Night Rowing
よく晴れた夜の海岸に
黒ずんだ小川がそそぎ込み
河口近くの杭に古びた小舟が繋がれている
ぼくはそれに乗りこみ
流木を櫂として
漕ぐ
農道を照らす水銀灯の光が見えなくなるまで
ひたすら 漕ぐ
どの国のラジオも聴こえないところまで
あてどなく 漕ぐ
ボトルメールの群れが漂いながら互いにすれ違う海原をも通り過ぎたところまで
発電所から延びる桟橋に並べられた赤や緑の灯が、ぼくを見送ってくれた
居場所がない子供たちの打ち上げる花火が、傷んだ舟板の罅をあらわにする
二つの島々の間を通り抜