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「メダリスト」局所的感想-その急峻なキャラクターアーク
アニメ「メダリスト」の1話を見て、原作全部買って、アフタヌーン最新号も追いついて、ファンブックも買った勢です。こんばんわ。
めちゃめちゃすごい作品ですね。ものすごいたくさんスゴイところがある作品で枚挙に暇がありませんが、私が好きなポイントを一つ挙げておきたいと思います。
「キャラクターが自分の思いに気づく」
この作品は「キャラクターが自分の思いに気づく」というシーンが効果的に取り入れられています。物語というのはキャラクターの変化、キャラクターアークを見せるものですが、外部のイベントがあったり、なにかを言われて変わるというのがよくある見せ方。
でも、人は自分の気持が何であるかわかっているわけではないし、それが自分にとって、相手にとってどういう意味か理解するのは容易なことではありません。しかし、この作品はしばしば、「キャラクターが自分で自分の気持ちに気づく」という描写を説得力持って書かれていて、物語を形作ってます。このキャラクターアークの変化点が急峻で面白い。変わるまでは穏やかにゆっくりと。変わるときには鋭角に。この急峻さが美しい。
例えば1巻冒頭で、司が、いのりの激白を聞いて、自分のかつての思いが何であったかを気づく瞬間。
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ここまで自分の進路で悩み、うじうじしてた司が自分の行動原理を手に入れます。ここの変わり方は劇的です。これ以降は熱血ポジティブ野郎として驀進します。この瞬間はものすごい劇的な変化なのですが、劇的であることが不思議ではないと思わせる表現力。これはとんでもないことです。
感情と理解のスピード
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アニメ化の範囲を超えてしまいますが、加護さんがいのりちゃんに会うシーンが好きなんです。
僕ね…すごく君に会いたかったみたい
今本当に嬉しいよ
ありがとう
これものすごいシーンだと思っていて、加護さんは自分の気持ちなのに「会いたかったみたい」と「過去形」で「推測」として言う。
そして、今、自分が嬉しいことを率直に伝えています。そして感謝。
自分の感情を時間軸で客観的にとらえて、整理したうえで、会ったばかりの小学生に素直に伝える。こんな感情の豊かさと理性の成熟を同居させたシーンなかなかないと思います。表情もいいですね!すこしボーっとした感じで、自分の心と対話して言葉を出しているときはこんな顔になります。このヒトコマだけで、できる男で、器が大きく、素直な性格という、加護さんの魅力が発揮されてます。超見事です。
亡き妻との思い出と約束の心残りから、気持ちを切り替えて会場に来ていることを考えると、とても重いキャラクターの変化なのですが、これをいのりとの出会いで。軽く、優しく、でも急峻に描かれています。
こんな名シーンがさらっと書かれてるのがこの作品の凄いところです。
感情と理解のスピードはそれぞれ違って、感情は重たくもありながら、急に動くものでもあり、理解はゆっくり着実に動きます。作者はこの動きをかなり意識して作品づくりしているようで後の方でも
喜ぶって大きい感情だからすぐに出てこないことあるよ!
じわじわ後から実感するものでもあるしさ!
というセリフが出てきて、あぁ良いこと言うよなぁと思います。
ここまで未読でも、このセリフだけで司のセリフだってわかるのもすごいですね。
このような自分の気持ちに気づく最大のシーンは何といってもアフタヌーン最新話score 50ですね!最新ネタバレなのでここは自重しておきます!