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あかね噺 第146・147席感想-Mrs. GREEN APPLE的陽の芸

フランスから帰国直後の寄席。あかねはどのような成長を見せるのか…?(そしてりゑんはどうへこまされるのか…)が今回の肝でしたが、期待値を大きく超えてきました。

これはもう本誌を見てもらいたい!夏の夕暮れを見開き一枚絵でガッツリ魅せる演出が神がかってました。志ぐま師匠の死神登場の一枚絵を思わせます。江戸の夏の情景を描いた浮世絵は山ほどありますが、現代的な絵で描いたものはなかなか見たことがありませんから、一枚絵としても新鮮です。眼福眼福。

見事な江戸の夏の夕暮れ

これはもうあくびも誘おうというものです。みんなあくびつられちゃう描写はインパクトありましたが、私が注目したいのはアドリブで「みなさんはあくびしなくてもいいですよ」という時の簡単あかね。

簡単顔でかわいい

芸で客にあくびをさせられる前提で間を取っての呼びかけ。アドリブというよりは何度かやってるんでしょうね。自身の芸に自信を持っていることが見てとれます。前座の時は客とのやり取りには怪しいところがありましたから、このコールアンドレスポンスは芸人としてのステップアップを感じさせます。

あかねの芸風は、その仁とあいまって、素直で憎めないところがあります。実際の落語は歴史的に性差別的な内容も多いですし、落語家自身も伝統的に露悪的だったり、嫌味っぽかったり、ホモソーシャルだったりと陰を感じさせることが多いし、現代的観点からはあまり馴染まないところも多いです。

このあくび指南でも、問題になりそうなところがうまく省かれていて、「上手をやっておくれ」と「一日船に乗っていると」の間の「仲へでも繰り込んで新造でも買って遊ぼうか」という定番のセリフが省かれています。仲は吉原、新造は水揚げ前の若い遊女見習いですから、現代語で言うと「売春街に行って10代の若い娘と話して楽しむか」ですからね。これを若い女性のあかねが言うのは現代基準では相当ヤバい内容です。フランスで訳して説明したら逮捕されそうな勢いです。

147席では進化したあかねの魅力を千変万化と表現しましたが、それ以前に、落語の魅力を純粋に抽出して、あかねの素直さの仁を乗せたところが魅力だと思います。影のない実力派といった感じで、どこかMrs. GREEN APPLEを思わせます。

あかねのようなタイプの落語家が実際に存在したのかするのかはわかりませんが、もし存在したとしたら、今の時代には人気になるのかもしれません。


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