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あの曇りの日
こんにちは。
今日も図書館へ来ました。
ここは、港町の小さな市立図書館。
一階には児童書、二階には雑誌や一般図書、難しい本、歴史書などなど。
ここの一階にある、少し小さめの円形の机で、私と友人はレポートを書きました。
書いているのは友人で、私は“英文のアドバイス”を頼まれ一緒に来たのです。
高校の帰り道、友人にお願いをされたのでした。
彼女は半年後にはアメリカへ留学することになっており、その準備として英文での自己紹介を提出しなければいけないらしいのです。
私は英語が大好きでした。
寝ても覚めても英語のことを考えていました。
文法にパズルのような面白さを感じ、単語が持つニュアンスの違いに心躍らせ、発する事でもう一人の自分になれました。
英語の歌も大好きで、日本語には無い、流れるような音に胸をときめかせていました。
「いつか留学するんだ!」
小学生の頃から夢に見ていました。
しかし今回、交換留学によって渡米するのは彼女であり、私ではないのです。
どれだけ英語が好きでも、
どれだけ英語を学んでも、
どれだけ留学に対する熱意があっても、
小さな町の大人たちの都合による交換留学では、私には声はかからないのです。
そもそも、私のその自信たっぷりの英語力も井の中の蛙だったろうと思います。
一歩町の外へ出れば、長く伸びた鼻もへし折られるでしょう。
あの16歳の時に味わった、自分ではどうすることもできない社会の現実。
妬ましさを抑えながらも、彼女が書いた日本語文を英文に訳したあの曇りの日。
そして、あの丸い机。
それは今でもそこへ行く度に思い出すのです。
その後、留学中の友人から手紙が届きました。
そこには一軒目のホストファミリーがどんなに酷かったか、シャワーや食事に関して涙が出るような内容が書いてありました。
あぁ、私。行かなくて良かったなぁ。