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べてるの家のオンラインマガジン「ホップステップだうん!」 Vol.259

・巻頭写真
・続「技法以前」208 向谷地生良 「ペスト」
・伊藤知之の「50代も全力疾走」 第45回 2023年は「参加の年!」にしたいです
・「北のバラバラな日々」(13)笹渕乃梨
・The View from Nowhere - どこでもないところからの眺め - 004 向谷地宣明 「プラグマティズムとかえるくん」
・【イラスト】ぱぴぷぺぽ すずきゆうこ


全力疾走慌てるタイプの伊藤知之さんに、2023年について伺いました。

2023年は年齢もあり疲れを感じることが多かった一年で、ダウンして息切れするようになり、これまでのような最後まで突っ走る全力疾走が少なくなってきたそうです。

「2023年はゆっくりとした気持ちを持ちたい。仕事は一生懸命だけど、パートナーといるときはゆるむので、そうゆう時間を大事にしていきたいです。」と話してくださいました。

写真・文:江連麻紀


続「技法以前」208 向谷地生良

「ペスト」

コロナ禍になって、あらためて注目され、読まれるようになった小説があります。その代表的なものがカミュの『ペスト』(新潮文庫)です。

作品の舞台は、北アフリカにある港湾都市オランです。物語は、医師のリウーが、一匹の死んだネズミにつまずくところからはじまります。それが次第に街の至る所で見られるようになります。そうしてはじまったペストによって、日常生活が侵害され、多くの人々の命が失われていく様は、まさしくカミュが「シジフォスの神話」で示した「不条理」の窮まりといった光景が描かれていきます。
対策は、コロナ禍でもとられた「ロックダウン」ですが、中国の現状と似ていて、感染拡大は続きます。その中で、リウー医師は、さまざまな困難、壁に直面する中で、多くの市民とともに戦いを続けますが、そこで取り上げられるのが、遅い行政の現実を直視しない市民の様子です。

そのような絶望的な状況の中でも、リユー医師らは、人間の尊厳をかけて、如何に生きるべきかについて問い、市民は連帯し歩み続けます。カミュが「ペスト」という疫病をテーマにした作品を発表したのが第二次世界大戦後の1947年ですから、「ペスト」は、大戦の惨状の記憶が冷めやらない内に、戦争を起こしてしまった我々人類の負った深い病を「ペスト」という疫病と向き合う市民の目線から提起した作品と言えます。

このペストには、二つの社会の現実が、投影されていると言われています。(宮田光雄 岩波ブックレットNO901) ひとつは、交易が盛んになることで、伝染病に罹患する人たちが増えるという問題です。例えば、江戸時代における日本の鎖国は、海外からもたらされる伝染病から国民を守るという側面と、明治維新はまさしくそのような問題に向き合うことを強いたということを聞いたことがあります。
もう一つ、カミュは、このペストに「戦争」と「占領」という第二次世界大戦下でナチスドイツによってもたらされた精神的、身体的な牢獄を重ね合わせている(宮田光雄)ということです。この様は、現代においては、ロシアによるウクライナへの侵攻と重ねることができます。

統一教会問題にしても、少なくとも私が知っているだけでも40年以上、多くの関係者が、繰り返し、繰り返し、この問題の深刻さと広がりについて警鐘を発し、課題解決を求めてきたにも関わらず権力者は耳を貸さず、民主的な手続きによる解決の見通しが立たない中で、ひとりの青年によるテロによってようやく対策が練られる“惨状”は、日本と言う国は、図らずも暴力的な手段がもっとも効果的な社会変革の手段でることを示すという二重の意味で、深刻な現実を私たちに見せつけています。

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