「ホップステップだうん!」 Vol.169
今号の内容
・巻頭写真 「 久保田 誠」 江連麻紀
・続「技法以前」143 向谷地生良 「リアルタイムの創出知」
・ 土曜 ゆるゆる当事者研究
・本の紹介『フォスター 里親家庭・養子縁組家庭・ファミリーホームと社会的養育』(生活書院) 白井千晶(著)/江連麻紀(写真)
・福祉職のための<経営学> 031 向谷地宣明 「研究思考/志向」その2
・ぱぴぷぺぽ通信 すずきゆうこ 「ごはんは大事」
久保田 誠さん
久保田さんはさをり織りを始めて12年の名手で、たくさんの作品を制作されてきました。
そんな久保田さんはいつも上から目線で人から話しかけられているというお客さん(人の行動に否定的な影響を与える認知や思考のこと)に悩まされていましたが、長年の研究を通して、実は人が上から目線で見ていたのではなくて、久保田さん自身がちっちゃくなって下から見上げていたのではないかということがわかりました。手のひらに自分を助ける言葉を書いていて自分を励ますという対処法をされています。
最近は、舐められているんじゃないかというお客さんがきて、べてるに行きたくない病が出ることがあるそうなのですが、それでも行ってみたら仲間と笑ったり、美味しいお菓子を食べたり、さをり織りをして気持ちがほぐれるから、仲間を頼りにべてるに通えているそうです。
電話でお話しした日は大好きな巨人の試合を夏に見に行けることが決まったうれしい日で興奮気味の久保田さんでした。
(写真/文 江連麻紀)
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続「技法以前」143 向谷地生良
「リアルタイムの創出知」
精神医療の治療現場に、「対話」の文化を持ち込むという試みは、フィンランドの北方圏にあるトルニオ市のケロプダス病院ではじまりました。1978年のことです。1978年と言うと、べてるの家の活動(1984)のルーツである自助グループ活動がはじまった年で、さらに言うと、イタリアでバザーリアが精神病院改革に取り組み、精神病院が廃止されたのも同じ年です。ちなみに、「奇跡のりんご」で知られる木村秋則さんが無農薬でリンゴ栽培に挑戦したのも同じ年ですから、覚えやすいです。
話は変わって、一昨日、横浜で当事者研究の交流会がありました。その際、一人の女性が「街を歩くと子供が私をバカにしてきます。どうしたらいいでしょうか?」という質問がありました。子供の笑い声、無邪気にふざけあう声、それらが自分をバカにしている気がするという訴えは、ときどき聞かれることで、当事者研究の研究テーマにも取り上げられることもあります。その女性にせっかくですから、みんなで研究しませんか、とお誘いして前に出ていただきました。ホワイトボードを前にして、5,6人の研究仲間も一緒に前に出て、研究ミーティングを開始しました。
そこで、私はその女性に「馬鹿にされている」ことと、「馬鹿にされている感覚」を割合にするとどれくらいですか、と伺うと、何と1:9だと言うのです。そこで、私はさらに伺いました。「先ほどの話だとほぼ100%、馬鹿にされているという言い方をされていたように思いますが、ちょっと今のニュアンスは、事実というよりも、感覚なんだという言い方ですが、変わったんですか?」そう言うと、その女性は「いま、変わりました」と言うのです。本当に不思議ですが、これが「対話」の持つ“効果”なのです。
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