マインドコントロールされていたはずの弟が、なぜ兄を刺したのか?夏目に何を求めているのか?

心の専門家だからこそやってはいけないとわかっていたはずの計画を、夏目はなぜ企て、そして凶行にまで及んだのか(いくら弟の出現や五味の優秀さが想定外だったとはいえ)。血だらけになった手をタオルで拭く様子は、実に落ち着いて見える。実は夏目にも更に裏があるのではないか?正義感と恨みとがないまぜになった夏目の人格もまた、歪んで見える。

実は一番まともで賢かった五味は、結局無事でいられるのか?


・テーマがヘビー。安易に結末を描けないのはわかる。

杉崎のダークさは序盤からあまりにも際立っていたため、実はあのような背景があってこうなった可哀想な人間だった…というサスペンス的な優しい裏設定があっても、おかしくはない。しかし、ドラマ後半の杉崎が見せる言動はあくまでモンスター。他人をいたぶるのが快楽だという子供による凄惨な殺人事件は実際にあるため、こいつが実際に近くにいたらと思うと、視聴者側は周辺住民よろしく、殺人犯が逮捕収監されるまで恐怖で震えあがってしまう…。

幼少期、本当に池に子供を突き落としたのかどうか、誰も見ていないので真相はわからない。しかし杉崎は咎められなかったことで、当時の出来事について社会的制裁はないのだと、つまりOKなのだと解釈した。泉沢は怖くて杉崎に逆らえず、五味は父親から鍵を借りた罪悪感を忘れてはいない。

当時、社会がその事件をどのように裁くべきだったのか。裁き方によっては、発達上、杉崎の人格を矯正することができたのか。大人になったモンスターを社会が裁くことができないなら、危機感を抱いた誰かが手を汚すしかないのか。共感できない子供を反省させたところで加害者になる歩みを止めることは難しいという事実に、「ケーキ起きれない非行少年たち」(宮口幸治)が触れていたことを思い出す。


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公式HP:https://www.bs4.jp/kyusyutsugeki/

番組名:「救出劇」(全6話)

※上記情報は公式HPから引用しています。

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