子どものためのクリスマス
こんにちは、TCアルプの下地です。
あっという間に12月。早いものです。わたしも12月11日に行われた公演で、ひとまず舞台は仕事納めでした。
お子さんも大人も、楽しい時間を。
上演作品は『オー!エッグさん』というクリスマスコメディ。
親子連れの企画をしばらくやっていないから、久しぶりにやろう! ということで立ち上がった企画ですが、大人だけでも楽しめる作品にはなったかなと思います。
久しぶりに会場内で飲食店の販売ブースを出していただいたり、開場中は(主に)お子さんたちがお絵かきをできる大きな紙を舞台上に敷き、開演時間になるとその絵が舞台中央に飾られるという仕掛けがありました。
地元の新聞社のイベントスペースでの公演だったことが存分に発揮された作品になりました。お絵かき用の大きな紙は、新聞紙になる前の大きなロール紙を提供していただき、本編中で使う小道具も古新聞で数多く作らせていただきました。
飲食店販売も、お子さんたちのお絵かきも、いろんな方のご協力があってこそでした。
大人じゃ敵わない想像力
約1時間10分の上演で、ほとんどのお子さんが集中してみてくれていたのが嬉しかったのですが、ある回で泣いちゃったお子さんがおりました。
ダンボールや新聞紙で作られたたくさんの小道具で、大人の工作と言わんばかりの空間。しかも御伽噺のような作品群だったので、演じてる我々や大人にとっては滑稽に見えることでも、想像力の豊かなお子さんにとっては、人並みに大きな玉子が現れて動き回るのも奇妙だから怖がって当然だし、その後悪者達が主人公を追い詰めるシーンもしっかり声を出して怖がっていた。
そうだよな、お芝居はあくまで作り物だけど、本当はそういうシーンだよなあ。君が正しい! なんて思いながら「コレを出したら、きっともっと泣いちゃうだろうな」と思いながら拷問器具の小道具を出したらやっぱり泣き叫ばれてしまった。
短いエピソードがいくつかある物語だったので、次の話になったらどうにか笑顔になってほしいなと願いながら、その後も物語をつないでいくばかりでした。
でも、その子もラストのシーンになると別の気持ちで作品を見届けてくれたのか、お見送りの時に声をかけてみたら、泣き止んだばかりの目だったけど、なんかちょっとキラキラしてて、嬉しそうに舞台上に散らばったキラキラの紙吹雪を集めていた。一緒に来てたお母さんも喜んでくれていたみたいで、よかった。
「子供相手が一番こわいね」
稽古中から常に話し合っていたことで、それは面白いこと、つまらないこと、いろんなことに素直で敏感であろうお子さん達を前に覚悟を持たないといけないね、という意味だった。
いざ、本番で想定していなかったリアクションを取られ、あんな風に感受性豊かに観てくれる子を目の前にすると、ひたすら「敵わないなぁ」と思った。
自由だから見える、その人らしさ。
本編中、いろんなところでリアクションしてくれるお子さん達、舞台上まで上がってのんびり観ちゃう子、役者にツッコミを入れる子、一つ一つのリアクションが舞台を作っていて、それに舞台上の人も客席もおもわず笑ってしまう、そんな空間。
開場中のお絵かきの時間も、遠慮がちに周りの様子を伺う子もいれば、白紙のスペースを案内すると率先して紙の上にやって来てくれる子、前に描かれていた絵なんてお構いなしに持てるだけのペンを持って大きな絵を上から描き始めたり。いろんな子がいた。
開場時間と同時にロール紙に役者がクリスマスツリーを描いて、早めに来場してくれた子にてっぺんのお星さまを描いてもらうのがなんとなく流れになっていた。
「星描いてみる?」と聞いたら「お星さま描いていいの!?」と嬉しそうに聞き返してくれた子。「良いよ!」と行ったら、てっぺんに大きな立派な星を描いてくれた。クリスマスツリーのてっぺんは、特等席だもの。そりゃ喜んじゃうよね。
でもひょっとすると、ちょっとお姉さんっぽかったし、いつもは年下の子に譲ってあげたりしてるのかなあ、なんてことも勝手に想像してしまった。
わたしが見てないところでも、開場中からいろんなことが起こっていたようで、後から他の共演者もいろいろな出来事を教えてくれた。
子供も、大人も、親もそうじゃない人も、いろんな人がいろんな参加の仕方をしていて、ほっこりも、ちょっと切ないことも、一つの場所でいろんなストーリーが起こっていたようだ。
「クリスマスは何して過ごす?」
この公演を観るために遠方から来た友人から、こんなことを聞かれた。
「クリスマスコメディ」と銘打ってるくらいなのだから「もうすぐクリスマスだね!」というワクワク感を持ってる人も当然いるか! と当たり前のことに気づいた。
そういえば、クリスマスらしい過ごし方を何年もしていない。
「仕事してるんじゃ無いかな……」と適当に答えたけれど、ふと会場にいたお子さん達を思い出して「なんてつまらない大人になっちまったんだ」と思ってしまった。
子どもの頃、もっといえば「クリスマス」とか「サンタクロース」から卒業する頃、なんだか子どもを辞めなきゃいけなくなるのが嫌で、無理やり信じているフリをしている時期があったものだ。
それから、思春期を迎えて、年齢的にも性格的にもいろんなことを経験して、なんだかんだあって一応大人の年齢になっているけど、子どもの頃のあの信じていた時間は、当事者からしたら永遠に続く時間だと思っていた。そんな気がする。
いろんなことに慣れてしまって、時間の感覚も短くなっている大人。
「今年もあっという間だったね」なんて会話を毎年のように繰り返し「去年も一昨年もこんなこと言ってたな」と代わり映えのない会話になんだか絶望する。
子供の頃は一年が「終わってしまう」というだけで妙な淋しさと、新しい年になった時の数字に愛着が持てるのかな? なんていうよくわからない疑問とか、もっといろんな説明のできないこともいっぱい考えていた気がするんだけれど……。
いつもはなんとなく足早に過ぎてしまうクリスマス。けれど、今年は先取りして十分味わえた気すらしている。
でももしかしたら、クリスマス当日、無邪気な子ども達が羨ましくなって、クリスマス気分が味わいたくなるかもしれないなぁ、と思ったりするのでした。
そんなわけで、どなた様も素敵なクリスマスを、そして良いお年をお迎えください。
2022年12月17日 下地尚子
下地尚子の記事はこちらから。
https://note.com/beyond_it_all/m/m1cb913220d43