「社長を交換するってどういうこと?」たすき掛けプロジェクトの真相
Beyondカンファレンス2022 1日目。
「違う企業文化と混ざって分かったこと ~社長を交換、たすき掛けプロジェクトの可能性~」というトークセッション。冒頭、会場の参加者から、こんな声が上がりました。
「社長を交換するって、いったいどういうこと???」とハテナがとび、「包み隠さず教えてほしい!」というリクエストが集まったところから、『たすき掛けプロジェクト』始動の経緯と、その実態について、ぶっちゃけトークセッションが始まりました。
きっかけは松本社長のツルの一声
2020年8月31日。
セイノーホールディングスの田口社長とマネックスグループの松本社長は、「組織や従来の枠組みを越えて、意志ある個人を応援する動きを加速させるには?」というお題について、オンラインで多数参加者を交えて作戦会議をしていました。
田口社長の発言がヒントになったのか、たすき掛けプロジェクト始動のきっかけとなるひとことを松本社長がコメントしました。
ここから両社の人事部に火がつき『社長を交換する』という、前代未聞のプロジェクトがスタートしたのです。
たすき掛けプロジェクトとは
こうして始まった『たすき掛けプロジェクト』は、社長を交換することで、経営トップと社員の関係を(一時的に)断ち切り、他の会社の経営トップに対して社員が新たなアイデアや取り組みをプレゼンし、助言と応援をもらう、という個人の主体性と創造性を発揮する企画です。
企業合同で2時間のイベントを開催し、「全力応援!」「ぶっとびOK!」を合言葉に、社員のプレゼンを聞いたあと、ブレイクアウトルームに分かれてブレストし、他社の経営トップから自社にはない視点から助言やアイデアをもらいます。
『社長を交換する』といっても2時間のイベントの時間だけ、とわかった参加者は、安心する一方で、「それだけで何か変わるの?」という新たな疑問が浮かんできました。
それから会社はどうなった?
「新規事業イベントを開催しても、ダメ出しをする人が多い」
「挑戦する気持ちも大事だが、応援する場はもっと大事」
そんな想いをもった両社の人事部門は、プレゼンをする社員と応援する社員をそれぞれの社内で募集しました。
「自社の社長には話せないことも、他社になら話せる。ぜひ新しいアイデアをプレゼンしたい!」という、当日登壇したい社員はすんなりと見つかったものの、応援をしたいという社員がほとんど集まらないという事態に。。
社員からみると、人事部門が募集するイベントは「評価につながるのかもしれない」と警戒してしまい、躊躇してしまう様子。しかし強制で参加してもらうものではないため、辛抱強く応援社員を集めていき、当日は60名近い社員が集まりました。
マネックスから参加してプレゼンをしたのは、なんと新卒1年目と内定者。社内の文化に染まっていない、個人として自発的にやりたいという意志のある人がファーストペンギンになって行動する。それを目の当たりにすることで、周りの応援社員にも変化が起こる、そうした期待をもっての采配でした。
セイノー側のプレゼン担当者は、『たすき掛けプロジェクト』に挑戦して一歩踏み出したことをきっかけに、別の社内公募にも手を挙げるようになり、教育プログラムのリーダーを担っている、という小さな一歩が次の一歩につながる成果も現れているようです。
たすき掛けプロジェクトの本質とは
ちがう企業文化の人が言いたいことを言うことで、同質性の高い会社に、別の会社の文化が入ってくる。
「たすき掛けの本質は、社長を交換することではない。本質的には、企業文化のたすき掛けができるといい」というマネックス人事部門の方の一言は印象的でした。続いて、こちらはセイノー人事部門の方のコメントです。
最後に会場から「私は学生なのでわかりませんが、どうして企業に入ると会社の文化に染まってしまうんでしょうか?」という声が。
・・・いい問いですね。
あなたは、この問いかけに、どんな答えを出しますか?