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「負けヒロインが多すぎる」感想-人生は出オチじゃないから

大成功のアニメ化

アニメ『負けヒロインが多すぎる』がブレークしてる。アニメ化の前から原作読んでたのだけど、ここまでブレークするとは思いもしなかった。
ラブコメラノベのアニメ化なんて、下手したら紙芝居でなんとか間をつないで、10話くらいであっさり万策尽きて、あとで「あぁそういえばアニメ化したんだよね…」みたいに扱われる程度が関の山。
そんなガッカリ展開になることをある程度は覚悟していたものの、見事な脚本、見事な作画、見事な演技で、大傑作になった。
いやはやこんなすごいことになるとは…とは言え、この成功はもちろん原作の力によるところが大きいでしょうし、それをうまくくみ取ったアニメ化スタッフ力量もまた確かなものなのでしょう。

出オチこそSNS時代を生きる術

元々、小学館ライトノベル大賞ガガガ賞受賞した際には『俺はひょっとして、最終話で負けヒロインの横にいるポッと出のモブキャラなのだろうか』だったそうで、言ってみれば出オチ感あるタイトルでそのコンセプトが前面にでていたようです。
この元のタイトルからもわかる通り、この作品はラブコメのお約束をできるだけ詰め込みつつ、モブ視点でのドラマを描く…というコンセプチャルな面があり、出オチに終わってしまう可能性も大いにあったはずです。

でも、人生は出オチじゃないから

「負けヒロインが多すぎる」のコンセプトとして、負けヒロインとモブを主軸に置いたため、恋愛成就というわかりやすいゴールを放棄することになったいます。その代わりに「非恋愛」「非成就」、すなわち「恋愛じゃない関係性」「挫折からの成長」というテーマを書かざるを得なくなったと言えます。

告白が成功しても失敗しても、世の中は続くし、人間関係も続く。イベントはイベントで目立つけれど、そういうイベントの成否と心の折り合いをどうつけていくか?どう成長していくか?のほうが人生にとっては重要なこと。
本作の販促キャッチコピーでで「はちゃめちゃ敗走系青春ストーリー」と謳われてるけど、人生はたいがいはちゃめちゃで、多くの場合敗走なので、ひょっとしたらこっちの方がメインストリームなのかもしれない。ラノベとしてはブルーオーシャンなのかもしれないけど、文学が踏み散らかしてきたレッドオーシャンでもあり、これが乗りこなすかは作者の力量次第…がんばってください!

令和ならではの主人公ぬっくん

本作は主人公の温水が他者と交流をもって成長していく物語でもあります。かつてのラブコメは準ずべき価値観、男らしいとか、モテるためにはこうするべきとか…があって、物語はそれにそって進行していく。
温水は価値観がラノベでできているように描写されているのだけど、それはあくまで表面的なもので、実際には、他人を尊重するリベラルな価値観を持つ現代っぽい人物だ。
温水は、人間関係について未熟で、友達がいない割には聞き上手で、きちんと他者を理解した上で、ケアの役割を見事にこなしていく。善性あふれる自覚なきケアラーというのはいかにも令和のラブコメ主人公らしいキャラクターだと思う。
(ちょっと龍が如くの新主人公、春日一番っぽいところを感じた)

ラブコメあるあるというノイズ

というわけでうっかりブルーオーシャンを手に入れてしまって、時代をも代表するキャラを輩出しつつある本作だが、逆にこれでもかと詰め込まれた「ラブコメあるある」がノイズになるようになってきた。
元々、アニメ化に際してラノベあるあるみたいなところはだいぶスキップされているのだけども、それでもだいぶ残っている。序盤の体育館倉庫イベントとか作劇上結構どうでもいいシーンではあるし、サービスシーンとして観られるのも本作にはちょっとマイナスだと思う。
(原作6巻まで焼塩檸檬の話を読んだら、最初のシーンいらないよね?!と強く思った)

この辺は成功しすぎた故の悩みということで、贅沢な話ではあります…

おまけ

第4話が、海外のアニメサイトでBest ship/couple of the weekを獲りました。これは良かったですね。Best shipってのがいい。
「他に何だっていうのよ」って奴ですね。

別のWeek5ランキングでも二人が1-2フィニッシュでした


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