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自分で決めるということ その2 〜生徒という先生〜

 こんにちは!キャリア・アウェイクナーの金澤です。

 前回、原体験として「自分が決める」ということの大切さを実感したという話をしましたが、今回は、それが他人でもそうなのだと痛感した二つの事例をご紹介します。

努力したのにどうして

 まだ私が塾講師駆け出しの頃の話です。一人目は男の子で、私のいた教室で一番上のクラスにいて、言われた通りのことを、しっかり最後まで努力できる生徒でした。内申も高く、トップ校の受験も普通にやっていたらまず大丈夫だろう、という状況で中3を迎えていました。

 生徒も家庭も、学校の先生も、もちろん我々塾の先生も、中1の頃から「◎◎高校(トップ校)を受けたい」と言っていた彼の意見を止める根拠もなく、このまましっかり頑張って合格しよう、という話をしていました。入試前に多少の揺らぎはありましたが、最後まで頑張ってくれて、無事合格。大丈夫だろうとは思いながらも、ホッと一安心の入試でした。

 その年の6月。中学生の授業前の時間帯に、その子がフラッと教室に遊びに来てくれました。どんな充実した高校生活なんだろう?と、色々話を聞こうと思う間もなく、彼の口からはこんな言葉が出てきました。

 「もう俺高校イヤだわ〜」

 何が起こったかと思いました。そもそも彼は優等生でそういうことをいうタイプではないし、別にその高校に悪い評判が立っているわけでもなく、なんなら同級生で同じ高校に行った生徒は結構楽しそうにやっている。何より、自分で前からその高校に行きたいと言っていたのではなかったか。

 彼は言います。「周りの人たち頭良すぎて、頑張ってるのになかなかついていけないし、部活も面白くないし、行事もパッとしないし、☆☆高校は楽しそうなのにうちは全然つまらない」

 当時私は、これを聞いて怒りの感情を覚えました。それくらいのことで何を言ってるんだ。自分で行きたいって言ったんだろ。何甘えてるんだ。

 でも今の自分は、むしろ受験前にきちんと問いを立てていなかった自分たちのせいだと思っています。なんでその高校がいいのか、他の選択肢と違うところは、その学校で何がしたいのか、どういう成長をして高校を卒業したいのか。そういうことを、一緒に考えてもらうことができていなくて、考えが浅い状態で高校に行かせてしまったんだと思っています。

 最後に彼は言いました。

 「だって親が◎◎高校行けってずっと前から言うからさ」

あの時見せた涙の真実

 もう一人の生徒は女の子です。彼女も優等生タイプで、真面目にしっかり頑張る子ですが、ちょっと天然で、いつもニコニコほんわかした子。とても謙虚で、あんまり自分に自信がない部分がありましたが、彼女のことをキライだという人はいない、周りを癒してくれるような生徒でした。

 内申も偏差値も高く、当然トップクラス。志望校はトップ校ではなく二番手校だったのですが、なんとかトップ校に合格させてあげたいと、一生懸命励ましながら、ずっと進路指導をしてきていました。

 入試直前の1月。模試が終わった後、教室の廊下にその子が一人で残っていました。どうした〜って声をかけたら、突然泣き始めました。おいおい、俺まだ何も言ってないぞ、なんかあった?と聞いたら、彼女は言いました。

 「私、やっぱりトップ校じゃなくて準トップ校を受けたい」

 女の子に泣きながらそう言われて、ダメだと言える金澤ではありません。(笑)結果、彼女は準トップ校を受けて、しっかり合格を勝ち取りました。でも私の中では、「彼女をトップ校に行かせてあげられなかった・・・」という力不足への後悔が強く残る入試となりました。

 時はだいぶ経って、2年半後のこと。その子が突然教室に来て、高校の文化祭に来てくれ、と案内を渡しに来てくれました。高校の文化祭はめったに行きませんが、直接誘われたからには行かざるを得ないので、出かけました。

 体育館に来てくれと言われていたので、当日パンフレットを見ると、そこには「ダンス部発表」の文字が。あの天然ほんわかっ娘がダンスって面白いな、と思いながら、ボーっと時間を待っていたのを覚えています。

 時間になって、15人くらいの生徒が舞台に出てきました。発表が始まると、全体的に高校生には思えない素晴らしい発表だったのですが、その中でも真ん中にいる、ちょっと背の高い子が、一際目立つ、キレキレのダンスをしていました。

 私は近眼なので最初は遠くて見えませんでしたが、徐々に輪郭がはっきりしてきました。あの生徒でした。とても楽しそうに、私が知っている彼女とは別人のような生き生きした、キラキラしている彼女がそこにいました。

 終わった後の挨拶で、なんとダンス部の部長だったということがわかりました。そして、「私がこの高校に来たかったのは、これだったんです。あのとき言えなくてごめんなさい」と言われました。

 当時ダンス部は今よりはるかにマイナーで、それこそ沖縄アクターズスクールが脚光を浴び始めた頃のこと(古い・・・)。

 ダンスで高校決めるなんて・・・と言われそうで、親にも塾の先生にも学校の先生にも、これは言えなかったけど、自分はどうしてもダンスがやりたかった、という話をしてくれました。

 そうか。あの涙は、我々への感謝と、自分の軸を押し通したい勇気が現れた涙だったんだ。私が無理やりトップ校に行かせていたら、この輝く彼女はいなかった。私自身が、思わず泣きそうになる出来事でした。

自分の価値観で決めているか否か

 この二つの事例は、私に「自分で決めることが何より一番大切だ」という確信を持たせてくれました。そういう意味で、この生徒たちは私の先生ですし、今でも本当に感謝しています。

 彼と彼女は、自分で決めているように見えても、「自分の価値観」で決めているか否か、というところに違いがあります。どちらの方が、より高校3年間を主体的に、充実した形で過ごせるか、明白ではないでしょうか。

 でも、そういうことを問われるような進路指導は、普通の学校や塾ではほぼありません。一番の理由は時間がかかるからですが、その子のことは学校や塾でしか見ておらず、本当の価値観がわからないというところも大きな原因としてあるように思います。

 私が仕事にしているのは、この「価値観」をしっかりと理解し(指導者だけではなく本人も)、その価値観を元に進路を選択していく、ということです。この価値観に気づくことを、私は「アウェイクニング」と呼んでいます。

 次回は、もう少しこの「アウェイクニング」と価値観についての関係をわかりやすく説明していきたいと思います。

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